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朝鮮半島の非核化に方法はあるのか①

ニュースリリース|トピックス| 2024年10月12日(土)

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(朝鮮半島の非核化に対する)代案はあるのか。当面、その解が見つからないときには、まずはこれまでのことを振り返って見るべきだろう。あるいは遠くを見て、深く見て、広く見るべきだ。「振り返る」とは、なぜ朝鮮半島の非核化がまったく成功しなかったのかを冷徹に、かつしっかりと考えてみようということだ。「遠くを見る」ということは、短期間での核問題の解決が不可能となった現在、そのぶん長い呼吸と視野を持って解決方法を探ろうということだ。「深く見る」とは、朝鮮半島の核問題の起源をきちんと見るということであり、北朝鮮の核問題「だけ」を見ては物事がまったく進まないという状況に陥ってしまう。最後に、「広く見る」とは、なぜ世界の半分は核兵器のない地帯となっているのかをよく考え、朝鮮半島の核問題の解決方法を得るための教訓を抽出してみようということだ。

 これら四つの視線を貫通しているアプローチは、まさに非核兵器地帯(非核地帯)だ。2020年に私が出版した『朝鮮半島の道、なぜ非核地帯なのか』で詳細な提案を行ったことがある。その要旨は、非核化を生かそうとすればそれを蜂起し、非核地帯を代案としてみてはどうかということだ。「朝鮮半島の非核化」から「朝鮮半島の非核地帯」と替えてみてもいいかもしれない。一種の「死即生」(死のうとするものは生きる)だ。

 読者は不思議に思うだろう。非核化と非核地帯の何が違うのか、と。驚くべきことに、朝鮮半島の非核化には合意された定義がない。30年間の非核化交渉が失敗した原因の一つが、まさに「非核化とは何なのか」に対する合意がなかったというものだ。まず、北朝鮮が言うところの「朝鮮半島の非核化」と、米国が要求する「朝鮮半島の非核化」が違っていた。北朝鮮派自分たちの核兵器の放棄だけでなく、米国による核が生み出す脅威の根本的な解決策まで要求した。米国は自分たちの核には手を着けずに、北朝鮮の核のみを廃棄しようとする姿勢を見せた。韓国は、政権によってその姿勢は違っていた。文在寅政権は「朝鮮半島の非核化」を公式的な用語として使用し、「核兵器と核の脅威がない状態」と定義した反面、尹錫悦政権は「北朝鮮の非核化」を公式に使用している。

 これに比べると、非核地帯の定義ははるかに明確だ。国連軍縮委員会は1999年、非核地帯の定義を含めたガイドラインを制定し、同年の国連総会で承認された。このガイドラインと1992年の朝鮮半島非核化共同宣言を総合してみると、朝鮮半島非核地帯は次のように定義できる。

 「南北は核兵器を開発、生産、保有、実験、接受をせず、1992年に発表された『朝鮮半島非核化共同宣言』に従ってウラン濃縮および再処理施設を保有しない。また核保有国は南北に核兵器の使用および使用する脅威を加えず、核兵器およびその投発手段を配置しないことを法的拘束力を備えた形で保障する」

 それでは、このような新しいアプローチを、変化した北朝鮮は受け入れるだろうか。短期的には不可能だろう。それゆえに、先に主張した通り、戦争防止と緊張緩和、そして相互の脅威減少装置などによってその予見を一つずつ作っていくことが重要だ。また北朝鮮の核問題を解決するためには、米国の核の脅威を解消するほかにも、対北制裁の解決、平和体制、米朝国交正常化、朝鮮半島での軍縮なども要求される。このような課題を視野に入れながら、長期的な思考で非核地帯方式を推進していけば、希望の根拠を探すことができる。併せて、非核地帯方式は北朝鮮の核問題の解決だけでなく、米国など核保有国による核の脅威を解決する方法も込められており、すでに非核地帯となった他の地域のケースも参考になりうる。
鄭旭湜『金正恩の「決断」を読み解く 変わる北朝鮮と東アジアへの衝撃』福田恵介訳、彩流社、2024年、164~166ページ)



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