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バイデン米大統領の北朝鮮に対する認識と首脳会談

ニュースリリース|トピックス| 2021年01月24日(日)

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 米国のバイデン大統領は、北朝鮮はもとより朝鮮半島とは格別の因縁を持っています。バイデン大統領が北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長をどのように認識しているか、そして米朝関係が今後どのような展開を見せるか、崔源起記者がお伝えします。

 バイデン大統領は金委員長について個人的、あるいは政策的にそれぞれ違った認識を持っています。個人的には、金委員長に対して否定的な認識を持っていることを明確に示してきました。

”Are we a nation that embraces dictators and tyrants like Putin and Kim Jung Un?”
(われわれはプーチンや金正恩のような独裁者や暴君を受け入れる国だろうか。)

 これに対し北朝鮮当局は朝鮮中央通信を通じて、バイデン氏が「人間の初歩的な姿さえもっていない」と罵倒に近い非難を行いました。

 政策的な面からみると、バイデン氏の対北認識は少し違ってきます。2020年10月、大統領選中のバイデン氏はテネシー州ナッシュビルで行われたテレビ討論会で、「どのような条件であれば、金委員長と会うことができるか」という質問に対し、「金委員長が核能力を縮小することに同意するのが条件」と回答しました。

 トランプ前大統領と比べると、バイデン氏の対北認識はより否定的であり、政策の優先順位も高くないという状況です。トランプ氏の場合、共和党の大統領候補だった2016年6月、「金正恩とハンバーガーを食べながら核について話し合おう」と述べ、注目されたことがあります。

 トランプ氏はまた、就任から3カ月が過ぎた2017年4月、「最大の圧力と関与」(Maximum pressure and engagement)政策を発表し、北朝鮮をトップの課題としました。ところが、バイデン氏にとって北朝鮮問題は1位の課題ではありません。

 例えば、バイデン氏は就任初日の1月20日、17件の行政命令とメモ、訓練に署名しました。この日、バイデン氏が署名したのは連邦政府施設のマスク着用の義務化や国境の壁の建設中断、ムスリム国家出身外国人の入国許可、奨学金の利払い猶予、世界保健機関(WHO)とパリ気候変化協定の再加入などでした。

 ワシントンの朝鮮半島専門である米海軍分析センターのケン・ゴース局長は、バイデン氏が就任から数カ月間は、新型コロナウイルスと経済といった国内問題に集中するほかないと指摘しました。

 バイデン政権の外交政策チームも、北朝鮮問題よりは中国とロシア、イラン、そして米国との同盟国との強化に注力するという立場です。新政権の国務長官に就任予定のアントニー・ブリンケン氏は1月19日、米議会上院の認証聴聞会で、バイデン政権の外交政策の中心は「同盟強化」と「米国の指導力の復活」、そして中国に対する強硬な姿勢だと明らかにしました。そして、北朝鮮に対しては全般的な対北アプローチ方式と政策を再検討すると述べました。

”I think we have to review and we intend to review the entire approach and policy toward North Korea because this is a hard problem........“
(深刻な問題があるため、北朝鮮への外交アプローチと政策を全面的に再検討すべきだと考えています。)

 米国の専門家らは国内政治的にもバイデン氏が北朝鮮との首脳会談を推進するのは難しいだろうと口をそろえます。バイデン氏は昨年の選挙活動中、金委員長に対するトランプ氏の融和的な姿勢を批判してきました。それだけに、「今になってそのような態度を変えて、北朝鮮との首脳会談をすぐさま乗り出せない」と、ワシントンの朝鮮半島専門家でありジョージタウン大学のウィリアム・ブラウン教授は指摘します。

 一方で、米朝実務協議となると、少し事情が変わってきます。首脳会談は政治的負担が大きいですが、実務協議はそこまで負担が重くないためです。さらに、バイデン氏はトランプ氏と違い、ボトムアップ方式の交渉を好むことが知られています。具体的には、米国と北朝鮮の実務陣が非核化措置とこれによる相応な措置を一つ一つ点検し、具体的な合意がなされた後に首脳会談を推進するというやり方です。

 問題は時間です。バイデン氏は1月20日に就任しましたが、現在、上院が承認した閣僚級の人物は国防長官のロイド・オースティン氏と、国家情報局長のアブリル・ヘインズ氏の2人しかいません。前出のゴース局長は、「国務長官など20数名の閣僚がすべて認証されれば、共和党とどこまで協調できるかによって、数カ月から1年はかかることもあるだろう」と述べました。

 バイデン政権が始まり、米朝間の膠着状態が長期化する兆しを見せると、韓国の文在寅政権が腰を上げました。文大統領は大統領府で行われた新年の記者会見で、バイデン政権で北朝鮮問題が漂流しないように努力すると述べました。

 また1月21日、バイデン氏に大統領就任を祝うメッセージを送り、迅速な米朝首脳会談を提案しました。文氏はこの中で、「近い時期に直接会って、共通の関心事について虚心坦懐に対話を交わすことを願う」と記したことを明らかにしました。米韓首脳会談の速やかな開催を提案したものです。

 韓国の新外相に任命された鄭義溶(チョン・ウィヨン)氏は、議会の認証を終え次第、米韓首脳会談の早期実現のため、米国を訪問するものと思われます。

 北朝鮮をめぐる朝鮮半島情勢は、2018年3月と似たような状況になりつつあります。当時、核問題をめぐって米朝間で緊張が高まると、文大統領は3月5日、大統領府国家安保室長を平壌に送り、米朝首脳会談を提案しました。

 その4日後、当時の鄭義溶室長はホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領と金委員長の首脳会談を発表しました。当時と違うのは、鄭室長がまず平壌を訪問したこととワシントンを訪問するという部分です。また、米国の大統領が異質なトランプ氏から、伝統的な政治家であるバイデン氏へ替わったという大きな変化もあります。バイデン新政権の発足を契機に、長期膠着状態にある米朝非核化交渉に突破口が開かれるか注目されます。
(Voice of America、2021年1月22日)


 


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