ニュースリリース|トピックス| 2025年03月17日(月)
2025年2月28日(現地時間)、米国のドナルド・トランプ大統領とバンス副大統領、そしてウクライナのゼレンスキーとの舌戦には、ロシアのプーチン大統領に対する明確な認識の違いが背景にあった。
ゼレンスキー大統領は「侵略者」であり「殺人者」であるプーチン大統領に有利な交渉を受け入れることはできないという立場であったが、トランプ政権はゼレンスキー大統領のプーチン大統領に対する嫌悪感こそが交渉の障害だとみなした。
このような認識の違いには、ロシアに対する戦略的立場の違いが強く根底にある。ヨーロッパとバイデン政権との戦略的目標は「ロシアの弱体化」に重点を置いていた。ロシアがウクライナを侵攻すると、強力な経済制裁と合わせて莫大な軍事支援を行ってウクライナ側の「勝利」を図ったのもこのような文脈から出たものだ。
しかし、トランプ政権の考えはまったく異なる。トランプは、米国主導の単極体制が可能であっても、それは望ましくもないと考えている。これまで米国が単極体制を維持しようと莫大な資源を注ぎ込んできたが、世界秩序の多極化は避けられなくなっており、米国がこれに固執し続けると「損をする商売が続く」という認識が非常に強い。
そのため、トランプはロシアが多極体制の一翼を担うことを認めようとしている。米ロ戦争の早期終結を求めるのも、こうした対ロ戦略の変化の一環なのだ。
トランプがプーチンと友達になろうとする理由は何だろうか。 多くの人は「逆キッシンジャー戦略」を挙げる。1970年前後、ニクソン政権がソ連封鎖を強化するために中国と手を組んだように、今後は中国封鎖に集中するために対ロ関係の改善を図っているというのだ。
しかしこの分析は、見当違いな分析となる可能性がある。まず、当時と現在では大きな違いがある。
1960〜70年代に中ロ関係は領土紛争を起こすほど悪化していたのに対し、今日の中ロ関係は史上最高と言っても過言ではないほど癒着している。また、一般的に知られていることとは異なり、ニクソン政権がソ連封鎖を強化したとも考えにくい。むしろ、ニクソン政権はソ連や中国に対して「同時的な関係改善」に取り組んだ。
すなわち、中国との関係正常化を追求しながらも、ソ連とは戦略兵器管理・削減交渉を開始し、かなりの成果も収めた。米中関係の正常化と米ソ間のデタントが、ニクソン・キッシンジャーの目標だったのだ。
トランプのアプローチもこれに似ている。トランプが最も望んでいることは、プーチンと習近平国家主席と会い、核軍縮を行って国防費を大幅に削減することで合意することだと言える。
トランプは、3大核保有国であり、軍備支出国である米中ロの首脳が集まり、世界史の1ページを飾るという野望を抱いている。そのためには、ニクソンがベトナム戦争の泥沼から抜け出したように、トランプもウクライナ戦争を早く終わらせなければならないと考えている。ゼレンスキーが自分の言うことを聞かないと、面前で面罵を浴びせるだけでなく、軍事支援を一時停止するよう指示まで出した。
ウクライナの安全保障をめぐる対立も、このような文脈で読むことができる。ウクライナと欧州は、戦後の安全保障のためには、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟や米国の安全保障が不可欠だと考えている。しかし、トランプ政権は、NATOの東進が戦争の核心的な原因だったと見ており、ウクライナのNATO加盟や米国の安全保障が「逆効果」になる可能性があると考えている。
このように、トランプ政権は米中ロ中心の「地政学的多極化」が世界秩序の必然的かつ望ましい未来だと見ている。 しかし、国際秩序の多極化は中国とロシアはもちろん、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の戦略的目標でもある。
従来の米国をはじめとする西側陣営とは異なり、トランプがこれらの国の指導者との親交を掲げながら取引を試みることを明らかにしたのには、「多極化」という共通分母が存在するのだ。
トランプがプーチンと親しくなろうとするのも、このような文脈で理解できる。プーチンは、トランプが交渉の対象としている中国、朝鮮、イランの指導者と最も親しい人だ。そのため、トランプはこれらの国の指導者を相手に取引を試みる際、プーチンの助けが得られると考えている。
このように、トランプは同盟・友好国に対しては「帝国主義的振る舞い」を、競争国や敵対国に対しては「取引主義的振る舞い」を見せている。しかし、自由主義陣営が不満と不安ばかりを吐き出している場合ではない。世界を「自由主義対権威主義の対決」という二分法的な世界観と決別し、敵対国との関係改善を図る時である。これが「自助努力の時代」に最も賢明な生存戦略だ。
(プレシアン、2025年3月5日、鄭旭湜コラム)