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2024年の北朝鮮は「核保有国」への地位固めの年に

ニュースリリース|トピックス| 2024年01月02日(火)

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 北朝鮮は2024年、4月に行われる韓国の総選挙と11月のアメリカ大統領選挙をにらんで、「核保有国」への地位固めに入るための戦略を駆使する予定だ。また中国とロシアとの「密着外交」を続けるものと思われる。

 北朝鮮は2024年も、中国とロシアが黙認するなか、核とミサイルを高度化させるために邁進するものと思われる。とくに今年4月に韓国総選挙、そして11月のアメリカ大統領選挙がある。北朝鮮は二つの選挙を前に、ある種の挑発で「核保有国」の地位を固めようとするだろう。

 北朝鮮の核保有国戦略は2022年3月から本格化した。この時期、金正恩総書記は4年間維持してきた「核実験と長距離ミサイル発射のモラトリアム」方針を破り、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。また7回目の核実験のための準備をしているかと思えば、核弾頭を幾何学級数的に増やしている。とくに昨年2023年には、5度のICBMを含む計27回の弾道ミサイルを発射した。

 2023年9月には、憲法に核武力強化政策について明記している。2024年も、北朝鮮の核とミサイルによる挑発は続くだろうと、アメリカ海軍分析センターのケン・ゴース局長は予想する。北朝鮮がいまだに戦略核、戦術核、ミサイル、偵察衛星を主軸とする核戦略を完成できておらず、今後も挑発を行うほかないだろうと言う。

 韓国情報当局は2024年4月10日に実施される第22代総選挙をにらんで、北朝鮮が対南混乱を招くようなことをするのではないかと見ている。国家情報院は2023年12月28日、金総書記が「南韓に大きな波乱を起こせるような方案」を用意せよと指示したと明らかにした。そうして、挑発時期は総選挙など韓国の主要政治日程を控える年初になる可能性が高いとみている。

 韓国政府傘下の国際研究機関である統一研究院も、「北朝鮮が9.19軍事合意破棄を行動に移す報復的な行為と、地上、空中、海上での軍事活動を増加させて緊張を高める映像などを公開する可能性がある、と予想する。

 また3月に予定されている米韓合同軍事訓練を契機に、ミサイルを発射するなど軍事的緊張を高めることもありえるだろう。

 このほかに選挙を狙ったフェイクニュースを広め、オンライン・オフラインのハッキングなどによって韓国内部の混乱と分裂を招く可能性もありえる。

 しかし、北朝鮮が総選挙を狙って直接的な対南軍事挑発を行う可能性は希薄だと、韓国・統一研究院のチョ・ハンボム博士は指摘する。

 「北朝鮮の立場からすれば、韓国の革新勢力が総選挙で勝利することは有利だが、安保上の緊張を招いて保守陣営が結集するようなことを望んではいない。意図的な挑発をして保守陣営に有利に働くような選択はしないだろう」

 専門家の中には、北朝鮮が2024年11月に実施されるアメリカ大統領選挙を前に、挑発などの動きを見せるのではないかと予想する。とくにアメリカの次期政権に「非核化はできない、不可逆的な核保有」を確認させるために核・ミサイルの高度化を誇示する可能性がある。

 北朝鮮はこの3年間、バイデン政権の北朝鮮政策を「敵対視政策」としてみなし、対話を拒否してきた。しかし金総書記に対して肯定的なトランプ前大統領が当選する可能性が40~50%ほどある状況になれば、北朝鮮はこれを活用しようとするだろうと、アメリカ平和研究所(USIP)のフランク・オム先任研究院は言う。

 「少なくとも40~50%ほどチャンスがトランプにあれば、新大統領と北朝鮮はポジティブな関係を持てるだろう」

 問題は、アメリカの大統領選挙を前に北朝鮮が無謀な挑発を行う場合、逆効果となりえるということだ。例えば、大統領選挙の前に日本海に向けて短距離ミサイルを発射すれば、これは北朝鮮の問題の重要性を喚起させ、バイデン政権の無力さを想起させる事件となるだろう。

 しかし、北朝鮮が7回目の核実験を行ったり、通常角度でハワイ付近にICBMを発射する場合、事態はとんでもない方向へ拡大しうると、ゴース局長は言う。この場合、米国世論が沸騰するのはもちろん、中国も北朝鮮に背を向けることもあり得ると指摘する。

 このような理由で、ゴース局長はアメリカと北朝鮮が11月の大統領選挙の後に、核に関する交渉を行う方案を検討する必要があると提案する。北朝鮮が核兵器を持っているというが、「大気圏再突入」技術など核戦略が100%完成していないのが実情だ。したがって、北朝鮮が現状で核プログラムを凍結させ、アメリカから安全保障と経済的支援を受ける方案があると、ゴース局長は言う。

 「もし北朝鮮が、彼らが核プログラムを完全に完成できないという計算があれば、彼らはおそらく、計画自体を凍結するだろう」

 アメリカの政治専門紙『ポリティコ』も、2023年12月13日に、トランプ氏の対北構想を伝え聞いた3人からの発言を引用して、トランプが再度政権を握れば北朝鮮が核プログラムの凍結する代わりに、対北制裁を緩和する方案を推進すると報道している。

 北朝鮮はまた、2024年に中国とロシアとは「綱引き外交」を行い、核武力の高度化に必要な支援を確保し、外交的な幅を広げるだろうと思われる。

 中国は2023年、北朝鮮とそれほど密接な行動を見せなかった。対北制裁に表面的に付き合いながらも、米韓日の協調を牽制するところで、北朝鮮との関係を維持してきた。

 しかし最近、中国は北朝鮮との距離を狭めようとしている。中国の王毅外相は北朝鮮がICBMを発射した12月18日、北京で北朝鮮のパク・ミョンホ副外相と会って朝中の友好関係を再確認している。さらに、今年は朝中修交75周年となる年だ。

 朝中関係はこれまで新型コロナインフルエンザ感染症の拡大により、高位級の交流が相当減った。2023年9月、北朝鮮の政権樹立75周年記念式に、中国は劉国中・副首相が出席した程度だ。

 2024年は朝中間で好機級の交流が活発化しそうだ。これまで北京駐在のアメリカ大使館で勤務していたメリーランド大学のウィリアム・ブラウン教授は、金総書記が今年中国を訪問する可能性があるという。

 「金総書記が訪中することは、習近平国家主席と金総書記にとってもいいことだろう」

 また、今年はこれまで中断していた中学人の団体観光が再開され、朝中陸路輸送と貿易も拡大するものと思われる。

 2024年3月に実施されるロシア大統領選挙で再選が確実視されているプーチン大統領は、再選後に平壌を訪問して金総書記との首脳会談を行う可能性がある。また、朝ロ間の軍事協力はもちろん、労働者派遣、観光、教育、スポーツなど第10回朝ロ経済共同委員会で合意した事項が具体化するだろう。

 前出のチョ・ハンボム博士は、北朝鮮が核の高度化にロシアの技術的支援が必要であるため、朝ロ関係は密着せざるを得ないと指摘する。

 「ウクライナ戦争が当面続くため、朝ロ間の良好な関係が続き、また偵察衛星・万里鏡1号の性能改善、早期警戒機のような技術支援があるため、朝ロの軍事協力は強化され、2024年は北朝鮮版・新冷戦外交の柔軟さが高まるだろう」

 2024年の朝鮮半島情勢は、米韓日の協調に対抗して北朝鮮が偵察衛星やミサイル発射で対抗し、これを中ロが支持するという、米韓日対朝ロ中、という対立の構図が継続しそうだ。

 この過程で、米韓日と朝ロ中は各自の軍事、外交、経済分野で協力して、北東アジアの新冷戦構図はより高まりそうな情勢だ。
(2023年12月29日、VOA、崔源起記者)




 


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