NEWS HEADLINES

非核化を大きく進めるはずだった南北間の重要な口約束

ニュースリリース|トピックス| 2024年05月30日(木)

Facebook

 文在寅・前大統領が最近出版した回顧録には、2018年9月の平壌共同宣言に盛り込まれなかった口頭での合意が書かれている。

 当時、南北首脳は共同声明に盛り込まれた「寧辺核施設の廃棄」を、北朝鮮と米国の専門家・技術者が共同作業で行う方案に合意したという。これは翌2019年2月、ハノイでの米朝首脳会談が決裂した直後に行われた、北朝鮮のリ・ヨンホ外相の記者会見でも確認される。

 これが実行されていれば、アメリカの専門家は寧辺での核活動履歴を見ることができるようになり、したがって、他の場所に分散しているかもしれない核物質や核兵器も把握することができるようになるはずだった。北朝鮮の核の全貌をアメリカが覗くことができる絶好の機会なので、透明性の面でも「核リスト」提出に匹敵する効果を持つと言える。

 アメリカの北朝鮮核の最高専門家であるジークフリード・ヘッカー博士(元ロスアラモス国立研究所長)は、2007年8月にヨンアン放射化学実験室(使用済み核燃料再処理施設)を訪問した後、これらの施設を不能化するのに最低1年、長くても4~5年かかり、完全廃棄及び解体・浄化作業まで含めると10年以上かかると推定した(『核の変曲点』)。

 長い時間を要し、技術的難易度の高い核廃棄作業を北朝鮮とアメリカがともに行うことは、両者の信頼形成のためにまたとない機会だ。専門家、技術者、外交官、通訳と支援要員など450~500人のアメリカの専門家が長くても10年間、平壌と寧辺に常駐すればアメリカの連絡事務所もできるだろう。

 韓国国内外保守勢力の「空き缶」「鉄くず」という評価とは異なり、寧辺核施設はソウル・汝矣島地区の3倍に達する敷地に、300棟の建物と施設が入った北朝鮮核の心臓部だ。

 2004年以降、寧辺の核施設を何度も訪問したヘッカー博士は、寧辺が北朝鮮の核能力の80%を占めていると評価する。とくにプルトニウムとトリチウム生産施設は寧辺だけにあり、ここが閉鎖されれば小型核弾頭と水素爆弾を作ることができない。

 さらに、金正恩総書記はは2018年9月、ドナルド・トランプ大統領に親書を送り、「核兵器研究所」の中止する方針を明らかにした。北朝鮮の核の頭脳である研究所の閉鎖は「核プログラムの究極の終焉」(ヘッカー博士)を意味するものだった。

 文・前大統領は回顧録の中で「娘の世代まで核を背負って生活させることはできない」という金総書記の言葉を記しているが、実際に金総書記が「どの時点まで、どのような形で」非核化を構想したかは確認が難しい。 しかし確かなことは、北朝鮮の提案は核能力の画期的な削減であり、米朝が核廃棄の共同作業を通じて信頼を構築していこうということだった。

 非核化と相応の措置を段階的・同時行動的に履行しようという北朝鮮の構想は、ファンタジーのような「CVID」(完全で検証可能で、不可逆的な非核化)よりも説得力が大きい。少なくともこの時期の金正恩と、米朝交渉決裂後の金正恩は区別しなければならない。

 ハノイでの交渉決裂から5年、バイデン政権の任期最終年に来てようやく、アメリカで「段階的非核化」が取り沙汰されているのは遅きに失した感がある。アメリカ大統領府関係者が言及する「北朝鮮の非核化のための中間段階」(interim steps)は、2018年に南北首脳が膝をつき合わせて作った非核化プロセスと基本構造が同じだ。

 尹錫悦政権の国家安全保障室長が「アメリカ政府内でそのような議論はない」と公に否定したが、アメリカ大統領府はすぐさま「中間段階」を検討していると反論した(VOA・2024年5月1日)(米国の声(VOA)5月1日付)。

 韓国内の保守派が非難してきた「朝鮮半島平和プロセス」の方法論をアメリカが追随しようとするのは、それだけ現実性があるからだろう。
『京郷新聞』徐義東・論説室長
(2024年5月30日)


ニュースヘッドライン