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日朝関係と金与正談話

ニュースリリース|トピックス| 2024年03月01日(金)

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 2024年2月15日、金正恩の妹である金与正副委員長は、北朝鮮の対日政策に関する談話を発表しました。少し不思議なのは、金与正がこれを自分の個人的な意見だと主張したことです。 北朝鮮の政治に個人的な意見があり得ないのは常識です。

 談話の基本的な内容は、日本が一定の条件を受け入れれば、北朝鮮と会談をすることもでき、首脳会談まで可能だということです。 この談話は偶然に出たわけではありません。 メディア報道や専門家の間では、2023年春から日本と北朝鮮の外交官が第3国で時々会っているという話が公然と流れていました。 北朝鮮の目的は、日朝会談の再開と思われます。

 客観的に言えば、日朝双方は会談再開に関心があります。岸田首相は、日本で長い間見られなかった大規模な不祥事スキャンダルで、最近支持率が大きく落ちた状態です。北朝鮮との会談を通じて外交的成果を得られれば、支持率回復を狙うことができます。

 北朝鮮も日本との会談を望んでいます。北朝鮮の立場で一番望ましいのは、日本政府から植民地時代の補償を受けることです。 しかし、対北朝鮮制裁のため、このような補償を受けることは事実上不可能です。

 それでも、北朝鮮は日本と会談を始めると、米国と日本、韓国の関係に隙を作り、米日、日韓の衝突と矛盾を利用しようとするでしょう。 これは北朝鮮の伝統的な外交方式です。

 しかし、日本と北朝鮮の高官級外交会談が成立するかどうかは確信が持てません。 両側が妥協しにくい難題がまだたくさん残っているからです。

 日本国民の立場から見ると、対北朝鮮政策で価値がある問題は拉致問題だけです。簡単に説明すると、1970~80年代、北朝鮮の諜報機関工作員は日本で多くの人々を拉致しました。 拉致された人々は、政治とは何の関係もない普通の人々です。麺料理人、看護師、中学校の女子生徒まで拉致しました。

 ほぼ20年間、拉致事件がないと虚偽の主張を繰り返していた北朝鮮は、2000年初めに突然拉致の事実を認めました。 拉致された5人の拉致被害者の日本への帰国も許可しました。

 今の北朝鮮の立場は、帰国した人以外の拉致被害者は死亡し、生存者は帰国したので、この問題は終結したというものです。 しかし、日本国民は、北朝鮮が拉致被害者の一部だけを帰国させ、拉致被害者の一部はまだ生存していると信じています。

 とはいえ、金与正は談話で会談を再開するための最も重要な先制条件について言及せず、この問題が完全に解決されたと主張しました。 このような状態で会談を再開するかどうかは不透明です。

 金与正が談話までしたことを考えると、日本と北朝鮮間の秘密接触があったと疑うことは可能です。北朝鮮が土壇場で拉致被害者数人を日本に送るかもしれませんし、その代わりに日本は北朝鮮に植民地補償まではいかなくても経済的な譲歩をする可能性もあります。

 しかし、これはあまりにも仮説的な話です。最近の傾向を考えると、日朝関係の正常化はまだ遠い未来のことだと思われます。
(RFA、2024年2月22日、韓国・国民大学アンドレイ・ランコフ教授)
https://www.rfa.org/korean/commentary/lankov/alcu-02222024090009.html


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