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ウクライナの南北代理戦争?

ニュースリリース|トピックス| 2024年10月29日(火)

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 北朝鮮軍がロシアの傭兵としてウクライナ戦争に参戦したことで、ウクライナ戦争は私たちにとって別の様相を呈している。60年前、韓国がアメリカの要請でベトナム戦争に参戦したことと比較され、今度は北の「コリアン」がまたもや他人の戦争に付き添う状況になった。

 北朝鮮の参戦を否定するつもりはない。ただ、韓国の対応が問題だ。尹錫悦大統領は先週、訪韓中のポーランド大統領と会談した席で、北朝鮮軍の活動次第で韓国の「殺傷兵器」を支援する可能性があるという趣旨の発言をしたと報道された。これまで人道的または非戦闘用の物資支援に留まっていたことから大きく変化したものだ。もし殺傷兵器を支援すれば、南北のコリアンが遠く離れたヨーロッパの地で軍事的に対峙する形になるだろう。

 結論として、殺傷兵器の提供は望ましくない。私たちが大韓民国の軍事力を高め、各種武器を開発するのは、国民の生命と国土を守り、保全するためである。私たちが他の国のために、または他国を攻撃するために私たちの武器を貸すことも、最終的にはそのような国家保全の延長線上で正当化されるだけだ。しかし、私たちがウクライナに殺傷または戦闘用武器を提供することは、その範疇から外れることだ。

 それは、欧州の地でコリアン同士が代理戦争をするように見えたり、本質を逸脱して南北間の敵対的な対立意識を発散する噴出のデモ場に変貌する可能性さえある。欧米のメディア、とくに親ウクライナメディアが北朝鮮軍の参戦を大きく、または詳細に報道することで、われわれはまるで韓国の何らかの対応を期待しているような、または煽るような印象を受ける。とくにウクライナの指導層からそのような印象を受ける。

 われわれがこれまでウクライナを非戦闘的な次元で支援し、ウクライナの味方をしたのは、西側民主主義社会、とくにアメリカとのつながりを考慮した一種の「友情出演」だった。しかし、殺傷兵器の提供は別問題だ。無力的な敵対行為、つまり戦争とみなされる可能性があるからだ。

 さらに、南北がともに「NATO対ロシア」の「操り人形」に映る可能性もある。

 しかし、何よりも重要で深刻なのは、われわれの殺傷兵器が必然的にロシア軍を「殺傷」する可能性があるという問題だ。戦場では、殺傷兵器は北朝鮮軍であろうとロシア軍であろうと識別できない。このような事態は、急きょ、ロシアまたはロシア国民と敵対関係に入ることを意味する。

 ロシアは前回、北朝鮮と同盟関係を結んだが、プーチンはこれが韓国を排斥するわけではないという意思を示したことがある。彼は、朝ロ同盟は北朝鮮が侵略されたときの問題であり、韓国が北朝鮮を侵略することはないだろうと反面教師のように言った。

 軍事力の備えは重要だ。しかし、軍事行為に先行するのは安全保障外交であり、今、ロシアと軍事的に衝突したり、ふりをすることは決して望ましい安全保障ではない。

 アメリカとの問題も重要な変数だ。今は選挙戦が激しさを増しているが、専門家たちはトランプの当選可能性を占っている。彼が大統領になれば、米国の外交政策は大きく揺れ動くだろう。その一つがウクライナ戦争だ。

 彼はすでに何度も自分とプーチンとの友好関係に言及し、自分が大統領だったらウクライナ戦争はまったくなかったと述べてきた。 つまり、トランプが復帰すれば、ウクライナ戦争の様相は一変するだろう。アメリカが支援を打ち切れば、ウクライナは現戦線でオールストップとなり、最終的にロシアの勝利に帰着する可能性が大きい。

 このような緊迫した敏感な時期に、われわれが安易に殺傷兵器支援を口にするのはタイミング的にも適切ではない。

 最近、私たちは私たちの防衛兵器能力に大いに勇気づけられている。本当に誇らしいことだ。長い歴史の中で他国の侵略を受けながら生きてきた私たちが、今、私たちの手で私たちを守る高度な武器を開発・生産する能力を身につけたことは、大いに誇りに思っていい。

 だが武器は本来、相手を無力化または破壊する道具である。自分を守る時と他人を傷つける時、武器の正当性は異なる。殺傷兵器だからなおさらだ。防衛外交と公開的な対外広報に没頭しすぎることは、「武器をよく作る国」のイメージを高める。

 国を運営する責任者たちはこの問題にもっと慎重にならなければならない。派兵された北朝鮮軍がウクライナ戦線を離脱して自由を求めるように誘導する心理戦が私たちがすべきことではないだろうか。
(2024年10月29日、朝鮮日報、金大中コラムニスト)
 


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