NEWS HEADLINES

【トランプ新政権】トランプ・金正恩の関係は交渉再開へと続くか

ニュースリリース|トピックス| 2024年11月10日(日)

Facebook

 「トランプのホワイトハウスへの帰還」が全世界に伝わったが、北朝鮮は沈黙を続けている。

 アメリカ大統領選挙が2日過ぎた11月8日になっても、北朝鮮のメディアは大統領選挙のニュース自体を一切掲載していない。過去、北朝鮮のメディアが関連ニュースを数日後に公開したことを考慮すれば大したことではないが、金正恩総書記が北朝鮮の指導者として初めてアメリカの大統領と3回も会談し、親交を深めた事実を考慮すれば、「当選祝辞でも出さないのか」という世間の関心ももっともだ。

 金総書記とトランプ氏が「旧友」であることは事実だ。ただ、その縁が依然として「兄弟愛」が残っているのか、あるいは「トラウマ」として残っているのか、外部からはまだわからない。北朝鮮がすぐに重要な含意のある反応を見せたり、路線変更をするよりは話し合いに向けて模索するだろうという観測も出ている。

2025年末まで、変えにくい「国防強化路線」
 
 まず、北朝鮮内部的には2025年末までの国防力強化計画が立っている状態だ。2019年2月の「ハノイノーディール」、2020年11月のトランプ氏の再選に失敗した後、北朝鮮は2021年1月の第8回党大会で今後5年間の路線を明らかにした。従来の「経済集中路線」から「国防力強化路線」に転換したのだ。

 この時、「国防工業発展及び武器体系開発5カ年計画」を宣言し、「核・ミサイル高度化」の道に入った。初の核廃棄交渉の決裂を経験した金総書記が、核武力を完全に後戻りできないものにすることに転向したと受け取られた。

 2021年3月には北朝鮮外務省が談話を発表し、バイデン新政権の非公開対話接触を拒否する立場も明らかにした。その後、核・ミサイルの高度化は急速に進んだ。北朝鮮が掲げた5大防衛課題(①極超音速武器の開発、②超大型核弾頭の生産、③1万5000キロメートル程圏内の命中率向上、④水中および地上固体エンジンICBM、⑤核潜水艦と水中発射核戦略兵器の保有)が完成していく速度は、韓国の専門家も「予想より速い」と漏らすほどだ。

 この路線は、朝鮮労働党が2025年12月に党中央委員会全員会議を開き、成果をまとめるまで変化する可能性は低い。バイデン新政権発足と似た時期に決まったこの路線は、外交的には徹底的かつ積極的な「反米連帯」の構築だった。

 北朝鮮が置かれている対外環境も、2018年に対話を始める直前の状況と今は大きな違いがある。

 2018年に対話に出る前、北朝鮮は中国、ロシアまで協力する国際社会からの圧力を受けており、孤立無援だった。しかし今の北朝鮮は、新型コロナウイルスによる3年間の「セルフ封鎖」まで耐えた自信、ロシアとの同盟を越えて血盟に進化し、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁がロシア主導で崩壊する過程にある。急いで対米交渉に出る理由はない。

 ただ、10月31日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星19型を発射した際、北朝鮮が「最終完成版」と言った点は意味深長だ。「完成」されたということは、追加試験発射が必要ないという意味でも解釈できるからだ。

 5大防衛課題が急速に推進されており、政治的判断によって「早期達成」を宣言できない体制ではないという点も思い浮かべることができる。2025年末まで既存の路線をそのまま堅持するとは限らないということだ。

親書外交は再開されるのか?

 大きな変数として注目されるのは、やはりトランプ氏との個人的な親交だ。最近、政府当局者や専門家らは「トランプ・金正恩が交わした手紙をもう一度見るべきだ」と2018年から2019年の親書外交を振り返る。

 トランプ政権1期時、両首脳は数十通の親書を交わした。このうちアメリカのジャーナリストであるボブ・ウッドワードが入手して公開した2018年4月1日から2019年8月5日まで交わされた親書27通の全文を見ると、「ハノイノーディール」という衝撃的な結末以降も、両者はお互いを刺激しないように努力した形跡がうかがえる。

 金総書記は依然としてトランプ大統領を「傑出した指導者」「閣下との特別な関係は光栄」などと表現し、トランプ氏も「素晴らしい思い出」「ユニークな友情」などの修辞を駆使して礼を述べた。

 親書外交は両首脳の象徴的な手段だった。首脳間、国家間の祝辞や慰問文を交わすことは、極めて儀礼的な外交行為とも言えるが、「トップダウン方式」「首脳間の談判」で30年来の北朝鮮の核問題という難題の解決を見ようとした両者にとっては正反対の意味だった。

 対外的に出した強硬なメッセージとは異なり、本音を伝える手段であり、交渉の膠着状態からの「突破口」として注目された。「解決者」「ディールメーカー」を志向するトランプ大統領は、親書が来るたびに「美しい手紙」などと表現した。

 特使の身分で平壌を訪問したポンペイオ国務長官の手に親書を入れたハードカバーが見えたり、トランプ氏が親書を直接ツイッター(現'X)で公開し、朝鮮中央通信に掲載されるなどの方法で親書の交換が明らかにされた。

 儀礼ではなく、2人だけの秘密話をする窓口のように見えた。「ハノイノーディール」後の2019年8月の親書では、金氏の胸の内が生々しく表出されている。

 彼はトランプ氏に「私は閣下を失望させるようなことはしたくない」としながらも、「軍事訓練は中断されたのか、どのような措置が緩和されたのか、私は人民に何を説明しなければならないのか」と愚痴った。北朝鮮は核実験場の扉も壊し、アメリカ人拘束者も解放し、アメリカ軍兵士の遺体も送ったが、2018年6月12日のシンガポール合意での段階的・同時的措置の約束が履行されていないという不満だった。

 金総書記は「閣下が私たちの関係をあなただけに利益をもたらす足がかりと考えるのでなければ、私は与えるだけで、何の対価ももらえない愚か者のように見せたいということではないでしょう」と記している。

 「ラブレターの思い出」は、アメリカ大統領選挙の真っ最中だった2024年7月、5年ぶりに呼び起こされた。トランプ氏が演説で「私は金正恩とうまくやっていた」と米朝対話と核による脅威の解決に自信を持つニュースが全世界に伝わると、北朝鮮から反応が出た。

 北朝鮮は朝鮮中央通信の論評形式で「首脳間の良好な個人的な親交関係を掲げながら、国家間の関係に反映しようとしたのは事実だが、実質的な肯定的な変化はもたらさなかった」とし、「ボールはボールで、国の対外政策と個人的な感情は厳格に分けて考えなければならない」と述べた。

 米朝対話の歴史を振り返ってみると、アメリカの政権が変わればアメリカの約束も無に帰したと非難し、対話をいぶかしげに考えていることを打ち明けた。これについて解釈は分かれるが、「線引き」をしながらも個人的な親交自体は認め、対話再開への余地を残したメッセージという評価が出た。

 一方、2018~2019年の米朝対話過程に詳しい関係者は、金総書記が再び対話を試みることはないだろうと話した。

核交渉シーズン2、核廃棄VS核軍縮?

 韓国とアメリカの外交関係者の間では、北朝鮮がアメリカとの対話に復帰する場合、トランプ第1期時の核廃棄交渉ではなく、核軍縮交渉になるだろうという見通しが増えている。核軍縮交渉は、核廃絶という目標の放棄であり、北朝鮮の核保有を事実上黙認するものであるとして、早くも物議を醸している。

 トランプ大統領を「危険人物」として描写しようとする政治的目的があるのかもしれないが、金総書記が第1期時の「トラウマ」のせいで核廃棄を議題に上げるのではないか、あるいは北朝鮮がすでに「不可逆的な核武力」を宣言し、核武力の高度化まで進んだ状態で、現実的に「非核化」が達成しにくい目標になっているという悲観論が広がったという背景もある。

 専門家らは非核化という原則が揺るがないようにすべきだという指摘が多い。キム・ジャンシク統一研究院長は「北朝鮮の核保有黙認や承認はNPT体制を破ることになるが、トランプ氏はともかくアメリカという国がこれを容認できるだろうか。全世界が混乱するため、そのような交渉はうまく進まないだろう」という。

 彼は「北朝鮮の過去の交渉スタイル上、国防力強化5カ年計画を完成させてから交渉に臨むことが予想できるが、政治的立場によって、それもどうなるかはわからない。対話に出る直前の2017年11月に『核武力完成宣言』をしたように、今回は核武力高度化完成宣言をするかどうかを見守らなければならないだろう」と話した。

 北韓大学院大学の梁茂進教授も「アメリカが核保有を認める可能性がないため、軍縮交渉の可能性は小さい。『将来の核廃棄』を目指すアメリカと核保有を認めることを望む北朝鮮が、核凍結、閉鎖、廃棄という長期に渡る段階を設定し、まずは接点を探す交渉を行うだろう」と予測する。

 統一研究院の趙漢凡・座長研究委員は「北朝鮮の核凍結及び軍縮という現実論に同調する世論が高まっているため、北朝鮮は交渉の扉を開いているだろう。大統領選挙後、一定期間はアメリカとの交渉タイミングを待つだろう」と述べた。さらに、「核実験やICBMの正常角度の発射は、北朝鮮の期待が満たされなかったり、交渉が失敗した場合に使うカードとして残しておくだろう」とみている。
(2024年11月9日、世界日報)



ニュースヘッドライン