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新型コロナウイルスで変化する世界と北朝鮮が受ける影響

ニュースリリース|トピックス| 2020年04月12日(日)

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 アンドレイ・ランコフ韓国国民大学教授

 現在、世界は新型コロナウイルスの拡散で前例のない危機に陥っています。客観的に言えば、新型コロナウイルスはインフルエンザよりも少し危険ですが、世界の伝染病の歴史を考えると、それほど危険なものではないと言えます。しかし今日、人類は100年や300年前にそれほど問題だとは考えていなかった、1%の死亡率を受け止めることができずにいます。そのため、ほとんどすべての国がとても厳格な防疫措置をとっています。

 この防疫措置は、人々の生命を救うために物質的な成功を犠牲にしなければならない政策です。この防疫政策は世界経済に大きな打撃を与えるのは確実であるためです。つまり、今年末の世界経済は、新型コロナウイルスにより深刻な経済危機に陥ることがほぼ確実視されています。

 世界経済の専門家は、今回の危機がどの程度深刻なものになるか、またどれほどの時間が収束までに時間がかかるか予測するのも難しいと言っています。しかし、この危機が北朝鮮にはどのような影響を与えるかを、私はある程度予測することができます。

 短期的に見ると、北朝鮮政権の立場から見れば、悪い話ではありません。世界各国の政府は新型コロナウイルスの拡散を防ぎ、これによる経済危機の克服に集中しています。そのため、北朝鮮に対して追加的な圧力をかける余裕がありません。もちろん、現在の対北制裁が緩和される希望はありませんが、より強化される可能性もないように思えます。少なくとも、今年年末まで、米国をはじめとした国際社会の主流は、北朝鮮という国に対して、また北朝鮮の核に対して注意を払うことはないようです。

 長期的に見れば、より複雑であり予測は不可能な要素もあります。これまでの経済危機と同様に、今回も石炭をはじめとする地下資源の価格が大きく下落するでしょう。そのため、経済危機の時に資源の輸出で生き残りをはかる国は、ほかの国よりも厳しい状況になります。したがって、もし対北制裁が緩和され、北朝鮮が貿易を再び行えるようになっても、貿易条件はかつてより厳しくなるでしょう。北朝鮮の主要輸出品目は地下資源であるためです。

 また、北朝鮮は労働者の派遣を通じてカネを稼いでいます。もちろん、対北制裁のために多くの派遣労働者が帰国しなければなりませんでした。それでも、中国などいくつかの国は北朝鮮からの労働力に対する国連制裁を事実上無視しています。とはいえ、今回の事態で中国のような製造業を中心とする国家では、失業率が高まっています。そのため、北朝鮮の労働者の需要も大きく減少するでしょう。

 別の方からみると、今回の新型コロナウイルスの拡散は、民主国家で国家の力が強化されており、民族主義と国家主義の傾向が依然よりも明らかに出ています。もともと多くの国家は、国連や国際機関より、自らの国家利益を優先する傾向がありますが、この傾向は最近になってより強まっています。したがって、国際社会における米中対立のような衝突が再び強まるでしょう。

 北朝鮮の歴史を見ると、北朝鮮の外交官は1960~70年代に旧ソ連と中国が対立していたときから、国際社会の対立と衝突を巧妙に利用してきました。今回もこのような機会が生まれるかもしれません。しかし、北朝鮮のようなあまりにも脆弱な国にとって、中途半端な外交ゲームは危険が伴う可能性もあります。大失敗に終わることもあるためです。

 いずれにせよ、われわれは新たな時代が幕を開けようとしている状況にいます。もちろん、未来を知ることはできませんが、世界のすべての国が新型コロナウイルスの影響を肌で感じるようになるでしょう。
(RFA、2020年4月9日)
 


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