ニュースリリース|トピックス| 2024年11月26日(火)
原子爆弾を開発した科学者が作った非営利団体「原子力科学者会報」は「終末時計」を運営している。核の脅威を想定し、真夜中(滅亡)までの残り時間を推定した仮想カウントダウン時計だ。
1947年に「7分前」で稼働を開始したこの時計には現在、残り時間が「90秒」となっている。史上最短だ。
連日出てくるロシアの核の脅威を聞けば、警告が誇張ではないようだ。ロシア・中国・北朝鮮など問題のある核保有国に囲まれた韓国では、核武装を主張する声が高まっている。世論調査では60%が核武装に賛成と答え、一部の政治家もこのような世論に加わる。北朝鮮との核交渉に参加したある元外交官は「途方もない覚悟が必要なこと」と語った。
単純だが、見落としがちな事実がある。現在の核保有9カ国の構成だ。強力な核不拡散条約である国連のNPT(核不拡散条約)発効時点で、すでに核兵器を持っていた安保理常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)を除けば、インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の4カ国が核兵器を手に入れた。このうち、インド・パキスタン・イスラエルはそもそもNPTに加盟したことがない。
北朝鮮はNPT加盟国でありながら核開発に着手したことでさまざまな制裁を受け、結局、2003年に世界で初めてNPTを脱退し、「世界のいじめっ子」になった。この道をたどる国がイランだ。もし韓国が核を開発すれば、「NPT加盟国でありながら核武装を選択した国・3号」(常任理事国を除く)になる。
ドナルド・トランプがアメリカ大統領に再選されたことで、核武装の道が開けるかもしれないという声も出ている。トランプが外交成果のために北朝鮮の核を認め、代わりに韓国に核武装を認めるかもしれないという論理だ。
トランプが在韓アメリカ軍を減らす代わりに核武装を「プレゼント」として与えるという予測も出ている。これについて、よく引き合いに出される根拠が、2016年の大統領候補時代のトランプのニューヨークタイムズ紙とのインタビューだ。「日韓の核武装がいつか議論されると思う」という発言がこれまで取り沙汰されている。
インタビュー全文がホームページにあるので、読んでみた。文脈はこうだった。
「アメリカが今のように臆病であれば、核武装の話はずっと出てくるでしょう。 私たちが非常に強く、裕福にならなければ、(韓国・日本のような)同盟国はそれ(核武装)を議論することになると思います」
オバマ政権がアメリカを萎縮させたと非難して出てきた話だ。直前の発言は「世界最大の危険は核拡散」だった。2023年9月の遊説でも、トランプ氏は支持者が「最大の脅威は何か」と尋ねると、「文明を脅かす唯一の最大の脅威は核兵器の増加」と即答した。
トランプが大統領から退任した4年の間に、核の脅威ははるかに大きくなった。すでに50基の核弾頭を保有していると推定される北朝鮮は、ロシアと緊密に連携して戦争をしている。ロシア・北朝鮮と交流しているイランは現在、1~2週間程度で核兵器製造が可能なレベルまでウラン濃縮をしたとアメリカは見ている。
トランプ大統領は、これらの国々に対応する原則が核施設攻撃を含む「最大圧力(maximum pressure)」だと何度も明らかにしてきた。このような状況で、韓国が核武装を口にするのは現実的だろうか。
運だけを頼りに無防備で核拡散時代を乗り切ろうという話ではない。 だからといってNPTを脱退する覚悟で核武装を強行すれば、その後の影響は想像しにくい。アメリカが一部のNATO加盟国に実施している戦術核の配備・運用も一つの方法だが、もっと身近な選択肢もある。
2023年の韓米首脳会談で採択された韓米安全保障協定の「ワシントン宣言」のフォローアップとして、アメリカの核兵器運用に韓半島を含めるなど、具体的な核対応措置がすでに導き出されている。政権が変わったとはいえ、ワシントン宣言はすでに共和党が多数派だった下院も超党派的に採択したものだ。
ワシントン宣言には「韓国はNPT上の義務を遵守する」という約束も刻まれている。冷静で冷静になるべき時だ。
(2024年11月26日、朝鮮日報)