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「韓国独自の核武装は頭越しの米朝関係改善を招く」

ニュースリリース|トピックス| 2024年05月07日(火)

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 韓国国民の大多数が核武装を支持していますが、それとは異なり、韓国の専門家の多くは否定的だという調査結果が最近発表され、注目を集めています。

 今回の調査を実施したアメリカのシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ副所長兼韓国部長は2024年5月2日、VOAとのインタビューで、専門家は米韓同盟が抑止面で効果が高いと評価しているためだと説明しました。

 チャ氏はアメリカの立場では、朝鮮半島での核使用に関する意思決定を韓国をうまく取り込むことが重要だと述べ、国際経済における韓国の地位と重要性などを考慮すると、核武装はさまざまな面でパラダイムを変えることになると見ています。

 ジョージ・W・ブッシュ政権でホワイトハウス国家安全保障会議のアジア担当局長を務め、6カ国協議のアメリカ側次席代表を務めたチャ氏とインタビューを行いました。

――2024年4月29日にCSISが発表した「韓国の核の選択」というタイトルの報告書では、韓国の核武装について専門家と一般国民との間に相当な見解の違いが存在することがわかります。このような違いが、韓国の政策決定にどのような影響を与えるでしょうか。

 これまで、韓国人が核武装を肯定的に見ているという世論調査が多く、賛成の割合が50%を超え、場合によっては76%に達することもありました。

 しかし、韓国の国際問題や安全保障の専門家らは、核武装について全体的にかなり否定的であることがわかりました。われわれの調査では66%が「韓国が核兵器を持つべきだ」との主張に同意しない、またはわからないと答えました。明らかに国民とのギャップがあります。

 とはいえ、外交政策の観点から見ると、このような違いは珍しいことではありません。政府の外交政策と国民の意見の間にはしばしばギャップがありますが、通常、政府の外交政策と専門家の見解の間にはそれほど大きなギャップはありません。

――報告書は、保守的な傾向を持つ専門家が高い割合で「核武装を好む」と明らかにしましたが、このようなイデオロギー的な分裂が今後、韓国の政策議論に影響を与えるでしょうか。

 今回の調査で核武装に賛成しなかった人々の政治的傾向は多様でした。3分の1は保守、3分の1は中道、3分の1は進歩的な傾向でした。しかし、核武装を支持する人々はほとんど保守的な傾向であることがわかりました。

 今後、核武装は韓国で非常に大きな政治的な問題になるでしょう。核武装支持者のうち革新的な傾向を持つ人は2%に過ぎず、とても少なかった。核武装反対には幅広い超党派的な支持があるのに対し、核武装についてはそうではありませんでした。核武装は世論を二分するほどの政治問題になる可能性があります。

――韓国の政策立案者は、核武装を強く支持する国民と、より慎重な立場を示す専門家との相違をどのように調整すべきでしょうか。

 われわれの調査によれば、専門家たちは「韓国がすぐに核保有国になる必要はない」と考えています。彼らは米韓同盟に自信を持っています。また、韓国の核不拡散国としての位置づけとルールに基づいた世界秩序の支持者としての役割を重要視しています。

 政策立案者たちが核武装に対する国民世論を和らげるためには、核武装が国益に役立たないという声に力を与えるか、あるいは政府が直接、核武装が国益に役立たない理由を説明しなければならないでしょう。

――報告書では、核武装をする場合、専門家らは国際的な制裁や評判の悪化を懸念していると説明しています。世界経済における韓国の役割を考えると、韓国が核武装をする場合、どのような経済的影響があるとお考えですか。

 専門家らは米韓同盟が戦争・紛争抑止の面で効果が高いと評価し、重要視しています。同時に、彼らは韓国が今日のような立場になるまでの50年間の成果に大きな価値を置いていることも示しています。

 北朝鮮のように核不拡散条約(NPT)体制に違反して次々と武器を拡散する道は、韓国が望む道ではないと思います。もしこの道を歩めば、韓国にどのような制裁が加えられるかはわかりません。

 しかし、反対側にいる北朝鮮が制裁によってどのような状況に置かれているかを見ればわかるでしょう。韓国の世界経済への統合度と重要度を考慮すると、韓国の核武装はさまざまな面でパラダイムを変えることになるでしょう。

――地域内での核の緊張を高揚させることなく、韓国が北朝鮮の脅威に対応できる代替的な安全保障策は何でしょうか。

 アメリカの立場では、朝鮮半島での核使用に関する意思決定に韓国をよりよく統合、いわば取り込むことが重要です。

 韓国にはキルチェーン、大量報復、ミサイル防衛という「3軸体制」があります。これらはすべて、北朝鮮にシグナルを送ることができる非常に強力で重要な方法です。

 2023年年8月に行われた米韓首脳会談で共同声明が採択された後、韓米日の合同軍事訓練が拡大されたことも、北朝鮮と中国に明確なシグナルを送りました。北朝鮮がいかなる攻撃を実行しようとするのは、よくない考えだということを伝えるシグナルを送っています。

――アメリカはインドとパキスタンが核保有国になった後、予想より早く制裁を解除し、その後、両国とも重要な地域のパートナーとして浮上しました。韓国にも同様のシナリオが展開される可能性はないのでしょうか。

 インドもパキスタンもNPT体制の加盟国ではないという点で、韓国とは違いがあります。彼らはNPT体制の外で活動していました。韓国は加盟国です。

 韓国が核武装をするためには、北朝鮮のように脱退する必要があるでしょう。条約加盟国はそうする選択肢があります。しかし、そうなれば北朝鮮と同じカテゴリーに入ることになります。

――韓国が核武装し、アメリカがこれを受け入れるというシナリオは存在しないのでしょうか。

 調査結果を見ると、そのシナリオの中で最も可能性が高いのは、アメリカが韓国からデカップリングされる状況です。つまり、アメリカが韓国の安全保障利益を考慮せずに北朝鮮と合意したり、在韓米軍を撤退する状況が起きたときの話です。

 しかし、もし韓国が独自に核能力を備えるようになれば、アメリカは韓国に核の傘を提供する理由はなくなります。そうしてアメリカの核の傘がなくなれば、韓国人の立場ではアメリカに対する信頼問題が発生するでしょう。

 韓国が核武装してアメリカが反対しない状況が来るかもしれませんが、そうなれば米韓同盟の形は今とは違ってくるかもしれません。それは、今のような同盟にはならないと私は思います。

――北朝鮮、ひいては北東アジア域内の安全保障の脅威について、米韓同盟が現在直面している喫緊の懸案は何でしょうか。

 今、私が考える最も大きな課題は、北朝鮮とロシアの関係強化です。ロシアがウクライナ戦争に必要な弾薬を北朝鮮から供給されているため、それは懸念材料です。そのようなつながりを断ち切ることがわれわれの優先事項となるべきです。

 しかし、これに対する当面の解決策はありません。簡単な解決策はありません。中国は北朝鮮とロシアとの協力を好ましく思っていませんが、アメリカと協力して何かをやろうとはしていません。これも非常に残念なことです。

――2024年11月の大統領選挙後、「アメリカ・ファースト」政策が復活する可能性があることを考えると、現在の韓国の非核化の立場は安定的に維持されると思いますか。

 今は安定しているように見えます。しかし調査結果を見ると、「アメリカ・ファースト」政策が復活すれば、非核化陣営にいる多くの人々が心を変えるしかないということがわかります。

 アメリカの核の傘に対する韓国の信頼は無条件でもなく、アメリカへの贈り物でもありません。それは同盟に対する信頼を高めるために米国がどれだけ努力するかによって得られるものです。国内政治や国内政治の変化に影響を受けることもあります。もしトランプ政権が誕生して在韓米軍などについて話していることを実行に移せば、状況はかなり変わる可能性があります。
 


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