ニュースリリース|トピックス| 2024年11月03日(日)
北朝鮮軍のウクライナ投入をめぐって「派兵」「参戦」という表現は適切ではない。自分の軍服を着て、独自の指揮命令体系に従って戦うのが派兵だ。北朝鮮軍はロシアの軍服に着替えて身分を偽装して配置されている。北朝鮮当局が派兵の事実を認めたこともない。汚い戦争に巻き込まれる名分がないことを本人たちも知っているからだ。結局、お金をもらって戦う傭兵に過ぎない。金正恩は軍隊ではなく、外貨稼ぎのための「戦争労働者」を派遣したのだ。
金正恩が「韓国のベトナム派兵を模倣した」(ニューヨーク・タイムズ)という分析がある。1960年代のベトナム参戦と同じ軍事・経済効果を狙った「北朝鮮版ベトナム派兵」というのだ。とんでもない話だ。ベトナムに行った韓国兵士は傭兵ではなかった。国会の議決を経た公式参戦だった。アメリカ軍と差別化された戦術で猛威を振るった猛虎・白馬・青龍部隊は、部隊マークも鮮やかな韓国軍服を着て57万回以上の作戦を独自に遂行した。共産主義と戦うという大義名分もあった。北朝鮮とロシアが隠蔽に躍起になっているウクライナの傭兵とは性格そのものが違う。
60年前のベトナム派兵は、アメリカ軍を朝鮮半島にとどめておきたいという朴正煕大統領の決断だった。当時、アメリカは在韓米軍2師団を引き抜いてベトナム戦争に投入しようとした。アメリカ軍が一度出たら戻らない可能性が大きかった。軍事・経済力で北朝鮮に負けていた韓国にとっては、深刻な安全保障の脅威だった。朴正煕はアメリカ軍の代わりに韓国軍を送るという提案でアメリカ軍撤退を阻止した。
国内世論も友好的だった。朝鮮戦争の時、友好国の助けを受けた私たちが今度は他国を助けるという名分は国民の支持を得た。派兵案は与野党満場一致で国会を通過した。
最初の派兵から2年後の1966年、朴正煕は兵士を激励するためにベトナムを訪れた。空港から猛虎部隊の駐屯地までヘリコプターで移動することになったが、突然大雨が降り出した。悪天候による事故の危険に加え、敵の対空砲撃を心配したベトナム司令官チェ・ミョンシンは、朴槿恵を説得した。朴正煕は「ここまで来たのに...」と一歩もためらうことなくヘリコプターに乗り込んだ。 そして最前線で敵と対峙している兵士たちに会い、肩を叩いた。
金正恩はウクライナ戦線に行って兵士たちを激励するようなことは絶対にできない。自分の命の心配もあるだろうが、弾丸を浴びる兵士への愛情など微塵もないからだ。
後に知られるように、ベトナム戦争の本質は複雑であった。しかし、情報が限られていた当時の韓国としては、自由民主主義のための戦いであることを疑う余地はなかった。安保的配慮から出発した朴正煕の派兵決定は、大韓民国の発展に「神の一手」となった。韓米同盟はともに血を流した血盟に格上げされ、韓国軍の戦力は飛躍的に近代化された。旧式のM1小銃がM16に交換されたのもこの時からだ。
アメリカから装備の製造権を得た朴正煕政府は国防科学研究所などを設立し、軍需産業の育成に乗り出した。現在、世界市場で花開いたK防産の出発点だった。
ベトナム派遣がなければ、「漢江の奇跡」と呼ばれる圧縮成長も不可能だった。兵士たちが懸命に集めて送金したドル手当、企業が稼いだ工事代金が流入し、荒廃した韓国経済に復活の種を蒔いた。この貴重な外貨が初期資本として蓄積され、京釜高速道路を建設し、インフラを構築するための種銭として使われた。5000人余りが戦死し、戦争の傷跡も大きかったが、彼らの高貴な犠牲のおかげで高度成長の礎を築くことができた。
金正恩もこのような効果を享受したいだろう。ロシアが1人当たり月2000ドルを支給するというから、1万人派遣なら年間2億ドルを超える。しかし、いくらお金が入っても、北朝鮮は「ベトナム特需」のような経済効果を得ることができない。体制の欠陥のためだ。
これまで北朝鮮の海外労働者がそうであったように、兵士たちが命の代償として受け取ったお金もほとんど金正恩の金庫に入り、統治資金や核・ミサイル開発に使われるだろう。個人を抑圧し、成果を収奪する搾取的な制度では、いかなる機会も経済的繁栄につながることはできない。ノーベル経済学賞受賞者のダロン・アセモグルらが説いた通りだ。
金正恩はロシアから軍事技術を譲り受けるつもりだ。原子力潜水艦、弾道ミサイルを完成させ、体制維持に使うつもりだろう。しかし、むしろウクライナに行った兵士たちが、体制の矛盾を北朝鮮内部に伝播する窓口の役割を果たす可能性がある。国そのものが刑務所である場所に閉じ込められて生きてきた若い兵士たちが、外の世界を目の当たりにしたとき、どんな衝撃を受けるかは想像に難くない。ウクライナ戦線が北朝鮮兵士の集団脱北ルートになるかもしれない。
60年前、韓国は自由陣営の側に立って繁栄の高速道路に乗った。金正恩はロシアの汚い侵略戦争に巻き込まれ、負ける方に賭けようとしている。歴史の進歩の方向を逆さまにした金正恩の無謀な賭けは決して成功しない。
(2024年11月2日、朝鮮日報、パク・ジョンフンコラム)