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「トランプが当選すれば北朝鮮の核保有を認める」

ニュースリリース|トピックス| 2024年01月16日(火)

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延世大学・文正仁名誉教授「トランプが当選すれば北朝鮮の核保有を認める」
韓国に対策はあるのか
「金正恩の新年の辞、南北関係パラダイムを変える発言…北への見方を変えよ」
「尹錫悦政権が望む南北関係正常化?金正恩が先手を打った」
「2017年よりはるかに高まった2024年の安保不安…偶発的な衝突を防げ」
「米国との価値同盟? その結果としてわれわれの安全が改善されたのが疑問」
「4月前に韓米日首脳会談は総選挙のためのイベント…会談しても大きなインパクトはない」
「トランプがアメリカ大統領になれば北朝鮮の核保有を認める実用的なアプローチ、韓国政府を排除することもありうる」
「尹錫悦政権、片思いの対日関係? 落第点をつけたい国民が多いはず」
「国内政治状況が変われば、李明博のように背を向ける韓国政治家…日本は信じていない」

ーー金正恩総書記が新年の辞と同等のメッセージを出しました。

 今までの南北関係パラダイムを変える発言をしたんですよ。南と北は二つの国家です。そして交戦状態にある敵対的国家という話をしました。これまで北では、南側とうまくしようとやってきたのに、南側で考えていることは北朝鮮を「吸収して統一する」「自由民主主義体制したで北朝鮮を防ぐ」といったものでした。

 これを見てわれわれはこれ以上南側と統一に関して派なすをする用意がない、さらにはいま朝鮮半島は戦争状態と同じなのに、南側でまたは米韓連合戦力が強くであればわれわれは強対強で対応して正面から対応する、そのような形では戦争が起き、核戦争が起きれば南側の体制を平定する準備をしておくべきだ、こういった考えで話をしたと思います。

ーー本当に怖い話ですね。

 相当怖い話ですね。これまでの6.15共同宣言、10.4首脳宣言、9.19平壌宣言などが、どうみてもすべて無効になったということです。そのため、朝鮮半島が一種の戦争状態に進むことを金正恩が取り上げて話をしたということです。そのため、われわれが北への見方も変わるべきであり、南北の全般的なパラダイムの転換を持つべきではないか、そう思います。

ーー尹錫悦政権はきちんと対応していると思いますか。

 尹大統領は現在の発言が韓米間の拡大抑止を確実に慣性させる、だから結局強対強で対応するということなので、いまはどう見ても抑えがたい関係に進んでいるということです。また北では大韓民国憲法の領土に関する第3条、「朝鮮半島全体と付属の当初とする」という部分についても、金正恩が問題だと指摘しています。われわれは一つの実体を持った国家として存在するのに、なぜわれわれの領土を韓国の領土の一部だとするのか、その考えはおかしい、そう言っているのです。

 いままであった特殊関係というのが完全に崩れ、新たな国家対国家なのに、敵対的国家の関係であるため、これからは南北関係への見方を大きく変えるべきです。金正恩が支持したのは、その朝鮮半島問題を扱う部署を全部組織改編し整理せよというものですから、統一戦線部がなくなる可能性があります。祖国平和党言う津委員会もなくなる可能性が高い。そうなると尹錫悦政権が望む通りになるでしょう。尹錫悦政権では実際に、統一部をなくしたい。南北関係を正常化するというのが、そんな状態を正常というのですから。これはどうみても、金正恩が先手を打ったと見ることができます。

ーー2024年に安保に対する不安がはるかに高まるという意味ですね。

 2017年に安保不安が相当高まりました。いちばん深刻だったのは2010年に天安艦事件、2010年11月に延坪島事件といった実際に武力摩擦が起きた時でした。その次は2017年7~9月まで本当に不安定な状態でしたが、いま展開されているのは2017年よりも深刻ではないのかと思います。だからこそ、当時合同参謀本部議長だったマイク・モーリン提督が話した「いま朝鮮半島で展開されていることは、2017年の状態よりもさらに深刻だ」と言うことなので、相当厳しいと見るべきです。

ーー戦争の危機にまで至りますか。

 とくに今心配されていることは、朝鮮半島で戦争が起きれば計画による戦争が起きる可能性は相当小さいということです。なぜなら北もわれわれよりは在来式戦力は弱いですが、核とミサイル能力を持っています。われわれは韓米連合戦力がかなりの在来式戦力を持っており、また米国が核兵器を持っています。われわれは米国の核の傘の下にいます。そのため、南であれ北であれ、計画二位おる戦争を行うには相当しんどい。

 問題は偶発的な衝突です。偶発的な衝突とは、もし春になって南から風が吹き始めると、また一部人士がビラ散布を行う時。それならば北からはそのようなものを迎撃するとなれば、韓国大統領は結局何でしょうか。「1秒以内に反撃し、100倍、1000倍にして返す」と話しました。韓国側ではものすごい火力を持って北に打撃を与える、それなら北からは同じ対応をするでしょう。そうなると、北で自分たちが持っているという戦術核を使用する可能性も排除できないということになります。そのような偶発的な衝突を相当心配しています。

ーー韓国はG10に入り、外交安保の力量もさらに重要になっているように思います。この1年6カ月間、尹錫悦政権の外交安保に点数をつけるならどうなりますか。

 朝鮮半島でまず重要なのは、戦争と平和の問題です。戦争は起きないから、その点で落第だとは言えません。しかし、いま不安が高まっているということ、コリアリスクが今高まっていること、そのようなことを考えると否定的な評価をせざるをえません。全般的に私が見ると、C程度しか与えることはできないと思います。国民が安定して生活できるようにしなければならないのに、継続して不安が高まっており、危機が高まっており、だからです。

 韓国大統領としては、韓米同盟があるから韓米日3カ国強調があるから心配することはないと考えているでしょうが、そうでしょうか。休戦ラインから50キロメートル以内に2500万人のわが市民が住んでいるのことが、大韓民国の立つ位置ではありませんか。北朝鮮は今、休戦ラインに長距離射程砲を布陣しています。われわれが構造的に相当脆弱だという事実を知って、大統領に安保問題で相当慎重で注意深く扱わなければならないということが足りない、そのようなところから私はCを付けます。

ーー2023年もまた国民に大きな衝撃を与えたのが、万博誘致での投票で29票しかえられなかったということです。これを考えると、文教授がCを付けられたことに同意する人たちも多いように思えます。

 われわれが政府の外交安保政策を評価する際、3つの部分を見るべきです。まず韓国国民の生存をどれだけ保障しているか。次に国民の反映をどれだけ増進させているか。3つ目は、国家的地位をどれだけ高めているか。万博誘致に失敗したことは3つ目の失敗となるでしょう。いまとても重要なことは、生存は安保の問題であり、反映だということはまた国益の問題なのですが、したがってこの安保と国益と国家的地位ということを事実上、各論的に見る必要があります。

ーーとくに尹政権は対米外交にとても神経を使っており、注力しています。対米外交から見てみましょう。

 尹政権では対米外交をA+だと自賛するでしょう。韓米首脳会談でワシントン宣言も採択され、韓米間の核協議グループもでき、乙支訓練の時も核兵器に対する共同運用や活用について合意し、それを軍事演習の際に一度実施してみようという話になりました。そのような…では、とても強い同盟になったと考えます。

 その次に、尹政権ではキャンプデービットでの首脳会談で単純に軍事案のだけを扱ったのではなく、韓米両首脳が韓米同盟が価値同盟だ、大きな枠で軍事同盟、経済同盟、文化同盟、技術同盟、情報同盟、これらすべてを行うと話しました。したがって包括的な同盟となったので、そのような点では相当成功したという話ができるでしょう。しかし、心配はその結果としてわれわれの安全がより改善されたのか、そうではないのか、ということです。

 そしてその結果として韓中関係が悪化し、韓ロ関係が悪化し、南北関係は最悪の状態になり、そうみると韓米同盟の強化というのが必ずしもわれわれに祝福となっていないのではないかという結論に至ります。安保不安をきちんと管理できないため、私はCを付けるほかありません。

 国益外交という面からもそうです。バイデン大統領は1年半で韓国から誘致した投資が560億ドルを超えると言いましたが、われわれは米国から誘致してきた投資がたった70億ドルにしかなりません。それならば、7~8倍の差が出ているということです。国益外交からすれば損をしたのではないかという話になります。

 国家的地位からみてもそうです。われわれが米国と同盟を結び、G7に行くこと、それが韓国の国家的地位を高めると思いますが、万博誘致のケースを見ると開発途上国グループも相当大きく、世界は多様です。米国が覇権を自由にするということではありません。したがって、われわれが国家的地位を向上させるためには、あまりにもわれわれが米国と一緒になりすぎているのではないか、その逆風が万博誘致の時の結果ではないか、そんな考えもできるのではないでしょうか。あまりにも米国を追従している外交なので、米国追従外交が韓国の国家的地位をそれほど引き上げているのかについて疑問が生じます。

ーー韓国大統領室は韓米日首脳会談を2024年にソウルで開催できればいい、そう話をしていますが、可能性はどうでしょうか。

 2022年8月にキャンプデービットで受けたような注目はそれほど受けられないと思います。今、日本の岸田文雄首相の支持率が10%台に落ち、バイデン大統領も今年11月の大統領選挙も控え、いまの時点でどうなるかはわかりません。バイデン大統領と岸田首相を韓国に招き首脳会談をすることはそれほど簡単ではないと思います。また、一度盛大にやってしまったことですので、2回目にはそれほど注目を受けないのではないか。韓国国民が体感するほど大きなインパクトを与えるとは思いません。

ーー米国大統領選挙の行方はどう見ますか。

 予測は難しいですね。『ファイナンシャルタイムズ』が2023年末に、バイデンが当選すると予測しています。これに懐疑的な人は多いでしょうね。全般的に、バイデンが当選すればこれまでの枠を維持するでしょう。ニッキー・ヘイリーが共和党側で当選するとしても、大枠はそれほど崩れることなく維持されるでしょう。なぜなら、インド太平洋戦略はもともとトランプが作ったものですから、共和党もそれを受け入れると思います。対中警戒においては、民主党より共和党が強いため、そして対中警戒のためには韓国または日本と協力しなければいけないのが共和党候補の基本的立場ですから。

 しかし、トランプが当選すれば事情は相当変わってきます。トランプ自身もインド太平洋戦略という大きなフレームをつくったため、それを維持するほかありません。しかし、韓米同盟や韓米日3カ国との協調に対する関心は、バイデンほど強くありません。次にトランプがいつも話をしていますが、韓国、日本に防衛費負担を増やせといい、文在寅政権の時に失敗しました。文政権はとても強く抵抗して、それで合理的なラインでもそうでしたが、それがいまあきれるぐらい引き上げています。尹政権の第一の心配はそれです。

 トランプが金正恩と個人的な関係があり、それで米朝間に首脳外交が稼働するとなれば、韓国政府は排除される可能性が相当大きい。最近、米国の政治専門紙『ポリティコ』で、トランプ側の人間から聞いたが、「北朝鮮について実用的なアプローチをする、北朝鮮が今核兵器を持っているが、非核化を目標とする交渉をできるのか、だから北朝鮮の核保有を認めて国交正常化もしてあげられる」といった記事が出て話題になりました。韓国メディアではトランプがそれを否定したという話をしています。したがって、私がこの記事を書いた記者に直接メールを送り、「トランプが否認したのではないか」と聞いたのですが、「具体的に否認したことはない」と回答が来ました。

ーーそれはスクープですね(笑。岸田文雄首相とは1年に7回も会うほど関係が近くなりました。対日関係についてどう評価しますか。

 尹政権で最も成功したのは韓米同盟だけでなく日韓関係改善、日韓関係をほとんど同盟レベルにまで引き上げたことです。そのような点から、現政権や保守陣営からは相当高い点数を上げるでしょう。

 しかし一般市民としてはCかDではないですか。ある人はF(落第)点を付けたいと思っているでしょう。基本的に徴用工問題おような第3者賠償問題に転換させました。福島処理水問題については、われわれが一方的にそれを受け入れたものです。その次に韓米間にミサイル情報共有をするとか、ミサイル防衛システムで情報を共有するとか、これらすべてのものが日本へ一方的に有利になるものを与えたものであって、われわれに何か得たものはありません。

 では日本がなぜそれに喜ばないのか。それはおそらく、李明博大統領の時にとても起こったためです。李大統領がそうではないですか。実兄である李相得・元国会副議長が「自分の弟は腹の中まで親日だ」「大阪で産まれたから相当日本との関係改善を行おうとしている」とまで言いました。しかし国内政治も厳しくなったので、その任期末に李大統領は独島(竹島)を訪問してしまいました。突然行ったんですよ。だから日韓関係がとても悪い状態に陥りました。

 日本では韓国の政治家は信じられないという話です。いくら日韓関係をうまくやっても、国内政治の状況でいつでも関係を悪化させるから。そのため、日本が尹大統領がとても善に満ちた行為をしているのですが、それに対してよく思っていないようです。

 そうしてみると、これは韓国大統領は日本に対し片思いをしているのではないか、そんな考えがします。

 われわれが北朝鮮の脅威が増大しているのに韓米同盟だけでは弱い、韓米日3カ国協調をすべきだ、それが今、尹大統領周辺が考えていることの一つです。だからこそ、安保のためであればわれわれが譲歩できるのではないかということですが、韓国の大多数の国民はそう考えていません。

ーー2024年、尹政権に対して一つだけ言いたいことは何ですか。

 最も重要なのは、戦争はだめだ、とうことです。それが最も重要な絶対命題であると考えます。戦争を避けようとすれば、理念過剰や独善、あるいは偏見を捨てなければなりません。そうしようとすれば、相手の立場なって考えることが相当必要です。そして「実事求是」、事実に基づいて心理を探求することを受け入れるアプローチも相当必要です。最後は、国民的合意を求めて国民 と共に進む、これを強調したいと思います。

韓国時事週刊誌『時事IN』2024年1月2日
 


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