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バイデン候補当選で北朝鮮はどう出るか

ニュースリリース| 2020年11月08日(日)

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 バイデン候補が勝利し、北朝鮮の今後の反応に注目が集まっている。

 北朝鮮はこれまで、その時の米朝関係によって米大統領選挙の結果が確定した翌日にニュースを伝えたり、あるいはまったく報道しなかったことがある。今回の選挙は、とくに序盤に混戦の様相を見せたことで、北朝鮮は開票中の11月4日からは関連報道をまったくしてこなかった。

 朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、結果が確定した8日にも「80日戦闘」に関する報道を掲載しており、国内の懸案報道に集中している。「わが共和国は強力な戦争抑止力を備えた世界的な軍事強国」と言及するなど、思想の結束固めに出ているところもある。

 北朝鮮は2016年11月にトランプ大統領が当選した際には、翌日の論評で次期米政権に「対北政策の転換」を促す内容を掲載したことがある。当時の論評では、北朝鮮は前任のオバマ大統領の「戦略的忍耐」が失敗したということを想起させることに集中しており、トランプ大統領の当選それ自体には言及しなかった。

 これはトランプ大統領に対する期待感よりは、情報収集がさらに必要だったためだと分析される。すなわち、今後の対北政策の方向性について予測が難しい状況だったためだ。

 しかし、それ以降は北朝鮮はトップダウンでトランプ大統領と米朝対話を行い、今回の選挙でも彼の再選を望んでいるかのような雰囲気作りをしてきた。トランプ大統領が再選に成功すれば、早期に北朝鮮の反応が出てくるだろうと期待されていた。

 北朝鮮はオバマ大統領の当選が確定した2008年には翌日、2012年に再選した時には3日後に関連報道を行った。これには、強硬一辺倒の対北政策を繰り広げ来た前任のジョージ・W・ブッシュ大統領とは違い、彼が民主党出身であり、より柔軟な戦略を持っているという期待感があったためだ。

 ただ、2012年に再選した時には08年とは違い、関連の報道や論評もせずに簡単に再選の事実を伝えたのみだった。オバマ政権が北朝鮮を経済的に圧力を掛ける戦略的忍耐を行い、彼の再選に掛ける期待が消えていたためだと思われる。

 バイデン候補の当選もまた、北朝鮮の立場からは不確実性が高まった状況であり、今後、消極的に対応する方向に重心が移っている。

 バイデン候補は選挙前に行われた最後のテレビ討論で、金正恩委員長を「暴力の輩」と呼び、遊説先の演説でも現政権の北朝鮮政策を変えるという意志を明らかにしていた。各能力の減少のような前提条件が満たされてこそ、金委員長と会うことができるとし、慎重な対北政策を予告している。

 北朝鮮はバイデン候補の「暴力の輩」発言にもこれといった立場を示していないが、いったんは状況を慎重に見ているものと思われる。うかつな対応を行うことはないとの見方だ。

 一部では、新政権の発足に合わせて、北朝鮮が核実験やミサイル発射を行い、不確実性を高めている米国の対北政策を牽制するないかとの見方も出ている。トランプ大統領の初年度である2017年にも、北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)などを発射し、軍事的挑発を行っている。

 しかし、今年年末までは金委員長が指示した「80日戦闘」という課題があり、余力はないことに加え、トランプ大統領が選挙結果を認めないことによる米政治状況を見極める必要がある。そのため、当面は何ら行動に出ないだろうとの見方が強い。併せて、2021年1月に第8回党大会を開催する予定であり、新たな国家経済5カ年計画を発表すると予告しているだけに、年末までは国内課題に没頭するものと思われる。

 金委員長は2020年10月10日の閲兵式で、「われわれの抑止力は絶対濫用されたり、先制的に使われることはない」と述べた。労働新聞もこの日、自国の最新兵器は「自衛的正当防衛手段」と言及している。
(ニュース1、2020年11月8日)


 


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