ニュースリリース|トピックス| 2025年01月15日(水)
「トランプ2.0時代」がもたらすさまざまな外交・安全保障上の「リスク」に備える必要性がこれまで以上に高まっている時期に、尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領が起こした非常戒厳はで韓国は事実上の麻痺状態に陥った。2024年12月7日、尹大統領に対する国会の弾劾議決は行われたが、韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行(国務総理)が国会推薦分の憲法裁判所裁判官3人の任命を拒否し、事態はねじれ始めた。内乱局面が長期化し、大韓民国が80年間築き上げてきた民主主義と経済発展という二つの柱が大きく損なわれる恐れが高まっている。
現在の状況について、米国をはじめとする国際社会はどのような見解を持っており、トランプ2.0時代がもたらす不確実性にどのように対応すべきなのか。 文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に大統領府平和企画秘書官と外交省第1次官などを務め、第1期トランプ政権と直接対峙した崔鍾健(チェ・ジョンゴン)延世大学教授(政治外交)に2024年12月30日、解決策を聞いた。(キル・ユニョン論説委員)
――米国は現在の韓国の危機をどう見ているのか。
まず、もうすぐ退任するバイデンの米国だ。彼らは安定的な状況管理に注力するしかない。2つのメッセージを出している。「韓米同盟は堅固である」、そして「韓国の憲法手続きと韓国国民を支持する」だ。韓米関係の安定を志向しながらも、違法な戒厳令を行った尹政権と実質的に別れを告げるものと解釈できる。
もう1つは、1月20日に就任するトランプの米国だ。トランプは直接的な発言を控えている。状況が解決されるまで管理だけするつもりだろう。2017年に朴槿恵大統領が弾劾されたときもそうだった。当時も米国と黄教安(ファン・ギョアン)権限代行政権には、意味のある外交的コミュニケーションがなかった。
――現在の状況が長期化することは、私たちにとって非常に大きな不確実性だ。
その通りだ。2017年のろうそく革命の時は、国民が団結して弾劾手続きをうまく進めた。今は暗いトンネルに入り、弾劾手続きの終結の光が見えない。トランプ大統領が就任すれば、すぐに誰と接触すべきなのか不安だ。
選出されていない代行権力は、政治的責任性を持って積極的に政策を展開することができない。政権初期からトランプが打ち出すと思われる「普遍的な関税」をはじめさまざまな措置に積極的に対応できず、手詰まりになる可能性が高い。
結局、尹錫悦の違憲的なクーデターによって発生した苦痛を、国民全員が円(n)分の1ずつ分担しなければならない。内乱事態というトンネルに閉じ込められて、この局面が終わるまで耐えて耐え忍ばなければならない。
――バイデン政権は「価値外交」を推進し、韓国を民主主義の模範国と称賛した。
大韓民国は大きな嘲笑の対象になった。自由・人権・民主主義を宗教的に叫び、米議会で演説し、ホワイトハウスの国賓晩餐会で歌まで歌った尹大統領は非常に独裁的な姿を見せた。米国はだまされたと感じている。
12月3日夜以降、トランプ政権の高位指名者を含め多くの学者・官僚・政治家から連絡があった。彼らは「韓国の与党保守勢力は民主主義をよく理解しているのか」「憲法の価値を厳しく考えているのか」と尋ねた。ある人物は12月3日夜、「とても残念だ」と話した。欧州連合側の反応も同様だ。英語でlaughable(笑える)と言った人もいる。嘲笑の対象という意味だ。韓国の民主主義が嘲笑の対象になった。
韓米同盟はこれまで、北朝鮮の抑止という冷戦的な要素を通じて結束してきた。今は違う。韓国は模範的な民主主義をリードする国であり、米国にとっては誇らしい同盟国となった。そんな国の大統領が突然、非常戒厳を宣言し、軍に「銃でも撃って議員を追い出せ」と言った。米国は今後、韓国の保守勢力に対する評価を変えると思う。
――与党「国民の力」は、韓権限代行に対する弾劾で不安定性が高まったと主張する。
選出されていない代行政府体制の下で状況がより安定するはずがない。米国が出すメッセージは同じだ。「韓権限代行時も一緒に働く準備ができており、韓米関係は堅固だ」と述べた。チェ・サンモク副首相が権限代行になった時も同じメッセージを出した。
――尹政権は内乱事態に先立ち、9・19南北軍事合意を効力停止(2023年11月22日、北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げを理由に一部効力停止し、2024年6月4日の「汚物風船」を理由にすべて効力停止)させた。米国はこれをどう評価したのか。
ポール・ラッカマーラ元駐韓米軍司令官(国連司令官、韓米連合司令官兼任)側は反対の立場だった。9・19合意は停戦協定の延長線上にある。この合意が維持されれば、非武装地帯(DMZ)接近地域の軍事的安定を維持することができる。
東アジアで危険な2つの地域として朝鮮半島と台湾がある。台湾海峡では中国の決意による「計画的戦争」、朝鮮半島では「偶発的戦争」が発生する可能性が高い。その意味で、米国は尹政権が朝鮮半島の偶発的な軍事衝突を防ぐことができる9・19合意をなくしたことに大きな不満を抱いていた。
さらには9・19合意をなくした人たちが平壌に無人機を送ったと思われ、北方限界線(NLL)付近で強度の高い海上訓練を行い、北朝鮮を刺激した。今回の内乱の「企画者」と呼ばれるノ・サンウォン元情報司令官の手帳から「NLLで北朝鮮の攻撃を誘導する」というメモが発見された。結局、戦争を誘導するために9・19合意をなくそうとしたのではないかという「合理的な推論」をするしかない。
米国は尹政権が自分たちの「政治的アジェンダ」のために緊張を助長したのかと問うしかない。それが思いもよらないクーデターであれば、より不気味に思うだろう。
――もうすぐ第2期トランプ政権が発足する。
首脳外交の現場でトランプを見てきた。トランプは知られているものとは大きく違う。気分で行動しているように見えるが、ドアを閉めて交渉してみると非常に真面目で、相手への配慮もある。パーティーでのていねいなホストのように、「食事はどうだったか、来るのに問題はなかったか、家族はどうだったか」という外交的なおもてなしが上手だ。
その一方で、欲しいものを着実に、そして執拗に要求する。自分の国内政治的地位を強化するために、大胆に外交イシューを活用しようとする。「防衛費分担金の5倍引き上げ」を要求し、文大統領に「この問題が次の大統領選挙のために自分にとって非常に重要だ」と言うほどだった。
また、バイデンとは異なり、国家関係を「2国間関係」で把握する。相手が米国に役立つかどうかを見る。この基準で見ると、韓国は明らかに米国に役立つ国だ。とくに半導体、バッテリー、電気自動車、バイオなど未来産業分野でどの国よりもよい協力関係を維持している。韓国企業が「国内共同化」が懸念されるほど米国に投資している。
われわれはワシントンにもメッセージを送る必要があるが、韓国企業が多く進出している地域の政治家にも積極的にアプローチする必要がある。
――多くの専門家は、トランプ大統領は「人間的な信頼関係」を重視するとし、安倍晋三元首相を例に挙げている。
実際、2人はファーストネームで呼び合う関係だった。文元大統領の前で、安倍元首相を「シンゾウ」と呼んだこともある。しかし、人間的な親密さが国益を扱う問題ではどの程度作用するだろうか。トランプ大統領が安倍首相に対して下僕(servant)の形容詞的表現で「従属的」(subordinate)という言葉を使ったこともある。
もちろん、首脳間の人間的な関係は非常に重要だ。しかし、それで国益を確保できるのだろうか。
――トランプ政権が発足すれば、まず防衛費分担金の増額を要求するだろうという予測が多い。どう対応すべきか。
この問題の最終決裁者は国会だ。批准同意を得なければならないので、国会が受け入れられる範囲で合意しなければならない。
米国が要求する増額分を目的に合わせて使用できるかどうかも見なければならない。文政権の時、われわれが与党だったが、防衛費分担金を5倍に増やすことを受け入れられなかった。米国が提示する根拠も同じだった。朝鮮半島上空を旋回する人工衛星や戦略資産展開にもお金を払うと言った。各機種ごとに金額をつけてきた。
そうすると、相互互恵的な同盟ではなく「傭兵」との関係に近くなる。これを私に提示した米国のカウンターパートは、恥ずかしかったのか、私とは目も合わせなかった。
そうすると、お金を「本当に」たくさん払わなければならない。使用済み核燃料の「再処理権」などを得ようという意見もあるが、増額を受け入れたら際限がない。そのような取引なら、韓米同盟は何になるのか、傭兵なのか。2023年11月の合意内容を守らなければならない。
――次の関心事は在韓米軍の撤退や削減だ。第1期の外交・安全保障当局者の回顧録を見ると、トランプ氏が撤退を望んでいたことは明らかだ。
米国の政権内部でうまく阻止したのか、私たちに直接要求したことはない。
まず、撤退は不可能だ。また米中間の戦略競争が繰り広げられている中、中国の領土から最も近い米軍基地を撤退させるのは不合理だ。ただし、削減は可能だ。現在、あまりにも地上軍中心で構成されており、この点で韓米間の調整が行われる可能性がある。
しかし、この線を超えて在韓米軍の性格を変え「中国牽制」に使うためには、韓米相互防衛条約を改正しなければならない。これを堂々とできるだろうか。
――駐韓米軍に「中国牽制」の役割を任せるべきだと主張してきたエルブリッジ・コルビーが国防部長官に指名された。
時間を見ると、1期時は「最大8年」の時間があったが、現在は2年+αだ。2026年11月の中間選挙までだ。最も差し迫った問題はウクライナ戦争だ。この問題を扱わなければならないのに、在韓米軍の性格を変えるというのは不自然だ。
ただ、バイデン政権の時とは異なり、韓米連合訓練や戦略資産展開の部分では「トーンダウン」する可能性が高い。それはまずこのような動きが北朝鮮に「対話のシグナル」になり、次にトランプ大統領が重視するコストを減らすことができる。
B-1B「ランサー」がグアムから朝鮮半島まで行き来する費用が52億ウォン(約5億円)だったと米国が明らかにした。トランプ大統領がなぜこんなにお金を払わなければならないのかという反応を見せれば、戦略資産の朝鮮半島への展開が減る可能性がある。
――尹政権の2つの「外交遺産」は、韓国に対する拡大抑止(核の傘)を強化した「ワシントン宣言」と、韓米日軍事協力を約束した「キャンプデビッド宣言」だ。それぞれの運命はどうなるのか。
ワシントン宣言は法的拘束力のない政治的宣言だった。バイデン政権が退陣すれば、前述したようなコストの問題で消える可能性がある。韓米日3国間協力というプラットフォームは、トランプ政権が自分たちが望む方法で活用すると思う。ただ、今のように北朝鮮や中国を牽制する強い意味よりも、費用請求のための枠組みになると思う。 外的には韓米日協力を続けるというメッセージを出すだろうが、自ずと弱体化される可能性がある。
――注目すべきもう一つの問題は、米朝対話再開の可能性だ。
この問題は構造的に見なければならない。トランプ1.0の時と何が違うのか。
まず、以前にはなかったロシアが登場したこと、次に韓国の不在だ。2018~19年、ロシアは朝鮮半島平和プロセスを支持する韓国の味方だったが、今は北朝鮮の味方だ。金正恩総書記は、米ロ2カ国からロシアを選ぶという「戦略的決断」を下した。しかも、第1期時にファシリテーターの役割を果たした韓国がいない。
今の北朝鮮から見れば、韓国は言うまでもなく「敵対的な2国」であり、米朝対話が行われるのは構造的に難しい状況だ。このような状況で対話が始まるためには、金正恩が踏み出せる根拠を米国が提供しなければならない。単純に「私たちは会ったことがある、愛し合ったことがある」というようなメッセージではダメだ。金正恩が「本当に米国と会う必要がある」と思えるようなインセンティブを与えなければならない。韓米連合訓練の先制的な中断や、2019年2月のハノイで合意できなかった部分についての再議論を示唆することになるだろう。
トランプ大統領はウクライナ戦争を止めるという言葉を繰り返している。終戦が実現すれば、北朝鮮の「戦略的価値」は低下する。そうなれば、再び北朝鮮がワシントンの方に出てくる理由が生まれる。
しかし、第1期時に仲介の役割を果たした韓国が不在で時間も短い。どうなるか見守る必要がある。もちろん、トランプ側の人々と話をしてみると、北朝鮮問題に関心が多く、第1期の時に成功しなかったことに相当の不満を持っているのは明らかだ。それがトランプ大統領の気持ちだが、そう思うようになるかどうかは別問題だ。
――新政権が発足したら、南北関係はどのようにすべきか。
北朝鮮に送るべき最初のメッセージは、南北和解よりも国境地域の軍事的緊張を下げようというものでなければならない。2024年秋、尹政権が北朝鮮を刺激したとき、北朝鮮は米国に南を止めてほしいというメッセージを出した(金与正・労働党副委員長は2024年10月14日の談話で「野良犬を飼った飼い主が責任を負うべきことだ」と反応した)。
また、南北連絡道路を断ち切り、防護壁を立てるという防御的な姿勢を見せた。まず、北朝鮮への拡声器放送を中断させ、ビラ散布の取り締まりなどの措置を取りながら、9・19合意に戻ろうと提案してみるといいだろう。
進歩陣営の対北朝鮮アプローチも以前のものを踏襲するのではなく、アップグレードすべきだ。統一に先立って平和を話さなければならない。
(2024年1月2日、『ハンギョレ』)