ニュースリリース| 2016年05月22日(日)
鄭昌鉉の「これからの北朝鮮を読み解く」は、2016年1月5日から、韓国の北朝鮮ニュース専門サイト『統一ニュース』で連載されているものです。
内部革新と国際的孤立からの脱却
2016年元日に金正恩第1書記が4年連続で肉声による新年の辞を発表した。特に16年は、15年の各分野における成果に言及し、金第1書記の姿に替わって、それら成果を示す映像を編集して放映した。視覚的により強烈に、成果を大衆へ伝えようとする新たな試みだった。
金第1書記は新年の辞において、経済発展と人民生活の向上において新たな転換を起こすため、経済強国建設に総力を傾けるという意志を示した。また、昨年とは違い、経済分野の課業を政治、軍事分野よりも先に提示した。
2016年のスローガンも「朝鮮労働党第7回大会が開かれる今年(16年)、強盛国家建設の最全盛期を切り開こう」と定めた。5月初旬と予告されている労働党第7回大会開催を前に、経済分野において優先的に成果を出すという構想だ。
2016年の新年の辞は、全般的に金正恩体制初年となる12年4月6日の「労働党中央委員会責任幹部らとの談話」と、4月15日に公開の場で初めて行った大衆演説で示された金第1書記の構想と路線がきちんと反映されているように思われる。
内容を見ると、新たな政策の提示はないと専門家は口をそろえる。しかし、金正恩時代の北朝鮮における全般的な路線と2015年1年間の流れを考えたうえで16年の新年の辞を具体的に解読してみると、北朝鮮の政策の方向性と悩みを知ることができる。
今年の新年の辞のキーワードは「人民重視、人民尊重、人民愛の政治」
2016年の新年の辞において最もはっきりとした特徴は、政治・思想分野において金正恩体制となって以降、継続的に強調されてきた労働党の唯一的領導体系と 唯一的営軍体系の確立について言及されていないことだ。その代わり、「人民重視、人民尊重、人民愛の政治」が主な内容となっていることだ。
「党の唯一的領導体系」が一度も言及されていないことは、とても異例なことだ。それだけ、党、政、軍に対する金第1書記の唯一的領導体系がしっかりと根付いて安定化の段階に入ったと、北朝鮮自らが判断を下したものと思われる。
このような判断によって、2016年の新年の辞では「一心団結は主体革命の大本であり、必勝の武器」と述べ、政治、思想分野の最も重要な課題として「一心団結」を提示した。北朝鮮はこれまで、国家目標である「社会主義強盛国家」建設を達成するためには、政治(思想)強国、軍事強国、経済強国を成し遂げなければならな いと標榜してきた。これを金第1書記は、12年の公開では初めてとなる演説で「一心団結と不敗の軍力に新世紀の産業革命を加えれば、それはまさしく社会主義強盛大国です」と表現した。すなわち、政治(思想)強国の核心を「一心団結」として規定したことになる。
2015年10月10日、党創建70周年を記念する閲兵式での演説で、金第1書記はおよそ90回も「人民」に言及し、「人民第一主義」を強調した。「人 民重視、軍隊重視、青年重視」という3大戦略を提示した。そして、16年の新年の辞では「人民重視、人民尊重、人民愛の政治」を具現しなければならないと し、「金正恩式愛民政治」を定式化した。
これに先立ち、金第1書記は2013年1月に開催された第4回党細胞書記大会で「金日成・金正日主義は本質において人民大衆第一主義」と定式化している。それ以降、北朝鮮では「人民大衆第一主義」という用語が頻繁に使われている。
金第1書記は2013年の新年の辞で、「すべてのことを人民のために、すべてのことを人民大衆のために!」というスローガンを提示し、14年の新年の辞 では「幹部のために人民がいるのではなく、人民のために幹部がいる」と述べ、「人民大衆第一主義」について説明している。
2015年の新年の辞でも、「党事業全般を人民大衆第一主義で一貫させ、全党で人民を尊重し、人民を愛し、人民による気風が行き渡り、党事業の主力が人民生活向上に回るようにすべきです」と述べ、「人民大衆第一主義」という言葉を再度使用している。
2008年の新年共同社説で初めて言及された「人民生活第一主義」という表現が、金正恩時代になって「人民大衆第一主義」という表現で公式化されたことになる。
メディアや北朝鮮専門家の常套句ではあるが、住民らの志向と意識の変化を受け入れなければ体制の安定性を確保できないという点を、北朝鮮当局も認識し始めたことになる。北朝鮮が2013年に「経済建設と核武力建設の並進路線」を採択し、国防より経済を初めて打ち出したことも、このような認識が反映されたものだ。
一心団結で人民生活の向上と幹部の革新を強調
金正恩時代の北朝鮮は、「一心団結」が人民生活の向上と幹部の事業方式での革新にある、と考えているようだ。金第1書記は2012年4月の初の公開演説 で「わが人民が再びベルトを締め上げることなく、社会主義富貴栄華を心から享受できるようにすることが、わが党の確固たる決心」と述べ、16年の新年の辞では「人民生活の問題をあまたの国事の中の第一国事としています」とまで表現した。
ただ、人民生活の向上が短期間に成し遂げられる課題ではないため、今後の北朝鮮はこれを継続して強調していくものと思われる。
これを反映したかのように、2016年の新年の辞では「経済強国建設おいて転換の突破口」を開こうとしながらも、提示した各分野の目標を見ても目新しいものはな く、金正恩時代になって北朝鮮がこれまでも強調してきた政策方向だけが提示された。電力、石炭、金属工業、鉄道運輸など四大先行部門を強調し、農産、畜産、水産部門の革新、世界的な競争力を持つ名製品とその生産、重要生産施設、住居建設などだ。
目を引く新たな言葉としては、「自彊力第一主義」だろう。金第1書記は「社会主義強盛国家建設において自彊力第一主義を高く掲げるべき」と 述べ、「強盛国家建設の大業と人民の美しい夢と理想をかならずわれわれの力、われわれの技術、われわれの資源で成し遂げるべき」と強調している。
2015年の新年の辞で「すべての工場、企業所が輸入病をなくし、原料、資材、設備の国産化を実現するための闘争を力強く行おう」と訴えたが、これからさらに一歩進め、「自彊力第一主義」という概念を取り上げたことになる。
しかし、中身がなく新たな政策もないように見える今年の新年の辞において、経済分野ではかえって経済政策の連続性に焦点を当てたとの分析も可能だ。細か く見ると目標に未達な分野もあるが、大枠ではこの数年間の政策基調を維持しても大きな問題はないと判断したということだ。
特にこの数年間、農業と水産業、軽工業、観光分野の目を見張るような成長と物価安定などは注目すべきだ。北朝鮮は少なくとも、食べる問題は「食糧生産600万トン」を達成し、3年以内に解決できると予測しているようだ。
かえって、北朝鮮の関心は穀類生産よりは、野菜や畜産、キノコ栽培、養殖業などに移った。食糧と肥料輸入が継続して減少していることは、このような側面 から注目される。食糧と肥料の輸入が減少し、食の問題がより深刻化する状況ではなく、解決に向かって進んでいるため、食糧と肥料の輸入が減少しているとい うことだ。
専門家の中には、北朝鮮が経済管理分野の「われわれ(朝鮮)式経済管理方法」の全面的な確立を指摘して、具体的な方法はまだ提示されていない、と評価している。しか し、金第1書記は2014年、いわゆる「5.30労作」を通じて「われわれ式経済管理方法」の革新的な概念として「社会主義企業責任管理制」を提示しており、 これによって協同農場に圃田担当責任制が導入され、工場や企業所に責任経営制が定着している。
そのような側面から、「われわれ式経済管理方法」の全面的確立は、具体的に圃田担当責任制と責任経営制の全面実施を意味すると考えられる。特に北朝鮮は外部から「改革・開放的措置」と評価される政策や措置などを公式文書で言及することを避けている。
また北朝鮮は、「一心団結」の強化のために、党運営の革新と幹部らの姿勢変化を促している。2016年の新年の辞では、一心団結を強化するため党組織が「民心をとらえて広範な大衆を党の周りに固く結束させ、幹部間で一心団結を蝕み、破壊する権柄と官僚主義、不正腐敗行為に反対する闘争を力強く」行うことを提示 した。一心団結のためには、住民生活の向上とともに、凝り固まった幹部らの官僚主義と不正腐敗をなくすべきだと強調している。
金第1書記は2013年1月の第4回党細胞書記大会の演説で、権柄と官僚主義を協力に批判し、同年12月に張成沢粛清によって勢道(一部の権力者層)と官僚主義の剔抉に対 し強い意志を鮮明にした。その後の北朝鮮では、不正腐敗を剔抉するための大々的な検閲がなされ、16年もそれが続くものと思われる。
官僚主義と不正腐敗は、北朝鮮だけの問題ではないだろう。ただ、北朝鮮の場合、深刻な経済難と非正常的な党の運営によって、この問題が深刻なレベルにま で来ているものと推定できる。2014年4月に発刊された朝鮮労働党政治理論誌『勤労者』には、党内で生じている多様な弊害が赤裸々に提示されている。
「条件を言い訳にしながら鳴き声だけ上げ、党政策をうわべだけ覚える敗北主義的現象、事務室に座って電話だけし、党政策の貫徹に身を投げ出さない形式主 義的な仕事ぶり、事業を大胆に展開できず、与えられた仕事は適当に行う要領主義的現象など机上主義者、やくざがやるような事業方法では、党の路線と政策を 徹底して貫徹されえない」
2014年5月、平壌・平川区域で建設中だったマンションが崩壊した事故は「手抜き工事と幹部らの監督不十分」によって起きたと発表されたが、根本的に 「物資の横流し」など不正腐敗が原因だった。北朝鮮が「恐怖政治」という外部の評価を受けながらも、「不正腐敗との闘争」を強調せざるをえない理由だ。
平和協定締結、8.25南北合意の履行を提示
金第1書記は対外関係において、「経済・核併進路線」や核に関する言及しないまま、米国に平和協定の締結を要求し、南側には6.15共同宣言、10.4宣言の尊重と履行、15年の8.25合意を履行するための対話への雰囲気作りを促した。
いったん、核に関連する言及をしなかったことは、中国と米国を意識したものと思われる。中国、ロシアとは積極的な関係改善及び経済協力の拡大を行うとい うものであり、米国に向けては平和協定のための議論を受け入れるよう促した。特に金第1書記の訪中時期、国連の潘基文事務総長を招くかどうか注目される。
まず、南北関係について金第1書記は、最高位級会談に触れた2015年とは違い、朴槿恵政権の対北国際協調への努力を強く批判した。朴槿恵政権の「平和統一論」が吸収統一論に基づいているとし、警戒を露わにした。
金第1書記は「南側が北南対話と関係改善の流れに逆行し、われわれの体制変化と一方的な制度統一を露骨に追求し、北南間の不信と対決を激化させた」と指摘している。
また北朝鮮は「わが民族を分裂させたことも外部勢力であり、わが祖国の統一を妨げているのも、ほかでもない、米国とその追従勢力だ」と述べ、「外部勢力の排撃」を強調した。北朝鮮は南北対話が行われるたびに米国の意向が作用して進展がないという認識をしているようだ。
代表的な例としては、2015年12月の南北当局者会談直前に、米国が北朝鮮の個人と機関10カ所を制裁対象に追加したことで、南北間の金剛山観光の再開議論を難しくさせたとの認識があるようだ。
北朝鮮の急変事態に備えた統一問題を中国との外交議題としたことについても、不快感を示している。新年の辞は南側当局が「外部勢力と野合し、同族に反対 する謀略粗動に邁進し、わが民族内部の問題、統一問題に外部勢力を引き入れるといった暴挙を行っている。これは外部勢力に民族の運命を任せ、民族の利益を 横取りする売国排族行為」と強力に非難した。
2015年の新年の辞で金第1書記が最高位級会談に言及し「南朝鮮当局は外部勢力とともに行う無謀な軍事演習をはじめとするすべての戦争策動をやめなければな らず、朝鮮半島の緊張を緩和し、平和的な環境を準備する道へと方向を向けるべきです」と述べ、南北関係改善のためには、緊張緩和と平和的な環境づくりが必要だという点を強調したことと比べると、非難のレベルを高めたことになる。
南北当局者会談に対し、北朝鮮が期待するレベルが大きく低下したことがわかる。実際に、北朝鮮は2014年に「重大提案」「特別提案」、黄炳瑞総政治局長 など側近3人の仁川訪問などを行って南北対話に突破口を開こうとし、15年の新年の辞には「北南間の対話と交渉、交流と接触を活発にし、北南関係における 大転換、大変革をもたらすべき」という点を強調したが、これといった成果を得ることはできなかった。
南側が要求した離散家族再会は実現したが、それ以降の議論で予想された金剛山観光の再開については議論さえできなかったことは、北朝鮮内部では相当な議論があったという話だ。
特に金第1書記が新年の辞で南北関係の改善のための方向と基準を提示し、北朝鮮が南北対話に柔軟性を持つには難しい側面もある。金第1書記は「南朝鮮当局が本当に北南関係改善と平和統一を望むのであれば、つまらぬ体制対決を追求するのはではなく、民族の総意が集大成され、実践を通じてその正当性が確証さ れた祖国統一三大原則と6.15共同宣言、10.4宣言を尊重し、誠実に履行していこうとする意志を見せるべきだ。南朝鮮当局は2015年、北南高位級緊急接触 の合意精神を貴重なものと考え、それに逆行したり対話雰囲気を害する行為をしてはいけない」と述べた。6.15、10.4共同宣言の尊重と履行への意志が 見え、8.25合意に害する行為をしてはいけないということだ。
このような点を考えると、北朝鮮がまず中断された当局者会談を提案する可能性は高くない。ただ、金第1書記は2012年の初の公開演説で言及した内容と 同じく、「われわれは北南対話と関係改善のため、今後も積極的に努力するものであり、本当に民族の和解と団結、平和と統一を望む者であれば、誰とでも会 い、民族問題、統一問題を虚心坦懐に論議する」ことを再確認し、対話への扉は開かれたままだ。
北朝鮮は今年の新年の辞で、「内外反統一勢力の朝鮮を排除し、自主統一の新時代を切り開こう!」というスローガンを提示した。韓米日国際協調を牽制し、 多方面の南北交流を推進するという表現として聞こえる。当局会談が厳しければ、8.25合意の第6項に明記された「多様な分野での民間交流活性化」をまず 推進し、当局会談の雰囲気づくりを行うということだ。
韓国・統一省当局者は「南北対話の門を開いておき、平和統一の朝鮮半島時代に向かって進むという政府の立場はかわっていない」と明らかにしている。
南と北ともに対話の門を開いているが、どちらがまず対話を提案し、どのような議題について話し合い合意を引き出せるかについては同床異夢だ。
2016年の新年の辞では、対外関係についてほとんど言及されていない。そのぶん、北朝鮮の対外環境が流動的であることがわかる。ただ、米国が停戦協定を平和協定に替え、平和的な環境作りをしようという提案を受け入れていないことについて批判した。
2015年の北朝鮮は、経済建設のための平和的な対外環境づくりを行っている。北朝鮮は米国、中国の立場を考慮し、南北対話の道筋をつくらないまま、8.25合意以降、米国に向かって平和協定締結を繰り返し提案している。
北朝鮮はこれまで成果が得られない最も重要な原因が「米国の対朝鮮敵対視政策」にあり、その基本表現は「大規模合同軍事演習の強行と核打撃手段の南朝鮮 への搬入など、軍事的挑発行為」とし、「平和協定が締結され、すべての問題の発生原因である米国の敵対視政策の収束が確認されれば、米国が憂慮する事項を含むすべての問題が妥結しうる」(外務省報道官談話、2015年10月17日)と主張している。
これに対し、米国のソン・キム対北朝鮮政策特別代表は「われわれが平和体制(peace regime)や平和条約(peace treaty)に関心がないわけではない。停戦体制に代替する平和体制へ進むならば、その前に非核化の重要問題において重要な進展があるべきだ」という立 場で応えている。
すると北朝鮮は、外務省報道官談話(2015年12月2日)として「米国は停戦協定を平和協定に転換する前にまず非核化において重要な進展がなされるべ きという点に固執し、非核化と6者協議の再開で騒いでいる。平和協定締結に関する問題と非核化問題を一緒に考えると、どの一つも解決できないことは実践に よってはっきりと証明された真理」と反発している。
このような米朝間の攻防、すなわち米国の先非核化、北朝鮮の先平和協定議論で接点を探すのは簡単ではない。ただ、非核化と平和協定に関する議論を同時に行う可能性はまだ残されている。
2015年12月16日、米大統領府のアジア担当補佐官であるダニエル・クライトンブリンク氏は9.19共同声明と多数の国連安保理決議による義務である非核化を完全に履行するという約束を見せ、非核化の道を歩むのであれば、すべてが可能だと述べ、北朝鮮が非核化履行を確約することを前提に北朝鮮が要求する自公を包括的に議論するという立場を示した。これまでの米国政府が非核化問題において「重要な進展」があるべきだという立場を堅持し、議論の可能性事態を一 蹴してきたことを考えると注目できる発言だ。
オバマ政権の高位当局者も、オバマ政権の任期中(2017年1月まで)に北朝鮮の核問題において突破口を探す可能性について、「絶対に(北朝鮮の核問題解決のための努力を)放棄しないだろう。単純に希望ではなく、われわれは平壌の選択肢を狭めるための広範囲な措置を執っている」と明らかにしている。
これらの発言は、8.25合意以降出てきた北朝鮮の平和協定提案と関連し、米朝間で水面下の接触が行われている可能性を示唆するものであり、米朝間に 「選択的対話」のための力比べが進められていることを示している。依然として主要な争点は、朝鮮半島の非核化と平和協定締結をどのように不可逆的に、同時に進めることができるかという問題だ。
しかし、韓米日軍事協力が確立され、韓米日強力というレベルにおいて対北制裁と圧力を強化する場合、北朝鮮の強い反発が予想される。こうなると、朝鮮半島は再び軍事的緊張が高まることもありうる。
全般的に、2016年に米朝対話と南北関係が急進展する可能性は、構造的に高くはない。南と北、米国のうちどの当事者も主導的に相手が受け入れることが できる代案を出すことは簡単ではない状況にあるためだ。朝鮮半島情勢を動かすキーは、南と北、米国が握っている。中国は仲裁者の役割はできるが、独自的に 情勢を動かす立場にはない。
朴槿恵政権は「統一はチャンス論」と統一準備、原則のある対北政策を打ち出しているが、支持層である保守層向け、あるいは国内向けに活用しているだけで あり、内心は北朝鮮の急変事態や北朝鮮の屈服を想定しているようだ。4月の総選挙が終わるまでは、南北対話に積極的な姿勢を見せる可能性は低い。
オバマ政権もこれまで「戦略的忍耐」を基調に、外部の影響による北朝鮮の変化、あるいは政権崩壊などを通じて、北朝鮮が非核化を受け入れる状況を想定している。
一方、北朝鮮は国際的孤立から抜け出すため、全方位的に外交攻勢に出るものと思われる。北朝鮮は2013年2月の核実験以降、対北制裁が強化されると、「国際的孤立からの脱却」と核心課題と設定したが、張成沢事件が発生し、この事件収集に注力せざるを得なかった。
2015年には首脳外交を模索したが、国内外の状況がそれに合わず、実行へと向かうことができなかった。16年は党大会開催があり、経済建設のための対外環境づくりを考えると、首脳外交に向かう可能性がいつにもまして高まっている。
このような側面を考えると、2016年の朝鮮半島情勢は、米朝間の力比べの結果次第となるだろう。労働党第7回大会開催後の16年8月以降が分水嶺になりそうだ。
朴槿恵政権が南北関係を国内政治に活用するカードとして使うか、南北鉄道連結事業を推進することで経済的実利を選択するかも、米朝関係の状況に影響を与えるほかない。
2015年の8.25合意を引き出した大統領府国家安保室長の金寛鎮氏と黄炳瑞総政治局長のラインが稼働された「南北2プラス2会談」を再び開き、離散家族再 会事業の定例化、金剛山観光の再開合意、南北鉄道・道路・連結などに包括的に合意を引き出すこと以外には、他の突破口がないように思われる。
北朝鮮も5月の党大会を前にしており、突発的な変数させなければ、米国との対話、中朝関係の回復などに重点を置きながら南北交流も進むものと予想される。
全般的に見ると、2016年上半期までは「対和局面」が維持されうるが、その期間中、安定的な対話を行うことができなければ、下半期には再び小康状態あるいは緊張局面に変化するだろう。