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文正仁氏「尹大統領が職務復帰できてもトランプは相手にしないだろう」

ニュースリリース|トピックス| 2025年04月02日(水)

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韓国・延世大学の文正仁(ムン・ジョンイン)名誉特任教授は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する憲法裁判所の弾劾審判が棄却されて尹大統領が復帰しても、国際舞台で以前のように活動することは難しいと述べた。とくに、一部の尹大統領支持者の希望とは異なり、ドナルド・トランプ米大統領が尹大統領を国家元首として相手にしない可能性もあるとみている。

文氏は2025年3月31日、新刊『米国外交はなぜ失敗するのか トランプ2.0、米国が作る世界の明暗』の出版に合わせて記者会見した文氏は、尹大統領の弾劾審判について「弾劾審判が棄却され、尹大統領が復帰しても国際社会で外交を行うのは難しいだろう。トランプ大統領と日本の石破茂首相、中国の習近平国家主席らも、復帰した尹大統領を外交の相手としてみなすかどうかは疑わしい。民主主義国家において、ある種のダメージを受けた大統領だ」と指摘した。

トランプ大統領にも尹大統領のように不正選挙を主張していた点で、尹大統領に対してある種の共感があるのではないかという記者からの質問に、文氏は「トランプ大統領は相手の立場に立って考える人ではない。ディールになるかどうかを最も重要視する。だから、一度命令を出せば、実務者が一丸となって動く独裁者的な行動を好むのだ」と答えた。

文氏はまた「カナダのトルドー前首相はカナダ国内で支持率が低かったため、トランプ大統領があのように扱った。結局、国内での政治的支持が重要だが、国際社会では2024年12月3日の非常戒厳令に正統性がないことがすでに公認されている」と述べ、トランプ大統領が国民的支持を得られない尹大統領を相手にする可能性は高くないと予想した。

さらに文氏は「尹大統領は前のバイデン大統領に頼り過ぎた。自由国際主義に、ルールに基づいた国際秩序などに賭け、価値同盟を強調した」とし、このような経緯がトランプ大統領とアメリカ政府にも悪影響を与えると予想した。

文氏は最近アメリカを訪問し、ランド研究所をはじめとする学界関係者と会ってセミナーを行い、ニューヨークでは国連関係者とも接触した。アメリカのエネルギー省が韓国を「敏感(センシティブ)国」に指定したことについても米国内で意見を交わしたのかという記者からの質問には「発端はアイダホ研究所の韓国系アメリカ人が原子炉関連技術が入ったソフトウェア情報を持って出てきて摘発されたことだが、アメリカとしては敏感国の対象になりそうな国を全体的に見る」と答えた。

また、「韓国で最近、独自の核武装や核の潜在力に関する議論が活発化すれば、当然、アメリカは韓国を主要な監視対象とするだろう。そのような状況で韓国の政治的不安が高まり、特定の勢力が独自核兵器開発のためにどんなことでもできるのではないかという疑問が出た」と敏感国指定の背景を分析した。

文氏は「一種のバタフライ効果だが、韓国の政治的不安、特定の勢力が独自核兵器開発のためにどんなことをしてもいいという考えが連動し、結局、低いレベルだが、韓国が敏感国に指定された。アメリカが韓国を継続して監視するだろう」と予想した。

また、「アメリカから韓国の核武装論を眺めていると、この点で韓国で自主的に何か動いているのではないかと見られる。実際に訪米した際、韓国側で核武装論を主張するだけの何かの実体があるのではないかという質問も受けた。尹政権がNPT(核不拡散条約)を守ると言っておきながら、一方では独自の核武装を準備している二重行動をしているのではないかという質問も受けた。核拡散勢力が韓国の政治的混乱状況を利用しているのではないかということだ」と紹介した。

ただ文氏はアメリカの関係者が「敏感国指定に対して韓国が敏感になりすぎているという反応もあった」とし、「韓米間の原子力協定などはすべて現在進行形だ。敏感に反応しすぎると、むしろわれわれにとって弱点となる可能性がある」とアドバイスした。

2025年3月29日、米「ワシントン・ポスト」紙は、国防省から出された9ページ分の「臨時国家防衛戦略指針」を報道したが、中国の台湾侵攻を他の何よりも優先して考えるという方針を強調した。これにより、ロシアや北朝鮮、イランなどの脅威は同盟国が担うように調整しながら、同盟国にもっと多くの国防費を支出するよう圧力をかけることも明らかにしている。

これを根拠に、トランプ政府が韓国に防衛費分担金の大幅な引き上げを要求する可能性があるとの観測が提起されている。また、在韓米軍が韓半島に北朝鮮を防衛するために駐留するのではなく、必要に応じて台湾防衛のために韓半島を離れる可能性を示唆しているのではないかという分析も出ている。

文氏はこれについて「ランド研究所を訪問した際、MAGA(アメリカを再び偉大に)の傾向を持つ人物と話をしたところ、韓国は長い間、安保に無賃乗車しているとみている。なぜアメリカが韓国を守らなければならないのかという認識を持っていた」と伝えた。「このような認識をトランプ大統領とMAGA派が持っているということは、過去のようにアメリカの股間をつかんで血盟国だと訴えることはもはや通用しないということだ。ヘグセス国防長官は韓国に『戦略的柔軟性』、つまり在韓米軍を必要な時に使って配置しそうするということだ」と解釈した。

文氏は防衛費分担金問題と合わせて「アチソンライン2.0」が提起されていると現地の雰囲気を伝えた。アチソンラインは、トルーマン政権の国務長官だったディーン・アチソンが1950年、ソ連と中国の共産化拡大を阻止するため、アメリカの防衛線を阿龍山列島-日本-沖縄-フィリピンを結んだラインで、このため金日成が南侵を決意したという分析も出ている。

「アチソンラインのように防衛線を日本側に南下させ、ソウルを排除するということだ。アメリカが北東アジア防衛の主要拠点に韓国は含まれないとし、主要拠点になるためには韓国が北朝鮮の脅威を専担し、アメリカに参加して中国を牽制しようということだ。これにより、THAADや中距離ミサイルの配備の可能性もあるが、そうなれば韓国の状況はさらに難しくなる」と予想した。

このような状況で韓国にどのような選択肢があるのかという質問に、文氏は「まず、なぜわれわれにとってアメリカが必要なのか考えるべきだが、それが北朝鮮の脅威を取り除くということなら北朝鮮と平和に暮らせる雰囲気を作ることが必要だ。そうすればアメリカだけでなく、中国への依存も減らすことができる」と説明した。

彼は「同盟に対して過度に信頼することにも気をつけるべきだ。これまでのようにアメリカを完全に信じることはできないし、アメリカも韓国がそう思っていることを望んでいない。韓国がより自律的に考えてほしい。韓米同盟を維持しながらも、韓国が主力であり、アメリカ軍が支援軍になるためには、戦時作戦統制権を早く取り戻さなければならない」と助言した。

文氏はトランプ政権が在韓米軍の戦略的柔軟性を強調し、朝鮮半島から在韓米軍の常時配備を撤回しようとする場合、「代わりにオフショアバランサーとして韓米同盟を引き続き維持しようという提案もできる。われわれが米国から必要なのは宇宙資産、海軍、空軍力だが、この部分を助けて地上軍は出てもいいと、このように話せるはずだ」と提案した。

彼は「このような構想は、アメリカ側が持ち出す前に私たちが先に話す方が協議過程で有利だろう。われわれが積極的にアイデアを出して提起する方式でなければならない。アメリカが在韓米軍の戦略的柔軟性などを要求するたびにわれわれがしぶしぶ一つずつ出すという消極的な方法では難しい」と展望した。

このように、トランプ政府は対外安全保障政策で少なからぬ変化を予告している。また、経済面でも同盟国に一番最初に高い関税を課し、事実上、第2次世界大戦後、アメリカが作ってきた「自由国際主義的」な秩序を壊している。

文氏は「アメリカがこれまで覇権的安定国家の役割を果たしてきたが、あまりに多くを与えても返ってくるものがなく、損ばかりしてきたので、これを逆転させようとするのがトランプ政府の基本的な考え。国際法や国際規範を気にせず、アメリカ国内の白人中産階級のための経済を作り、それを基に米国をより強く、より豊かな国家にしようとするものだ」と分析した。

このようなトランプの戦略は成功するのだろうか。文氏はは最近発刊した新刊「米国外交はなぜ失敗するのか」を通じて、11人の世界的な学者たちと米国外交の難局とその起源を指摘し、現状を点検し、代案を模索した。

文氏は今回の新刊で、ロバート・ガルーチ元米国国務省次官補、ロバート・カリン元CIA北朝鮮分析官、スーザン・ソントン元米国国務省アジア太平洋担当次官補代理、カール・アイケンベリー元アフガニスタン駐アフガニスタン大使などの元官僚の講演を聞き、彼らとの対話を通じて米国外交の具体的な姿を探った。

また、シグフリート・ヘッカー・スタンフォード大学名誉教授、チャールズ・クプチャン・ジョージタウン大学教授、ウォルター・ミッドバード・カレッジ特任教授、ジョン・アイケンベリー・プリンストン大学特任教授、ビノード・アガワル・カリフォルニア大学バークレー校特任教授、ヴァン・ジャクソン・ビクトリア大学教授、ミランダ・シュローアス・ミュンヘン工科大学教授など学界の人々とも講演や対話を通じて、米国の外交と対応策を検討した。
(2025年4月2日、プレシアン



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