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「最近の北朝鮮市場の物価及び為替レートの動向」

ニュースリリース|トピックス| 2020年07月25日(土)

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「最近の北朝鮮市場の物価及び為替レートの動向」
統一研究院北韓研究室研究委員
チェ・ジヨン
(2020年7月10日)

【要約】
 2020年上半期、北朝鮮の物価変動制は前年と比べ拡大している。これは以下の二つの要因で説明できる。まず、新型コロナウイルスの拡散を憂慮し、対内外的な影響によるものだ。対外的には、出入国の管理が強化され、中朝貿易が急速に減少して中国から輸入してきた消費財の供給が縮小したこと。また、対内的には心理的不安による買い占めによって需要が増加し、インフレ期待審理が拡大したことが影響を与えたと推定できる。
 次に、北朝鮮当局が政策を変化させた可能性だ。最近のメディアによる報道を通じて言及されている公債の発行や輸入許可権の外貨販売、輸入品目の制限のよな政策の変化が市場の物価と為替レートに影響を与えた蓋然性がある。ただ、2~4月中の変動性が拡大下市場の物価と為替レートは、5~6月には安定した動きを見せるようになり、経済的な不確実性が継続して増幅していると見るのは難しい。
 問題は、北朝鮮経済の与件が下半期以降にも楽観的ではないということにある。食糧不足であり、低所得国歌である北朝鮮が、対北制裁下で新型コロナという世界的な衝撃を遮断することには限界があると思われる。

【3.今後の展望】
 2020年上半期の北朝鮮経済は、対北制裁の長期化による影響と新型コロナという一時的な衝撃が重複し、厳しい状況に直面した。北朝鮮市場の物価と為替レート指標は二元化した北朝鮮経済の一方の側面だけを主に示しているが、これらの指標の変動制が拡大したことは、中朝貿易の急減とともに、北朝鮮経済の与件が悪化したことを示している。ただ、5~6月以降には市場の物価、為替レートが安定した動きに転換しているため、市場の不安が2000年代に観察されていた水準で増幅されたと評価するのは難しい。市場指標の不安定性が持続的に拡大していないことは、北朝鮮当局が介入した結果である可能性もある。すなわち、市場取引「限度価格」を設定するといった方式で介入したり、配給量を調整することでも市場価格を安定させるということだ。

 問題は、北朝鮮経済の状況が今年下半期でも依然として楽観的ではないということにある。まず、上半期の生産活動が萎縮したことによる影響が、下半期にも続く可能性がある。上半期には新型コロナの拡散を心配し、北朝鮮愛でもソーシャルディスタンスといった貿易活動が強化されたが、これにより生産活動全般が停滞したのではないかと推定できる。特に、肥料など農業増産材が適切に投入されなかった場合、これは食糧生産量の減少を招きうる。穀物の商業的輸入や対外援助で充足できない場合、来年も食糧価格が急騰することがあるだろう。次に、他国と同様に、新型コロナの状況が長期化するかどうかも、北朝鮮経済に影響を与えうる。北朝鮮が1月末に国境封鎖に準じた水準で出入国管理を強化したことは、北朝鮮の劣悪な保健医療状況が反映された措置である可能性がある。このような感度が高い対応が継続されれば、産業全般に与える否定的影響は大きくならざるを得ない。さらに、最近の報道で言及された北朝鮮当局の政策変化が事実であれば、これは北朝鮮当局の保有する外貨が不足していることを反映されたものであり、新型コロナの状況が改善されても輸入の減少が続くなど対北制裁の長期化による影響がはっきりとしてくることがある。

 今後、北朝鮮の市場の物価が急騰すれば、これによる否定的な衝撃は主に経済活動を市場に依存している北朝鮮の家計に集中するだろう。われわれが観察している北朝鮮の市場物価の大部分が食料品価格であることを考えると、市場物価の急騰は北朝鮮の食糧事情の悪化というシグナルでもある。世界食糧計画(WFP)が発表した最近の報告書は、新型コロナによる供給方法の中断が食糧安保の危機へ拡大する可能性を示しており、食糧価格と市場の動向を綿密に注視する必要性を提示している。この報告書は、食糧安保指数の経済的側面と、一次産品の輸出依存度などを結合させ、新型コロナによる食糧安保危機に面した国家を選定しているが、計49カ国に北朝鮮が含まれている。対北制裁が強化されて以降、北朝鮮は中国からの食糧・農業増産材の導入を大幅に増やすなど、制裁の否定的影響が拡散しないように注力してきた。しかし、食糧不足国家であり低所得国家である北朝鮮が、新型コロナという世界的な衝撃を遮断することは簡単ではないと思われる。北朝鮮の人道主義的危機状況は、他の国と比べて知ることが簡単ではない。人道的支援もまた、国連安保理の対北制裁委員会の免除手続きを一つ一つ経なければならないという難しさもある。北朝鮮の特殊な状況を考え、対北人道的支援を急ぐべきだろう。
 


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