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軍縮から見た2025年北朝鮮の争点(研究報告書)

ニュースリリース| 2024年11月24日(日)

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統一研究院「2025年北朝鮮の争点:軍縮・軍備統制議論への対応を中心に」から

 本研究は、2025年に登場するアメリカの新政権と北朝鮮との間の、いわゆる核軍縮(nuclear disarmament)交渉の可能性を扱う。北朝鮮の核問題は30年間解決されていない難題の中の難題である。とくに、2019年のハノイ米朝首脳会談以降、長期的な膠着状態に突入したことで、外交による非核化努力は停滞している。

【要 旨】
 北朝鮮はどんな苦痛を覚悟してでも核能力を強化しようとしており、アメリカは強力な軍事的抑止と経済制裁で対応している。米朝両側が相手の戦略に屈服する可能性がかなり低く、自分の目標を転換する意思もない状況で、北朝鮮の非核化の見通しは暗い。

 しかし、米朝間で交渉と妥協の可能性がまったくないと断言することはできない。北朝鮮は、核保有国の地位確保と経済難打開のために、アメリカとの関係構築が役立つことをよく知っている。アメリカは、北朝鮮がワシントンとニューヨークに対する核攻撃の脅威を高めるのをいつまで見ているわけにはいかない。

 両者のこのような動機は、いつかはわからないが、対話と妥協が発生する可能性もあることを意味する。とくに最近、アメリカの一部の関係者が核軍備管理(nuclear arms control)アプローチの模索、中間段階(interim step)としての交渉の必要性、対北朝鮮制裁とアメリカ本土の核脅威の交換可能性を言及したが、これが2025年以降のアメリカの新政権の対北朝鮮政策の変化が注目されている。

 アメリカ内部のこのような代替的な主張は、これまで北朝鮮の核を対話で解決しようとする韓国とアメリカをはじめとする国際社会の基本的な立場と相容れない。しかし、北朝鮮との慎重でない交渉により、韓国に対する北朝鮮の核の脅威は減少や除去されないまま、北朝鮮の非核化協力体制だけが損なわれる可能性に対する懸念が韓国内で提起されている。

 とくに、北朝鮮がアメリカから核保有国の地位を黙認されれば、核能力の一部でも恒久的に確保しようとする目的で核軍縮に踏み切れば、米朝交渉がむしろ北朝鮮の完全な非核化に戻しがたい逆効果をもたらす可能性がある。

 このような挑戦的な要因に対応するため、本研究は、今後のアメリカ新政権と北朝鮮の核軍縮交渉シナリオを中心に、可能性、理由、特徴、挑戦要因を識別し、これに対応するための一般的な原則とシナリオに合わせた考慮事項を提示した。

 本研究は結論として、2025年にアメリカ新政権と北朝鮮との間で軍縮または軍備管理交渉が開始される可能性は極めて低いと評価する。たとえ交渉が進んだとしても、米朝両側がこれを戦略的というよりも政治的な次元でアプローチすることで、妥協の過程まで至る可能性も高くないだろう。

 交渉開始と妥協に悲観的な理由は以下の通りだ。

 まず、北朝鮮が望む軍縮は、核不拡散条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons、Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons、NPT)上の核保有国として認めてほしいということであり、アメリカの軍備統制的アプローチは、北朝鮮をNPT上の核非保有国として残そうというものである。目標が異なるため、妥協の余地は極めて低い。

 第2に、たとえ軍備統制方式で交渉しても妥協の可能性が高いと断言できないのは、北朝鮮の非核化の条件が「全世界の非核化」だからだ。これは結局、非核化をしないという意思であることをアメリカはよく知っている。

 第3に、アメリカは現在、中国・ロシアとの軍備競争に専念しており、仮に軍備統制を推進するとしても、その対象は北朝鮮ではなく、これらの国になる可能性が大きい。

 第4に、アメリカの新政権で北核問題の優先順位は過去より低くなるだろうし、北朝鮮はいったん、ロシアとの軍事協力でより高いレベルの核能力を確保することに注力する可能性も大きい。

 最後に、2019年の両者の妥協の失敗でさらに悪化した相互間の高質的な不信感も、妥協の過程に障害物として機能するだろう。

 たとえ米朝間の交渉と妥協の可能性が大きくないとしても、われわれがこれを傍観することはできない。米朝交渉と妥協の過程で重要な挑戦的状況が提起されるだろうし、万が一妥協に成功した場合、これを北朝鮮の実質的な非核化の機会として積極的に活用しなければならないからだ。

 このような点を考慮すると、韓国政府が堅持すべき対応原則は以下の通りである。1)米朝交渉の公式名称、形式、内容から「軍縮」を排除、2)対話を通じた北朝鮮の完全な非核化の原則を堅持、3)先米韓共助、後米朝対話、4)韓国政府の「大胆な構想」との積極的な連携など4つである。

 また、在韓米軍撤退と米韓核協議グループ(NCG)は米朝交渉の議題から除外しなければならない。北朝鮮の欺瞞に備え、韓国の安全保障の根幹を損なうことはできないからだ。

 米朝間交渉に対する過敏反応や過剰対応をする必要はない。挑戦的な状況をうまく管理すれば、われわれに戦略的に有利な状況が造成される可能性がある。万が一、米朝交渉が妥協と履行段階に進んだ場合、私たちは米朝交渉に戦略的に関与しなければならない。

 われわれの安保に重大な影響を及ぼす約束を私たちが傍観したり、アメリカとの事前調整だけに頼ってはならない。われわれは上記の4つの原則に基づき、米朝交渉が北朝鮮の非核化交渉に性格が転換されるように努力しなければならないだろう。そして、私たちの「大胆な構想」を米朝交渉と連携し、北朝鮮を非核化交渉に縛り付け、実際の非核化の道に入るしかない環境を主導的に造成しなければならない。

 つまり、米朝軍縮交渉を米韓北3者非核化交渉に転換するための大胆な計画と準備が必要だ。

 
分野別で見た北朝鮮の軍縮論(113ページ)
区 分 兵力削減 武器削減 核脅威削減 軍縮検証
1950年代 ・外国軍(在韓米軍)同時撤収(1953年)
・南北軍隊10万以下に削減(1954年)
・一方的兵力削減(1956年)
兵力部分削減による装備の縮小(1956年)    
1980年代 ・南北段階的軍縮(1987年) ・WMD及び攻撃能力措置の取り下げ(1988年)
・武器開発重視(1990年)
  ・中立国監督委員会による検証(1987年)
・南北相互現地視察(1990年)
核開発以降 ・在韓米軍撤収を宣言(2016年)   ・朝鮮半島非核化のための包括的な会談(2005年)
・韓国内米国の核兵器公開(2016年)
・韓国内米国核兵器及び基地撤廃(2016年)
・朝鮮半島の戦略資産展開の中断を保障(2016年)
・米国の対北核不使用公約(2016年)
・韓国内米国の核兵器及び基地撤廃の事実を「世界の前で検証」(2016年)
(出所)筆者作成。
 
トランプ新政権で予想される北朝鮮の行動(126ページ)
区 分 急進的アプローチ 段階的・実質的アプローチ
推進条件 北朝鮮の同盟関係強化 韓米同盟の弱体化
意 図 政権固め及び経済問題の解消のための同盟国の経済的・外交的支援を確保
*追加として、米国の政策変化の可能性も打診
韓国の外交的、軍事的優位を相殺(韓米同盟の弱体化、南北在来式軍事力の不均衡の緩和)
兵力削減(在韓米軍)
在韓米軍の撤収を宣言 在韓米軍の段階的削減
武器削減   韓国の先端的軍事力の開発を制限、韓国の核開発可能性を阻止
*北朝鮮はこのために「二重基準の撤廃」という論理を強調するものと予想
核脅威削減 韓国内米国の核兵器を公開、同核兵器・基地の撤廃、朝鮮半島への戦略資産の展開中断を保障、米国の対北核不使用公約 朝鮮半島での米軍による大規模訓練の中断、戦略資産展開の中断、核協議グループ(NCG)解体、核運用ガイドラインの中断など
検 証 国際査察 米朝相互現地視察
交渉方式 米国が提案を受け入れる場合に交渉自体を考慮
*実質的交渉可能性は低い
米朝直接交渉、もしくは米朝交渉のための多国間会談
*必要であればロシアや日本などを交渉促進者と活用した米韓ロ朝、または韓米日朝会談も可能(韓国を排除するための米中ロ朝会談の可能性も排除しない)
(出所)筆者作成。


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