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「バイデン新政権は北朝鮮に関心がない」

ニュースリリース|トピックス| 2020年12月06日(日)

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 アンドレイ・ランコフ教授は北朝鮮の歴史と体制の研究で分水嶺となる論文と著作を多数出している世界的な学者だ。ロシア人として韓国の大学で北朝鮮を研究する独特な人生を14年ほど送っている。ランコフ教授の学問的業績は多くの部分、個人的努力と知的卓越性にある。しかし1945年以降、北朝鮮政権の樹立と金氏一家の権力確立を支援する役割を果たした旧ソ連出身であるということ、北朝鮮の金日成総合大学に留学した独特な経験、広範囲な海外研究ネットワークとの連携なども考慮せざるを得ない。ランコフ教授は学会では2000年代半ばから「核保有は北朝鮮の立場では合理的な決定であり、全面的な北朝鮮の非核化は不可能だろう」との主張を初めて繰り広げた。11月23日、国民大学の研究室でランコフ教授をインタビューした。


――2021年1月には米国でバイデン政権が始まる。彼らの北朝鮮政策の方向性が気になる。


 バイデン大統領当選人は、北朝鮮問題についてこれといって関心がない。オバマ大統領の時の「戦略的忍耐」政策に戻る可能性が高いと思う。まず、バイデンが大統領に当選したが、投票者の47%程度がトランプ大統領を支持するなど、政権の基盤がそれほどしっかりしていない。そのため、バイデンは少なくとも政権初期には対外政策よりは国内政策に力を入れるほかない。

 最悪の状況として、コロナのパンデミックと今回の大統領選挙で明らかになった人種間、都市農村間の対立、不平等の問題など国内の懸案解決に力を入れるほかないだろう。さらには、対外政策の優先順位でも北朝鮮は下のほうだ。バイデンは上院外交委員長を歴任した外交通だ。彼は北朝鮮問題の解決がどれほどしんどいか、万病治療薬がない難問であることをよく知っている。北朝鮮の核問題を解決できると考えたトランプ大統領は、米政界で例外的な人物だ。バイデンは、それが幻想であることをよく知っている。


――バイデンが次期国務長官に、元国務省副長官のアントニー・ブリンケン氏を内定したこともそのような布石のためか。


 現段階で長期的な予測は難しい。ブリンケン氏がオバマ政権の時「戦略的忍耐」政策の立案と実行に参加した人物だということは正しい。しかし、バイデンが政策をUターンさせる可能性もある。それでも、近い未来ではない。少なくとも来年には戦略的忍耐が米国の対北政策となる可能性が高いと思う。


――対北制裁の効果がどの程度なのか、学者の間で長い論争になっている。学者の中には、北朝鮮でコメの価格と為替レートが急変動しているなど、異常な兆候があると言っているが。


 北朝鮮経済が厳しいのは事実だ。為替レートやコメの価格の変動幅が以前より広がったことも事実だろう。しかし、北朝鮮の体制にとって危機となるほどのものでは決してない。例えてみれば、足が痛くて生活に不便であり、苦痛に思っているサラリーマンのようだ。足が痛いが、だからといって勤務先を辞めるほどではない。


 対北制裁の効果を考える際に、中国の存在を外すことはできない。中国は米国や国際社会の監視網をくぐり、食糧と原油など北朝鮮体制の生存に必須的な物資を供給しており、今後も続けるだろう。中国は米国との対立が深まれば深まるほど、現在の北朝鮮政権が崩壊することを黙ってみていることはできない。中国には緩衝地帯としての北朝鮮の戦略的価値が、日に日に高まっている。


――金正恩委員長はバイデン政権の「戦略的忍耐」にどのように対応するか。


 戦略的忍耐だけを見ているのではないだろう。事実、金委員長ははるかに自信満々のようだ。覇権競争へと飛び火した米中対立は、北朝鮮にとって利益となる情勢変化だ。中国は北朝鮮が体制を維持できるように基礎的な資源を継続して支援している。しかし、人民に経済成長の果実を与えると約束した金委員長としては、対北制裁が延長されればこのような希望を取りやめなければならない。


 現在の対北制裁システムの下では、何もできることはない。そのため、金委員長はバイデン政権の無関心と無視を打ち破るため、言い換えれば、バイデンを動かせることができるように軍事的挑発を行う可能性がとても高い。来年初頭、バイデンの就任式の後に挑発すると見ている。ただ、核実験は中国を怒らせる可能性があり避けるかもしれない。すでに完成されたICBM(大陸間弾道ミサイル)である「火星15号」、あるいは2020年10月10日の閲兵式で模型を見せた「火星16号」の発射を試みるだろう。


――中国は米国の新政権発足直後に、東北アジアの緊張が高まることを望んでいないようだ。


 そうだ。北朝鮮の挑発に関連して、中国がどのような態度を取るかがまだわからない。核実験ほどではないが、ICBM発射も中国が嫌うのは間違いない。そのため、自制するように北朝鮮に圧力を掛けるだろう。北朝鮮の中国依存度が前例がないほど高またという点で、中国がどれだけ圧力を掛けるか、これを北朝鮮がどれほど持ちこたえることができるかが関心事だ。個人的には、中国の圧力にもかかわらず、金委員長はミサイル発射を強行すると思う。


――それならば、文在寅政権の「朝鮮半島平和プロセス」は希望のないものになるか。


 大統領府はバイデン政権が北朝鮮問題の解決に積極的に関与することを望んでいるが、展望は明るくない。おそらく、失敗するだろう。「北朝鮮を包容しよう。そうすれば北朝鮮は核を放棄する」と韓国政府は主張する。米国の民主党はもちろん、共和党もこのような論理に関心はない。文大統領が来年7月、東京五輪に南北と日米の首脳が会って、北朝鮮の核問題と日本人拉致問題の解決方法を議論しようとの提案を行ったという。しかし、文大統領以外に参加する首脳がいるかどうか不透明だ。金委員長は広範囲なワクチン配布などで、コロナが完全に静まるまで東京を訪問する冒険はしないだろう。


――バイデン時代の米中関係はどうなるか。


 米国に反中戦略は変数ではない。常数だ。バイデン政権がトランプ大統領の時より少し柔軟に中国に向き合うことはありうるが、本質は変わらない。相当数の感の苦参が米中間の対立を自由民主主義対覇権主義のような理念の差から来ていると見ているが、それは誤解だ。既存の覇権国家といち早く浮上する新興大黒が結局はぶつかり合うほかない状況を指して、すでに「ツキディデスの陥穽」が今の米中関係を的確に表現した用語だ。


――激化する米中対立が韓国と北朝鮮にどのような影響を与えるか。


 韓国は社会主義を代表するソ連と市場経済と民主主義を標榜する米国が対決した最初の冷戦から最大の利益を受けた国だ。米国の覇権の下で、産業化と民主化を遂げた成功例だ。しかし、米中が対決する第2次冷戦時代には、とても厳しい環境に直面するだろう。安保は米国、経済は中国に依存する戦略が今では不可能だ。中国は米国の同盟体制にはるかに攻撃的な姿勢を見せている。

 中国の影響圏に入るよりは、韓米同盟がそれなりによい選択であるのは正しい。中華民族主義で武装した中国の覇権は、はるかに問題が多いためだ。とはいえ、韓米同盟体制を続けるために支払う代価が少なくはないことも知るべきだ。いずれにしろ、韓国には崔善ではない次悪を探す厳しい選択だけが残されるかもしれない。いやだろうが、簡単で居心地がよかった米国の覇権したの30数年間が終わりつつあるということを、韓国人は受け止めなければならない。
(韓国「国民日報」2020年11月27日)
http://news.kmib.co.kr/article/view.asp?arcid=0924166957&code=11121400&cp=nv&fbclid=IwAR1GSTkOG5YKH_0KEXjRk8DFCweg9w6YpbGA8Y6RGqGskkpWEK399Ki9cPU


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