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【トランプ新政権】北朝鮮の非核化とアメリカ・ファーストは両立しない

ニュースリリース|トピックス| 2024年11月08日(金)

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北朝鮮のロシア派兵とアメリカのドナルド・トランプ前大統領の当選により、世界の安全保障地形の変化が不可避となった。この二つの事案は、全世界が注目しているウクライナ戦争の流れを変える重要な変数だ。

北朝鮮軍の派兵は、兵力不足を抱えるロシアの戦争継続能力を拡大し、トランプ氏の当選で戦争の早期終結の可能性が大きくなったからだ。北朝鮮の派兵は、欧州戦争にアジア諸国が参戦するという側面から「欧州版キューバミサイル危機」という言葉も出ている。
 
2024年6月、平壌で開かれた朝ロ首脳会談は、北朝鮮軍のウクライナ戦争派遣の前兆だった。金正恩総書記とウラジーミル・プーチン大統領は、「包括的な戦略的パートナーシップに関する条約」を結んだ。

双方のいずれか一方が武力侵攻を受けて戦争状態に陥った場合、「遅滞なく、自己が保有するすべての手段で軍事的及びその他の援助を提供する」という内容が核心だ。平壌首脳会談を契機に、朝ロは「一つの戦線(一つの塹壕)」で「多極化された世界秩序の樹立」を目指して努力し、アメリカ中心の「二重基準」「規定に基づく秩序の強要」に対抗する共同戦線を構築し、同盟関係を復元した。

ウクライナ戦争に対するトランプという変数

11月5日に行われたアメリカ大統領選挙で当選したトランプ共和党候補は、選挙期間中「当選すれば24時間以内にロシアと妥協して戦争を終わらせることができる」と断言した。この言及が現実化すれば、ウクライナ戦争は早期に終わる可能性がある。

北朝鮮がトランプの当選を予想し、そして戦争の早期終結を念頭に置いて派兵を決定したのかどうかは確認できない。ただ、トランプ氏の言及通りに戦争が早急に終われば、第2次世界大戦末期に対日宣戦布告をして朝鮮半島の38度線以北の管轄権を確保したソ連のように、北朝鮮は短期間の参戦でかなりの戦利品を手に入れることができる。

もしかしたら、北朝鮮はウクライナ戦争に参戦してすでに外貨、食糧、エネルギー、先端兵器技術など多くのものを手に入れたかもしれない。ドローンや衛星などの先端装備を動員した現代戦の経験も積むことができる。

北朝鮮軍の派兵は明らかに韓国の安全保障に影響を与え、最悪の場合、ウクライナ戦争で南北朝鮮が衝突する状況が発生する可能性があるという懸念も出てくる。

とくに、場合によっては第3次世界世界大戦の可能性さえ提起される状況だ。開戦初期から拡大戦争の可能性を言及していたウクライナのゼレンスキー大統領は5日、北朝鮮軍が戦場に投入されたことを伝え、「世界の不安定性の新章を開いた」と述べた。

プーチン氏の側近とされるドミトリー・メドベージェージェフ・ロシア国家安全保障会議副議長も最近、「(西側が)油を注ぐと、第3次世界大戦を経験することになる」と脅した。ウクライナ戦争は拡大か中断かの分岐点に立っている。北朝鮮軍の参戦で悪化の一途をたどっているウクライナ戦争が、トランプ氏の当選で転機を迎えたことは明らかだ。

トランプ氏がいつ、どのような方法でウクライナ戦争の停戦に介入するかによって、北朝鮮軍の被害規模も変わる可能性がある。トランプ氏は2025年1月20日に就任する。 彼が就任する前に停戦交渉が進展する可能性もあるが、今すぐ停戦になる可能性は高くない。

その場合、少なくとも3ヶ月前後の期間が続く可能性があり、停戦の話が始まれば、有利な高地を確保するため、より激しい戦闘が繰り広げられる可能性がある。今後、戦闘に投入されるとの観測が多い北朝鮮軍の大規模な犠牲と莫大な損失は避けられない。

勢力衝突の激戦地となったウクライナ

ウクライナ戦争は事実上の第3次世界大戦と言えるほど多くの国が関与している。アメリカとEU、北大西洋条約機構(NATO)など西側がウクライナを支援し、北朝鮮など反西側諸国はロシア側に立っている。このように多くの国が介入しているのは、ウクライナ戦争がもたらす世界秩序の変化を意識しているからだ。

ウクライナはソビエト連邦の15の共和国の一つだった。ソ連解体後は独立国家共同体(CIS)の一員だったが、経済支援と安全保障と引き換えに核兵器を廃棄し、親西側諸国となった。

ウクライナは経済的繁栄と安全保障を確保するために、アメリカ中心の西側への編入を希望した。一方、ロシアはアメリカと欧州の東進を阻止しようとするため、2014年のクリミア半島武力編入に続き、戦争を起こした。ウクライナが西側とロシア間の勢力拡大のための秩序衝突の激戦区になったのだ。

ロシアと蜜月になって派兵を強行した北朝鮮を見る中国は、「彼らが勝手にやること」という立場だ。しかし、核・ミサイルの高度化に続き、ロシアに接近した北朝鮮に対する中国の不快感はさまざまなところで感じられる。米中戦略競争を苦手とする中国が北・露同盟に足を引いたのが代表的だ。中国と北朝鮮は1961年に結んだ「朝中友好、協力及び相互援助条約」を現在まで維持している。2018年6月の米朝首脳会談を推進しながら、金委員長は中国を訪問し、「一つの家族」、「一つの塹壕」という表現で中国との絆を強調した。しかし、最近、北朝鮮はロシアに「一つの戦友」、「血縁の絆」を強調し、日増しに接近している。

そのためか、北朝鮮と中国は国交樹立75周年を迎えた2024年を「朝中友好の年」に設定したが、首脳会談はおろか、これといった高官級交流さえも行われていない。双方は2015年に完成した新鴨緑江大橋さえ開通できないほど不都合な関係を維持している。

中国も2024年6月、平壌で朝ロ首脳会談が開かれた時期にソウルで韓中次官級外交安全保障対話を行い、北朝鮮の派遣が行われている11月初め、韓国に短期ビザ免除政策を発表した。現在の北中関係を測ることができる部分だ。北朝鮮がかつて「社会主義の裏切り者」と烙印を押した権威主義ロシアとは同盟関係を回復したが、社会主義の同盟国である中国との関係はむしろぎこちなくなった結果だ。

G2国家として資本主義世界経済で重要な一翼を担っている中国が、韓・米・日対北・中・ロが対立する新冷戦構図に巻き込まれる理由はない。むしろ、中国は西側世界との経済的相互依存性を重視する立場だ。アメリカ中心の「ルール基盤秩序」構築の動きに対抗し、BRICS諸国との協力を強化し、同時に南半球の発展途上国であるグローバル・サウスに対する影響力を高めている。

北朝鮮のロシア接近、外交通商になる可能性あり

北朝鮮軍の派兵前、ウクライナ戦争の最大の勝者は北朝鮮だと言われるほど、窮地に追い込まれた北朝鮮を救ったのはロシアだ。派兵後も北朝鮮が勝者になるかはまだわからない。数万人が犠牲になっても目くじらを立てないのが金正恩だという話もある。最高指導者の決定に憤慨しないように教育された北朝鮮住民だと言われる。

しかし、「人民大衆第一主義政治」を標榜した金正恩政権が人民を他国の戦場に送り込み、大規模な死傷者が発生した場合、国内の政治的負担を抱えることになるだろう。核保有国の自信を反映して大規模な兵力をロシアに派兵して経済的困難を解消し、先端軍事技術を獲得しようとするが、多数の死傷者が発生した場合、派兵の正当性を見つけることができない。北朝鮮が権威主義の味方で得られる利益は限定的なものになるしかない。
(2024年11月8日、中央日報 https://www.joongang.co.kr/article/25290479、コ・ユファン東国大学名誉教授)
 


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