ニュースリリース|トピックス| 2024年09月09日(月)
「超僅差」とされているアメリカの大統領選挙が近づく中、次期政権の対北朝鮮政策にも関心が集まっている。まず、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領と共和党候補のドナルド・トランプ前大統領の対北朝鮮認識には明らかな違いがある。ハリス氏は朝鮮の金正恩国務委員長を「独裁者」「暴君」と称し、「意地悪をしない」としたのに対し、トランプ氏は「核兵器を持つ国の指導者とうまくやっていくのはよいこと」と述べ、首脳会談を推進する意向を繰り返し表明している。世界最強国であり、朝鮮半島問題に大きな影響力を持っているアメリカの対北朝鮮政策について関心を持つのは自然なことだ。
しかし、外交は相手がいるゲームだ。その相手である朝鮮は、アメリカに対して交渉期限として提示した2019年が過ぎ、対米関係正常化の望みを捨てた状態だ。また「貧しく孤立した核開発国」から「貧しさと孤立から脱却する核保有国」になりつつあると言っても過言ではない。アメリカの対北朝鮮政策が圧倒的な影響力を持っていた過去とは、様相が大きく変わったということだ。われわれが次期アメリカ政権の対北朝鮮政策と同様に、朝鮮の選択にも関心を持たなければならない理由だ。
アメリカ大統領選挙と関連し、現在までに朝鮮から出てきた立場は2つある。1つは7月23日、朝鮮中央通信がトランプ大統領に向けて「公は公、私は私。アメリカは朝米対決史の得失について考えて正しい選択をした方がよいだろう」と論評したことだ。これは、金正恩が2018〜2019年に築いたトランプ氏との個人的な絆が米朝関係を新たに変えることができる「神秘的な力」と考えたことに対して誤った判断を繰り返すな、という意味だ。
もう一つは、8月4日の金正恩の発言だ。彼は平壌で行われた新型戦術弾道ミサイル発射台引継ぎ式での演説で、「対話も対決も私たちの選択になるが、私たちがより徹底的に準備しなければならないのは対決だ」と述べた。また、「対話をしようが対立をしようが、強力な軍事力の保有は、主権国家が一刻も見逃さず、また一歩も譲歩してはならない義務であり権利だ」と付け加えた。その理由として、「私たちが直面しているアメリカは、決して数年間政権を握って退陣する政権ではなく、私たちの子孫も代々対峙する敵対国である」という点を挙げた。金正恩が対話に言及したのは、2021年6月の労働党全員会議以来、4年2カ月ぶりだ。
では、平壌は次期アメリカ大統領として、誰を好むのだろうか。大多数の人はトランプ氏だと口をそろえる。しかし、それほど単純ではない。朝鮮が戦略的目標の方角をどこに置くのかという点を、先に確認する必要がある。朝鮮が核武力を中心とした「強力な軍事力保有」に重点を置くなら、トランプよりハリスが有利だと判断できる。その根拠は、バイデン政権の3年間で朝鮮の核能力が2倍程度増加したことにある。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、バイデン政権が発足した2021年1月に朝鮮が40〜50個の核兵器を製造できる核物質を保有しているとしながらも、このうち実際に何個の核兵器を製造したかについては判断を留保した。一方、3年後の2024年1月には50個の核兵器を保有していると推定し、これに核物質保有量を追加すれば、最大90個の核兵器を確保できる能力を持っていると分析した。
このような北朝鮮の核能力の拡大と高度化は、米朝対話「ゼロ」と軌を一にしている。まだ4カ月ほど任期が残っているが、バイデン政権は1990年代以降、朝鮮と一度も対話をしないままホワイトハウスを去る可能性が非常に高い。また、ハリス政権時の対北朝鮮政策も同盟・抑止力・ミサイル防衛体制(MD)強化に重点を置いたバイデンの政策を踏襲すると見られる。
朝鮮が核能力強化に優先順位を置く場合、トランプ政権よりハリス政権がより有利と判断する可能性があるという分析もこのような脈絡で出てくる。また、戦略的同盟関係を樹立したロシアとの関係強化にも有利だと判断することができる。
もちろん、朝鮮がトランプの再任が有利だと判断できる根拠もある。「トランプ2.0」時代に予想される韓米同盟と、事実上の同盟に近づいている韓米日軍事協力の亀裂が代表的だ。また、トランプが非核化を要求せずに軍備統制と軍縮交渉を提案し、緊張緩和と関係改善を図る可能性もある。朝鮮はこれを核保有国としての地位を固める機会とみなすことができる。これは、朝鮮が核能力強化よりも安全保障需要を下げて経済発展に有利な対外環境づくりに重点を置けば、トランプ大統領を好むということを意味する。
まとめると、朝鮮が誰を好むというよりは、誰がなっても対応する準備ができていると見るのが合理的だ。「対話も対決も私たちの選択」という金正恩の発言も、このような文脈で理解する必要がある。甲乙関係が明白だった過去の米朝関係に終止符を打ち、「私も甲だ」という認識が強くなっているのだ。だから、韓国もきちんと準備しなければならない。
尹錫悦政権が対北朝鮮強硬策や韓米日同盟に「すべてを賭け」続ける場合、ハリス大統領になれば「北核の暴走」を、トランプ大統領になれば「韓国いじめ」を引き起こす可能性が高くなる。窮地を防ぐためには、アメリカ大統領選で誰が当選しても、二国間・多国間問わず、朝鮮との対話再開に重点を置くべきである。その出発点は、「圧倒的な力の誇示」を自制し、対北ビラ禁止と拡声器放送の中止にある。
(『ハンギョレ』2024年9月9日、チョン・ウクシクハンギョレ平和研究所所長)