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固定観念まみれの北朝鮮分析から脱却せよ

ニュースリリース|トピックス| 2024年09月23日(月)

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 北朝鮮が2024年9月13日、武器製造が可能なレベルの核物質である高濃縮ウラン(HEU)の製造施設を公開したことをめぐり、さまざまな分析が飛び交っている。国内外の大多数のメディアと専門家たちは、北朝鮮の意図がアメリカ大統領選挙の投票まで約2カ月となり、大統領選挙に影響を与え、次期政権の関心を引き、交渉で身代金を上げるために公開したのだといった分析だ。北朝鮮がその後も短距離発射体を相次いで発射したため、このような分析は続いている。

 しかし、このような分析は正確ではないし、問題解決にも役立たないというのが筆者の考えだ。繰り返しになるが、北朝鮮はアメリカに交渉期限として提示した2019年が過ぎたことで、30年近く最高の目標としていた対米関係の正常化という望みを断念した。

 これにより、核というカードの主要目的も「対米交渉用」から「核抑止力の確保」に変わった。したがって、北朝鮮の意図を対米交渉用だとする分析にはすることは、たんに固定観念にすがりついただけに過ぎない。

 アメリカ高官の180度変わった発言は、これをよく示している。2022年初め、北朝鮮は連日、各種ミサイルを試験発射した。すると、トニー・ブリンケン国務長官は「われわれから注目を集めるためにミサイルの試験発射を続ける。過去にもそうだったし、今後もそうするだろう」と述べた。

 ところが、それから1年後、正反対の分析が出た。オバマ政権とバイデン政権でアジア政策を総括したカート・キャンベルは2023年1月、国務副長官に指名された直後に開かれた上院外交委員会の聴聞会で異例の発言をした。

 彼は「北朝鮮のリスクを減らすための創造的な方策はないか」という質問を受け、「北朝鮮はアメリカとの外交にこれ以上関心がない」と答えたのだ。北朝鮮がアメリカの関心を引くためにミサイルを撃っているのだと考えていたアメリカも、いまやそうではなかったことを認めたことになる。

 では、大統領選挙はどうか。北朝鮮はこれまで、アメリカの大統領選挙にも韓国の大統領選挙にも興味を持ったと言っても過言ではない。相手の選挙に関心を持つ動機は「関係重視」に由来する。

 しかし、北朝鮮は南北関係も米朝関係も、もはや重視していない。まったく関心がないわけではないが、自分の戦略路線では後回しにしている。

 2020年11月のアメリカ大統領選挙では、北朝鮮政策が主要な争点として浮上したが、北朝鮮は徹底して沈黙に徹した。北朝鮮の近年の歴史で最も重要な決定、すなわち核武力を「国体」とする「新しい道」を公式化した朝鮮労働党第8回党大会も、アメリカ大統領選挙の2カ月後に行われた。

 2022年3月の韓国大統領選挙を前には、理解しがたい状況が発生した。大統領選挙が近づくにつれ、北朝鮮は相次いで各種ミサイルの試験発射を行った。

 すると、当時の文在寅大統領は「大統領選挙を控えた時期」であることを理由に「懸念」を表明し、共に民主党の大統領候補だった李在明氏は「南側の政治地形に影響を与えており、特定の陣営に利益をもたらすことが明らかであることを明確に指摘する」と糾弾の声を上げた。

 北朝鮮のミサイル発射で安保危機が高まれば、その恩恵を受けるのは現在の与党「国民の力」の尹錫悦候補だったといえる。では、北朝鮮は韓国の保守的で対北朝鮮強硬派の大統領候補を助けるためにミサイルを発射したのだろうか。このような解釈よりも、北朝鮮が韓国の大統領選に関心をなくし、韓米日の軍備増強に対抗して国防力強化に乗り出したと見るのが正確だろう。

 今回のアメリカ大統領選挙も同様だ。多くのメディアと専門家は、北朝鮮がドナルド・トランプ前大統領の当選を好むだろうし、7回目の核実験のような行動を取るだろうという見通しを出している。しかし、北朝鮮がどちらを好むかというよりは、双方のどちらかが当選しても対応する準備ができているとみるのが合理的だ。

 では、朝鮮が今回HEU製造施設を公開した意図は何だろうか。 それは核抑止力の基本である「3C」を思い浮かべればわかる。多量のHEU施設を通じた核兵器増強の「能力(capability)」を公開することで、自分の能力を外部に示そうとする「伝達(communication)」、戦争が起こればこれらの能力を使用するということが口先だけではないことを相手に信じさせようとする「信頼性(credibility)」を誇示しようとするものだ。

 これについて、現地指導に出た金正恩総書記の発言にも注目する必要がある。多くの人が分析するように、朝鮮の意図が対米圧力用であったなら、アメリカ本土を狙った「戦略核兵器」に言及するのが効果的だったはずだ。

 しかし彼は、主に韓国を狙った「戦術核兵器」の製造を強調した。これは2023年末に北朝鮮が、韓国を「第1の主敵」と規定したことの延長線上にある発言と解釈できる。

 このような一連の流れは、どう考えても北朝鮮の核暴走を止めることができないことを意味する。このような暴走を止めるには、北朝鮮の意図についてこれまでの先入観を持った解釈を止めることから始めるべきだ。例えば、北朝鮮の意図が対米交渉用であるとか、内部の不満を外部に向けるためのものといった分析は止めるべき時期なのだ。

 となれば、核武力をはじめとする北朝鮮の国防力を下げる以外に道はないと思う。2021年の第8回党大会以降、北朝鮮が最も重視するのは、「軍事力のバランス」と「戦略的バランス」だ。北朝鮮が敵対勢力とみなす韓米日との軍事力格差を、北朝鮮は核武力を増強することで最大限相殺しようとすることに焦点を当てているということだ。

 しかし、韓国の非核軍事力は世界5位に上り詰め、アメリカの軍備増強は毎年最高値を更新しており、日本も本格的な再整備に乗り出している状況だ。また、これら3カ国は事実上の同盟関係になりつつあり、合同訓練と国連司令部も拡大・強化されている。

 そうなればなるほど、北朝鮮の防衛需要は増え、朝鮮半島問題は悪循環の沼から抜け出せなくなる。

 このような指摘は、当然ながら北朝鮮の核暴走を肯定するものではない。むしろ、その逆である。北朝鮮の核能力強化が本当に懸念され、不安なことであるならば、韓米日が「力による平和」だけに固執するのではなく、「軍備統制による平和」も真剣に検討する時が来たということだ。
(2024年9月20日、プレシアン、鄭ウクシクコラム


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