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【北朝鮮 Live!】平壌の商品見本市にみる北朝鮮経済の現実

ニュースリリース|北朝鮮 Live!| 2016年06月05日(日)

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東洋経済オンライン2016年6月3日
 http://toyokeizai.net/articles/-/120986


 米国を中心とした経済制裁を受けている北朝鮮。2016年1月の核実験、2月のミサイル発射でさらなる経済制裁が科されたが、北朝鮮の対外経済関係はどうなのか。それを推し量る経済イベントが5月、北朝鮮の首都・平壌で開催された。

5月23日から26日の4日間にわたって開催された、平壌春季国際商品展覧会がそれだ。これは文字通り、北朝鮮の国内外から企業が参加する、北朝鮮を代表する経済イベントでもある。例年、5月と9月に開催され、春季は今年で19回目となる。

国内外から200社超が参加する国家的イベント

 実際の参加状況はどうなのか。このイベントを取り仕切る北朝鮮・対外経済省国際展覧社の金一革(キム・イルヒョク)部員は、「海外からはドイツやニュージーランド、ロシア、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、中国、ベトナム、台湾などから220社あまりが参加した」と説明する。春、秋季ともに参加企業は増加傾向であり、この2、3年は200社以上の企業が北朝鮮国内外から参加している。

参加企業には自動車や商用車、産業用機器、家電、日用品、化粧品、薬品など多種多様な企業が参加。しかも、商品を一般にも販売しており、外貨・内貨(北朝鮮ウォン)を手にした市民たちが商品を買い求めようと、会場は連日大勢の人でにぎわっている。
この展覧会は、当初は海外企業からの参加社数が多かったが、金正恩政権になった2012年以降は北朝鮮企業の参加が顕著に増えてきた。

 そんな北朝鮮企業の一つ、勝利(スンリ)自動車連合企業所はトラックなど商用車メーカーだ。「わが車が製造する自動車は性能がよく、燃費も他のメーカーと比べてはるかによい。設計から技術、生産工程に至る全過程を100%、われわれのやり方で行っている」と、同社自動車組立職場の韓孝善(ハン・ヒョソン)職場長は胸を張る。

勝利自動車連合企業所の主力の一つは、5トントラックだと韓職場長は言う。また、経済制裁の影響は受けているかとの質問には、「帝国主義者の悪らつな制裁に、わが社の生産にも支障を来した」と打ち明ける。だが、「(北朝鮮内の研究所である)国家科学院や金策工業総合大学、平壌機械総合大学などの教員や研究員と、わが社の工程技術士、従業員などが総力を挙げて100%、自分たちの設計と技術者で製造できるに至った」と説明する。

5月6~9日に36年ぶりに開催された朝鮮労働党第7回大会で、金正恩・党委員長から「国家経済発展5カ年戦略(2016~20年)」が出された。そのためか、韓職場長は「現在より2倍の積載量を持つトラックをできるだけ早く製造できる体制を整え、5カ年戦略期間中に生産を増やしたい」と意欲を見せた。

外国企業も「平壌市民からの反応に手応え」

 海外から参加した企業の反応はどうか。シンガポールの食品会社「エイリンクズマーケティング」(Alinkz Marketing)取締役のトゥリシア・コー氏は、「初めて展覧会に参加した。わが社はお菓子やオリーブオイル、缶詰、冷凍食品などを生産・販売しているが、平壌市民からの反応に手応えを感じている。展覧会初日にも多くの食料品を買ってもらえた。シンガポールに帰国してからも、北朝鮮という市場に関心を持ち続ける」と述べた。

 わが社の製品を紹介したいことと、北朝鮮企業との合弁などビジネス展開を考えて初めて参加した」。こう語るのはイラン「シュリンアッサール食品工業グループ」のアミール・フセイン副会長。シュリンアッサールは製菓を中心とする食品メーカーだ。

フセイン副会長は「北朝鮮は貧困に苦しみ、文化も低く、電気もないと聞いていた。実際にそうなのだろうと思っていたが、来てみたらまったくそうではなかった」と笑う。手ごたえを感じているようで、「北朝鮮と活発に貿易を行って、この展覧会にも継続して参加したい」と言う。

対外環境の不透明さで「5カ年戦略」の成否は?

第7回党大会で金正恩・朝鮮労働党委員長は、「経済建設と核武力建設の併進路線」を強調、核保有に対して自信を見せた一方で、経済政策の方向性についての言及も多かった。

大会で発表された「総括報告」では、「対外貿易において信用を守り、(どこかの国への)一辺倒をなくし、加工品の輸出と技術貿易、サービス貿易の比重を高める方向へ貿易構造を改善すべき」「合営・合作を主体的立場で実利があるように組織し、先進技術を受け入れ、国の経済発展を後押しするようにすべき」との発言を行った。また2013年に「経済開発区法」を制定、設置・開発を国内で進めている経済開発区についても、「有利な投資環境と条件を保障し、その運営を活性化すべき」とも述べた。

ただ、上記のような対外経済に関する言及は、2012、13年ごろから現れてきた金党委員長の経済政策・方針からそれほど踏み出したものではない。制裁が続いていることで不透明な環境の中では、新たな、かつより具体的な内容には言及しないまま、既存の方針を再確認しただけ、という指摘もある。

だが、平壌を中心にモノが出回り、それを購入できる市民たちが増えているのは、北朝鮮経済の一つの現実でもある。また、北朝鮮国内の軍事関連企業が徐々にその技術を民生品に応用し生産する「スピンオフ」を始める企業が増えているとの指摘もある。購買力を持った北朝鮮国民が増えるなか、彼らは今後も展覧会などを通じて消費意欲をさらに高めるのは間違いなさそうだ。



  • 平壌春季国際商品展覧会の会場となった三大革命展示館

  • 会場内

  • シンガポールの食品会社のブースに押し寄せる平壌市民

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