ニュースリリース| 2024年11月08日(金)
2024年のアメリカ大統領選挙は、ドナルド・トランプの勝利に終わった。トランプ次期大統領の「アメリカを再び偉大にする」(MAGA)哲学は1期に続き、2期でも対外政策で明快さを見せるだろう。
保護貿易主義と2つの戦争の早期終結を強調したきたので、トランプ政権2期はMAGA2.0として価値、規範、倫理よりも、アメリカの利益を最大化することにもっと集中するだろう。
トランプ政権1期の時は、同盟を価値より分担金増加の手段として、協力より対立として扱い、イメージ政治の最大化を図った。 そのような前例があるため、トランプ2期の対北朝鮮政策は、北朝鮮には機会を、われわれには負担を与えるという懸念が大きい。
とくに、トランプ次期大統領は共和党全国大会候補受諾演説で金正恩との個人的な親交を誇示し、「多くの核兵器を持っている誰かと仲良くするのはよいことだ」と述べた。北朝鮮が挑発を続けているが、「われわれが戻ったら、私は彼らとうまくやっていくだろう。彼はおそらく私に会いたがっていて、寂しがるだろうと思う」と述べた。トランプ次期大統領のこのような立場は選挙期間にも繰り返された。
その結果、トランプ政権2期の対北朝鮮政策と関連し、少なくとも3つの錯視現象が形成された。
まず、トランプ・金正恩の親交は、北朝鮮政策の戦略的忍耐とは異なり、北朝鮮政策の突破口を生み出すという錯視だ。しかし、トランプ政権1期の「一括妥結」対北朝鮮政策もハノイでの首脳会談の失敗で何の結果ももたらさなかった。
北朝鮮はモラトリアム宣言にもかかわらず弾道ミサイル発射を続け、核能力と核物質も着実に増大させた。したがって、トランプ政権2期で「一括打開」2.0を推進したとしても、核武力強化路線は交渉の対象にはならないと主張する北朝鮮と突破口を作ることは決して容易ではない。
第2の錯視は、トランプ政権2期では、対北朝鮮制裁の強化ではなく、むしろ緩和を採用する可能性があるという点だ。
ハノイ会談の決裂で非核化の現実を悟った北朝鮮がその後、アメリカに「新しい計算法」で対北朝鮮制裁解除を要求しただけに、トランプ新政権は対北朝鮮制裁解除カードを北朝鮮を動かせる支柱として活用することもできるという錯覚を持つことになる。
しかしトランプ政権2期が迎える北朝鮮は、ロシアと北朝鮮間の包括的戦略的パートナー関係条約ですでに対北朝鮮制裁解除の効果を享受している。だからといって、第1期の時のように韓米合同訓練の中断、在韓アメリカ軍撤退などのテコ入れはアメリカにとってより大きな負担と不利益になる。
アメリカはもはや圧倒的な超大国でもなく、中国との戦略的競争を強化するためには、対中戦略がより重要であるため、同盟とパートナー諸国との連合訓練と米軍駐留がむしろ米国にとってより重要になっているからだ。
第3の錯視は、北朝鮮の完全な非核化より核軍備統制を選択することだ。アメリカの核近代化の推進が計画されたスケジュールより遅れ、北朝鮮の核能力の高度化及び中国・ロシアの核近代化の速度が速くなるにつれて、核軍備統制交渉が現実的な政策に見えるかもしれない。
しかし、第1次北朝鮮核危機後のジュネーブ合意、第2次核危機後の6カ国協議を通じて北核凍結、不能化措置まで行った。しかし北朝鮮は非核化交渉時期にも、非核化合意後も核開発を中断したことがなく、能力を高度化してきた。
さらに、北朝鮮は火星19型ICBMを発射直後、核武力強化路線をいかなる場合にも変えないと主張している。そのため、仮に北朝鮮が対話の場に出たとしても、交渉は核軍備管理交渉ではなく、対米敵対政策の撤回で韓米連合訓練、韓米日安保協力、在韓アメリカ軍撤退などの要求につながる可能性が大きい。
トランプ政権1期の対北朝鮮政策に基づいて、2期の対北朝鮮政策を安易に予断してはならない。北朝鮮の非核化をはじめ、ロシア派兵など北朝鮮諸問題の総合的な解決策がトランプ政権2期の対北朝鮮政策に含まれるように努力すべき時だ。
(2024年11月8日、ソウル新聞、イ・ホリョン 韓国国防研究院安全保障戦略センター長)