ニュースリリース|トピックス| 2024年11月30日(土)
ウクライナが一部地域を占領したロシア領のクルスクが、ロシア・ウクライナ戦争の「主戦場」として浮上している。2024年の春と夏の大反撃に失敗したウクライナは、8月にクルスクを奇襲占領し、ロシア軍と激しい交戦を繰り広げてきた。
このような状況下で、朝鮮(北朝鮮)とロシアは2024年6月に締結した朝ロ条約を根拠に、クルスク奪還のための共同作戦を準備しているようだ。そのような中、アメリカのバイデン政権は、アメリカがウクライナに提供したATACMSミサイルをウクライナがロシア領土を攻撃するために使用することを許可したとアメリカ・メディアが一斉に報道した。
ATACMSの1次的なターゲットは、クルスクに駐留している北朝鮮・ロシア連合軍になるとみられる。これと関連し、『ニューヨーク・タイムズ』は11月17日(現地時間)、バイデン政権のATACMS使用許可決定が、派兵を行った朝鮮に「代償」を払わせ、追加派兵を抑制し、クルスク防衛戦でウクライナ軍を支援する目的で行われたと報じた。
このようなアメリカ政府の決定は、ロシアが主張してきた「禁止線(Red Line)」に該当する可能性があるという点で、拡大の懸念を高めている。2023年9月、ウラジーミル・プーチン大統領は、西側がウクライナにロシアの領土打撃を許可すれば、「ロシアと戦争中という意味になる」と警告したことがある。
そして、ATACMS使用許可報道が出た直後、ロシア議会の下院(ドゥーマ)国際問題委員会の副委員長であるウラジーミル・ザバロフ氏は「第3次世界大戦の開始に向けた非常に大きな一歩」と反発し、上院憲法委員会のアンドレイ・クリシャス委員長は「西側がウクライナの自主権を完全に荒廃させることができるレベルまで突き進むことを決定した」と警告した。
これは、ATACMSを利用したウクライナのロシア領土攻撃が実際に行われれば、ロシアはウクライナに対する無差別攻撃と北大西洋条約機構(NATO)に対する報復に踏み切る可能性があることを示唆したものだ。
バイデン政権の今回の決定は、「24時間以内に」戦争を終わらせると約束したドナルド・トランプ次期大統領の立場とも衝突する。トランプ次期大統領側は、早急な停戦のために休戦案の準備に没頭しているが、バイデンの今回の決定が拡大戦争を引き起こす可能性があるためだ。アメリカの現職大統領と次期大統領の立場差が、米ロ戦争の核心的な変数として登場しているのだ。
クルスクがウクライナ戦争の主戦場として浮上している点にも注目する必要がある。ウクライナがクルスクの奇襲占領に踏み切った意図は、停戦や終戦交渉が開始されれば、それをテコにしてロシアに奪われた領土を取り戻すということにある。
これを意識したロシアはクルスク奪還作戦に乗り出す一方、停戦交渉の条件の1つとしてウクライナのクルスク撤退を提示してきた。
これが受け入れられなかったため、ロシアは朝鮮の支援を受け、クルスク奪還作戦に総力を注ぐ構えだ。このような動きは、ウクライナがアメリカを含むNATOと韓国に軍事支援の拡大を要求してきた根拠となっている。ところが、バイデンがATACMSの使用を許可したことで、宿願の一つが解消される兆しがある。
このミサイルは射程距離が300キロメートルに達し、サッカー場3、4個分の面積を壊滅させる破壊力を持っており、朝ロ連合軍を攻撃してクルスク占領を維持するために使用できると考えられるからだ。
しかし、バイデン政権が言う朝鮮軍の派遣の「対価」、つまり相当数の死傷者が発生した場合、朝鮮がどのように対応するかは未知数だ。ATACMSの威力に驚いて追加派兵を控える可能性もあるが、その逆の場合もありうる。
また、朝鮮が参戦地域をクルスクに限定せず、他の戦線に拡大させる可能性もある。何よりも、ロシアの強力な報復作戦の口実となる可能性がある。
一方、ウクライナのATACMSをはじめとする中長距離ミサイルの追加確保は不透明だ。現在の保有量で朝ロ連合軍に一時的な打撃を与えることはできるが、ウクライナに対する軍事支援の縮小や中断を公言してきたトランプ政権が発足すれば、状況が変わる可能性があるからだ。
このように3年目を迎えようとしているウクライナ戦争は、「拡大か休戦か」という重大な岐路に立っている。違法な侵攻を強行したロシアと、それを助けている朝鮮の選択は非難されて当然だ。
同時に、戦争の勃発と長期化において無責任で無能な姿を見せたバイデン政権が、任期終盤に拡大戦争を引き起こす可能性のある選択をしたのも残念な現実だ。拡大の危険を抱えた戦争の長期化による最大の被害者は、ウクライナの人々であるため、より一層そうである。
(2024年11月19日、プレシアン、鄭旭湜)