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【北朝鮮 Live!】北朝鮮「経済制裁強化」でも活況呈す街の正体

ニュースリリース|北朝鮮 Live!| 2016年09月15日(木)

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東洋経済オンライン2016年9月12日
http://toyokeizai.net/articles/-/135625

 9月9日に5回目の核実験を行った北朝鮮。今年1月に実施した核実験後、米国や日本、韓国は北朝鮮に対する経済制裁を強化した。今回の実験に対しても、国連安全保障理事会が追加制裁を行う動きが活発化している。

北朝鮮が2006年に初めての核実験を実施して以降、国連を中心に北朝鮮に対する経済制裁は続いてきた。一方で、北朝鮮は1990年代後半のような餓死者が出るほどの経済難からは脱却し、特に2012年に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長政権が本格化して以降、緩やかな経済成長を見せている。

「隠遁の王国」と言われ、かつ経済制裁で対外関係が狭まる北朝鮮経済の現状を示すうえで、バロメーターの一つとなるのが、今年8月8日から11日まで北朝鮮北部の国境の街・羅先(ラソン)市で開催された第6回羅先国際商品展示会だ。今回の核実験前の開催だが、経済制裁が強化されて半年以上、対外経済の最前線の街の状況はどうなのか。

中国企業など海外企業も多く出展

 羅先市は北朝鮮では「特別市」に位置づけられ、また「羅先経済貿易地帯」として北朝鮮の中では国境を接する対外的な窓口としての役割を果たしている。「国際商品展示会」では、中国企業や団体を中心に海外からの参加者が多く、北朝鮮を代表する経済的な対外イベントのひとつとしてよく知られている。

この展示会を主催する羅先展覧社の許明浩(ホ・ミョンホ)社長は、今回の展示会には100あまりの企業や団体が参加、特に中国やロシア、ドイツ、イギリス、イタリアなどから参加していると紹介。展示会では400品目10万点の製品が出品され、電気電子製品や軽工業品、自然エネルギーを利用する関連製品、食料・日用品、医薬品などが注目されているという。

また、「米国主導の経済制裁が厳しくなっているにもかかわらず、前2015年よりも多くの企業・単位が今回の展示会に参加しており、多くの国と地域の企業・政府との関係を結び、製品紹介や科学技術交流、経済貿易活動が活発化してきている」と説明する。

羅先市は昨年、大雨による洪水被害を受け、経済活動にも支障を来しているのではないかとの指摘も多かった。「被害は大きかったが、経済・観光分野でのインフラ施設も復旧・新設された。災い転じて福と成す、だ」と、羅先市人民委員会経済協調局の魯英男(ロ・ヨンナム)局長は言う。

北朝鮮経済に詳しい環日本海経済研究所(新潟市)調査研究部主任研究委員の三村光弘氏は、展示会開催中に現地を訪れた。三村氏によれば、展示会への参加企業は85社ぐらいで、中国企業が最も多かったと証言する。この数年、この展示会を毎回訪れている三村氏は「100社から減ったように感じたのは、中国政府がこれまでのように積極的に旗を振って、中国国内企業に展示会への参加を促すことがなくなったためではないか」と指摘する。

中国政府の意向で地方政府が参加に消極的

これまで、北朝鮮と国境を接する中国・延辺地域や遼寧省、吉林省などの地方政府は、域内企業に対し展示会への参加を呼びかけていた。これが、経済制裁に中央政府が同調して今年になって制裁強化の姿勢を打ち出したため、地方政府もこの意向を忖度せざるをえない。そのため、地方政府はこれまでのように各企業に参加を促すことに消極的になったためでないか、という説明だ。

展示会自体は、「商品即売会の性格が強い」(三村氏)。前出の許明浩社長が言うように、洗剤・せっけんや台所用品などの日用品が出品され、羅先市民は喜んで購入していたと三村氏は紹介する。羅先市内も、中国からの資本で18階建てといった高層マンションが以前よりは増え、高層建築物の工事現場も前年よりは増えていたと言う。

また、電気事情も以前よりは改善され、ほぼ24時間、停電もなく通じていたようだ。ただ、「電圧が安定していないところもあり、エアコンなどの家電でもより強力な電圧を必要とするものはきちんと稼働していないこともあった」と、三村氏は羅先市の状況について述べた。



  • 羅先国際商品展示会の開会式

  • 展覧会内の様子

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