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朝中ロ関係の現在を読み解く

ニュースリリース|トピックス| 2024年05月06日(月)

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 歴史的に盧泰愚政権時代の「北方政策」は、韓国の安全保障を増進させ、経済発展に大きく貢献した代表的な外交政策である。

 北方政策は1988年、盧泰愚大統領が南北関係の改善と中国、ソ連など社会主義諸国との関係改善を追求することを宣言した「7.7宣言」から始まった。これを機に、韓国は1990年9月にはソ連、1992年8月には中国と外交関係を結んだ。

 北朝鮮の軍事同盟国である中・ソとの修交により、韓国の安全保障環境は飛躍的に改善され、いわゆる旧ソ連・東欧圏と中国との貿易増大は韓国経済発展の牽引車となった。修交後30年間、対中貿易黒字の総額が同期間の韓国の貿易黒字総額に匹敵するほど、北方協力は韓国経済において重要な位置を占めた。

 しかし伝統的な北方政策は今、尹錫悦政権の強引な価値観外交に押しつぶされ、存在感すら薄れている。

 韓国政府が北方の手を離した間に、北朝鮮と中・ロの関係も変化した。1990年代初頭、北朝鮮は韓国と修交しようとする中ソに、自らがアメリカとの関係を正常化するまで修交を延期してほしいと要請した。しかし、社会主義陣営の崩壊という大転換期を迎え、中ソは北朝鮮の要請を無視して韓国と修交を断行した。

 その後、北朝鮮は極端に悪化した対外環境の中で、外交安全保障面での孤立と経済危機を経験した。ソ連崩壊で誕生したロシアは北朝鮮との同盟条約を破棄し、代わりに新しい友好条約を結んだ。また信頼していた中国は、むしろ核兵器開発を試みる北朝鮮に対する国際社会の経済制裁の中心国となった。一言で言えば、過去30年間、北朝鮮と中ロの関係は破裂音の連続だった。

 しかし、最近になって状況が変わった。2018年から回復し始めた中朝関係は、コロナ禍の影響でしばらく停滞したが、金正恩総書記と習近平国家主席が国交樹立75周年を迎えた2024年を「朝中友好の年」と共同宣言し、政治・経済的に急進展する兆しを見せている。

 より顕著なのは北朝鮮とロシアとの関係であり、ロシア・ウクライナ戦争が意外にも両国に北朝鮮の膨大な在来型備蓄兵器とロシアのエネルギー資源を交換する機会空間を提供した。

 韓国の「国防白書2022」によると、北朝鮮は陸軍兵力だけで110万人余りに達する。このような超大型兵力規模は、北朝鮮が有事の際に備えて大量の通常兵器を備蓄していることを示唆している。戦争が長期化し、通常兵器不足に苦しんでいたロシアにとって、渇水のようなニュースだ。

 北朝鮮は旧ソ連の支援下で建設された軍需工場もかなり多く保有しており、生産調達も可能だ。北朝鮮がロシアから代わりに受け取る核心品目は、国連の対北朝鮮制裁により輸入経路が遮断され、これまで北朝鮮経済の息の根を止めていた石油・ガス・コークスなどのエネルギー資源だ。

 2023年9月、金正恩とプーチンは首脳会談を行い、両国関係の全般的な発展を期待し、お互いに必要なものを交換することで合意した。北朝鮮はロシアとの軍事協力を強化することで、先端軍事技術支援もある程度受けることができるようになった。

 北朝鮮の指導部は朝ロ首脳会談をきっかけに、制裁で閉塞していた北朝鮮経済発展の戦略的出口が開けたと判断しているようだ。ロシアも見事に2024年3月、常任理事国として国連安保理の対北朝鮮制裁委員会専門家パネルの任期延長に対して拒否権を行使し、その任務を終了させた。

一方、北朝鮮とロシアの関係が緊密になると、中国がこれを牽制すると考える人が多いが、それはすでに長らく消滅した中ソ紛争時代の古い通念だ。

 今日の中ロ関係は、両国が合同軍事訓練を行うほど緊密な関係に発展している。ここに北朝鮮をめぐる過去のような利益相反の可能性はあまりない。

 ただ、中国は米中対立の中で破局を望まないため、北朝鮮関係においてロシアとは異なり、アメリカへの警戒心を誘発したり非難されるような行動を躊躇する。このような文脈で、北中ロ三角関係の発展にも慎重である。

 その代わり、中国は中朝、朝ロの2国間関係の発展を好む。 したがって、ロシアが対北朝鮮制裁を突破し、アメリカが敏感になっているエネルギー資源を北朝鮮に提供すれば、中国としてはこの方面で北朝鮮からの圧力が少なくなるため、むしろ内心は歓迎するだろう。

 このように、朝中ロはは再び団結し、この過程で北朝鮮は思わぬ機会を活用し、韓米と絶縁された生存戦略構造を構築している。北朝鮮に対する最強の圧力と対立も、もはや通用せず、中ロに対する価値外交は韓国経済の困難と安保不安だけを深めた。

 韓国政府が本当に国益を考えるなら、手遅れになる前に北方に広く開かれた開放型多国間協力を復元しなければならない。

李鍾奭・元韓国統一相
京郷新聞 2024年4月23日
https://www.khan.co.kr/opinion/column/article/202404232034015


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