ニュースリリース|トピックス| 2024年11月29日(金)
この1年間、北朝鮮経済が大きく変化しました。最も重要な変化は、北朝鮮ウォンの価値下落と言えます。
ご存知の通り、2010年代初頭からほぼ10年間、北朝鮮ウォン対米ドルの為替レートは1ドル当たり8000ウォン水準で続いてきました。中国人民元や他の外貨でも大きな変動はありませんでした。しかし、2024年に入って急激に下落し始めました。同年11月末のアメリカドルの為替レートは2万5000ウォンまで上がりました。
2024年、北朝鮮では月給、つまり生活費が引き上げられました。 数千ウォンに過ぎなかった生活費は約20倍以上増え、2~3万ウォン水準を達成したという報道があります。
このような変化は市場価格に大きな影響を与えます。ただし、物価の変化は予想より大きくなかったです。最近、穀物販売所のコメ1キログラムの価格は7000ウォン程度という報道がありました。これは2023年の価格より高いですが、為替レートほど高くなったわけではありません。
このような経済指標の意味は何でしょうか。
まず、北朝鮮経済の孤立がより深刻になったことを意味します。1990年代末から北朝鮮のコメの価格は国際市場価格にしたがって動いていましたが、今はそうではありません。北朝鮮当局は独立したコメの貿易を完全に遮断し、北朝鮮の国内市場を孤立させました。
しかし幸いなことに、この孤立した市場には穀物は豊富にあるようです。そうでなければ、コメの価格は大幅に上昇していたでしょう。とくに、市場や穀物販売所の穀物は、ほとんどロシアからの食糧援助に依存しているとみられます。
最近、北朝鮮の官営メディアが急に小麦粉の食べ物を賞賛していることを考えると、ロシアがコメやトウモロコシだけでなく、ロシアの人々の基本的な食べ物である小麦も援助しているようです。
もう一つの意味は、当局が強力に外貨をコントロールしているということです。
北朝鮮の人々が外国通貨を昔ほど簡単に使用したり、交換することができなければ、為替レートと市場価格との関連性は低くなります。言い換えれば、金正恩政権は金日成時代の経済を復活させようと懸命に努力しているように見えます。
彼らは個人貿易だけでなく、様々な個人経済活動を統制し、国家を中心とした計画経済、命令式経済を再び構築しています。
問題は、世界の歴史が数え切れないほど示しているように、計画経済は市場経済を上回る効率性がなく、長期的に市場経済に追いつけないだけでなく、ますます遅れをとることになるということです。とはいえ、現段階で北朝鮮の指導者たちは、この構造的な問題を克服する方法があります。
彼らは中国から支援を受け、とくにロシアと武器貿易を行い、ロシアに派遣された北朝鮮の兵士たちはお金を稼ぐ手段です。
結局、北朝鮮がロシアと中国をはじめとする海外からの支援を十分に受けることができる間は、計画経済であってもある程度の稼働が可能でしょう。大きく成功することはできませんが、少なくとも飢饉は発生しないでしょう。 外国の支援と援助が増えれば、住民の生活もある程度良くなる可能性があります。
皮肉なことに、今日、北朝鮮の経済状況に影響を与える国家機関は、内閣の経済機関よりも外務省と国防省と言えます。彼らが海外から支援を得てくる間は、経済分野でも、少し前に始めた「戦略的後退」が災難が降りかかることにはならないでしょう。
(2024年11月28日 RFA、アンドレイ・ランコフ教授)