ニュースリリース|トピックス| 2024年11月04日(月)
北朝鮮の対ロシア派遣は、軍事技術を得るための手段、北朝鮮の国際的な地位を高めるための手段、そしてロシアとの持続可能な同盟のための手段という分析が一般的だ。北朝鮮の指導者たちの立場では、派兵はある程度、一獲千金だ。北朝鮮は数十年前から、これほど多くのお金を短期間で受け取ったことはない。
もちろん、補償に関する具体的な資料は今後数十年間、秘密にされるだろう。それでもおおよその推定は可能だ。問題は、今日の北朝鮮は、このように突然増えたお金を適切に使う能力がないように見えるという点だ。
現在、ロシア兵士の給料は最低2200ドル、つまり韓国で300万ウォンだ。北朝鮮側はこれだけの補償を受ける可能性がある。ロシア人の場合、兵士のほとんどはこのような基本的な給料よりもお金をよく稼ぎ、とくに入隊時にボーナスを多く受け取る。 したがって、ロシアの立場からすると、毎月300万ウォンを支払って人民軍1人を借りることができればよい取引だ。
北朝鮮がこの段階でロシアに1万2000人を送ったという国家情報院の説明通りなら、北朝鮮は毎年1億ドル程度を稼ぐだろう。遠くない将来、派遣規模が3万~4万人まで拡大される可能性もあることを考えると、北朝鮮は兵力を輸出することで数億ドルを稼ぐことになるだろう。これは北朝鮮にとって非常に大きなお金だ。
しかし、北朝鮮の若者の血で得たお金は無駄になる可能性が高い。北朝鮮の経済構造と北朝鮮エリート層の世界観のためだ。
もちろん、空から落ちたお金の一部は軍需産業、とくに核能力の向上に使われるだろう。これは北朝鮮が非常に重要視していることだからだ。しかし、残りの資金はどのように使われるのだろうか。残念なことに、北朝鮮はお金ができるとプロパガンダ(あるイデオロギー・考え方などを広報・説得する)建物を建設し始める傾向がある。
良い前例は、1970年代に借りた借款で建設した凱旋門や主思想塔、そして巨大な醜態として残っている105階建ての柳京ホテルだ。
2010年代、北朝鮮の経済が少し良くなると、北朝鮮の指導部は平壌で数十階建ての建物を熱心に建設し始めた。不動産価格の問題もなく、平地不足の問題もそれほどひどくない平壌で高層ビルを一生懸命に建てる理由はない。このような建物を懸命に建てたのは、北朝鮮内と国外で平壌を東京やソウルを上回る現代都市として見せるためだ。
今回のロシア派遣を通じて出てくるお金は、平壌の新都市である未来科学者通りや他の地域にできる50~70階建ての建物の建築費に使われるかもしれない。おそらくこの高層ビルで25階以上は、上下水道もエレベーターも正常に作動しないだろう。
入居者もいない高層ビルの建設は、自分のベンツの窓から新しい建物を見る金正恩を幸せにすることができるが、北朝鮮の経済発展も住民の生活水準の向上ももたらさない。
今、北朝鮮は市場と個人経済を再び抑制し、金日成時代の中央計画経済を復活させようとしている。今回のロシアからの資金の一部は中央計画経済の復活のために使われるだろうが、無駄に終わってしまうだろう。多数の第2、第3の柳京ホテルが建設される可能性がある。外見はホテルだが、内部には何もない空間である。
結局、ロシアからのお金は煙のように消えてしまうだろう。
(2024年11月4日、ソウル経済、アンドレイ・ランコフ国民大学教授)