ニュースリリース|トピックス| 2023年02月15日(水)
(上から続く)
韓国日報の調査では、アメリカの韓国に対する防衛公約と核武装に対するCCGAの結果と類似したパターンが見られた。今後、アメリカとの関係で同盟を強化すべきとの回答者の74.7%が核兵器を保有すべきと回答した。反面、独自外交をすべきだとの回答者の45.6%が核兵器の保有を支持した。
一方、統一研究院の調査では、CCGAの調査とは違う結果が見られた。この調査では、韓国と北朝鮮で戦争となれば、アメリカが韓国を助けて北朝鮮と戦うかどうかと問い、アメリカが無条件に韓国を助けるだろうとの回答者は32.0%、アメリカの国益になれば韓国を助けるだろうとの回答者は66.4%だった。前者が後者と比べ、アメリカの防衛公約に対する信頼度が高いということになる。アメリカが無条件に韓国を助けるだろうという回答者と、アメリカの国益になると考えた時にだけ助けるとする回答者の核武装支持度は、それぞれ68.4%、69.5%とそれほど瓦に。アメリカの防衛公約に対する信頼のレベルと核武装への意志は有意義とする関係がなくはないことを支持する結果だ。
アメリカの防衛公約に対する信頼度と核武装が同じ関係にあるという世論調査結果の波及力を考えると、具体的な説明が必要だと思われるが、まだ満足できるだけの説明はないと思う。まずサーキン教授は、アメリカの韓国に対する防衛公約に対する信頼が高まれば高まるほど、核武装を支持する割街もまた高まるという結果を「望まない戦争仮説」として説明する。アメリカの韓国に対する防衛意志と防衛能力に対する信頼が高いということは、朝鮮半島でアメリカにより武力衝突が起こる可能性もまた高いということを意味し、米国による戦争に巻き込まれるということを防止するため、すなわち韓国の自主性を高めるために核武装を望むという説明だ。
もう一つ可能な説明は、徐々に高まる北朝鮮の核能力、そして米中対立の激化で、韓国の安保を確保するための中間的な代案を望む国民の心理の現れではないかとの仮説だ。「望まない戦争仮説」は韓国の独自外交、すなわち自主的外交を選好する回答者が核武装への支持度が低い結果を説明できない。韓国が直面する安保的脅威の要因に対し、可能な限り多くの対応策を準備しようとする「多々益善」(多ければ多いほどよいこと)の安保心理の中では、アメリカの拡大抑止と自主的核保有が両立しうる。
どの仮説がより韓国国民の核武装に対する態度をよりよく説明しているかは、現在としては断言できない。一つ確実な点は、二つの仮説ともにアメリカの強力な拡大抑止公約だけでは、韓国国民の核武装支持という考えを簡単に変化させることはできないという点を示唆するものだ。
含意
行動は期待と意志だけでなされるものではない。自主的核開発が招く国内外の波及効果を考えると、核武装に対する現在の期待と意志がどれだけ続くかは未知数だ。核武装に対する期待を中心とする調査の結果だけをみてみると、韓国政府が核兵器開発を実際に推進したとき、国民が核開発を支持する多様な行動を行うだろうとの結論を下すことはできない。従って、核武装への賛成・反対の割合に焦点を合わせることよりは、核武装を支持する国民の心理を理解することが建設的な出発的となるだろう。
戦争を経た分断、北朝鮮の核能力の行動化で、韓国国民の安保に対する敏感さはとても高いレベルで維持されてきた。南北が対峙する状況が産んだ安保に対する不安感が、自主的な核武装をすべきだという認識の出発点ということは明らかだ。とはいえ、現在、韓国国民の核武装への認識には、北朝鮮の核に対する危機感jんだけでなく、先進国の隊列に加わった国家的地位と国際情勢の変化の中で、韓国の安保と反映に対する悩みが横たわっている。短期的、契機中心で核武装世論をみつめる韓国社会の通念とは違う、複雑なものがあるということだ。これを考えると、核武装に関する世論に対する慎重な分析が必要であり、今後もさらなる研究と分析が要求されている。
国民10人のうち7人前後が核武装を支持するという世論調査の結果を、北朝鮮の核に対応するため核武装をすべきだという主張における単純な証拠として活用したり、核武装の心理を国粋主義や民族主義に置き換えて無視することは、数字の裏にある国民の心を無視する結果を招きうる。核武装を望む国民の認識の底に横たわる不安感と悩みなどを把握し、これに対する合理的代案を考える努力がなされるべきだろう。
そのためには、より多くの、より厳格な調査と研究を通じて核武装と関連した国民の心を正確に把握する努力が先行されるべきだろう。本調査で引用した3つの世論調査で設定された質問は違う。統一研究院は「核保有」「核武装」、韓国日報では「核保有」、CCGAは「自主的核兵器の開発」を聞く質問が設定された。韓国国民に核保有・核武装という表現が慣用的に核兵器の所有を持つ、すなわち自主的核兵器開発として認識された可能性が高い。しかし、核保有・核武装という表現が自主的核開発だけでなく、アメリカの戦術核の配置を含む講義の概念で考えられた可能性もまた排除できない。質問の微妙な差が回答の差、分析の差をもたらすため、より明確な質問を使用すべきだろう。
また自主的核武装の実現可能性、核武装の過程で直面しうる国際的制裁に耐えることができるかなど、自主的核武装と関連して提起される多様な現実的問題について、国民の認識とともに考えることが重要だ。とくに拡大抑止に対する信頼度と自主的核武装への意志の間のブラックボックスに対する研究が必要だと思われる。例えば、アメリカの拡大抑止だけでなく、アメリカの拡大抑止の具体的な手段を提示すると、国民の核保有への意志に変化をもたらすこともありえるだろう。
専門家は北朝鮮の挑発が当面継続するという共通の予測を掲げている。北朝鮮の挑発があるたびに、核武装を望む国民は増えるかどうかという議論が一種の通過儀礼になってはいけない。核武装への世論と過去、現在、未来を考慮した慎重なアプローチが必要な時に来ている。
(本文の内容は執筆者の個人的な見解であり、統一研究院の公式見解ではない)
(注)
1) “박정희 1972년 핵개발 착수…1977년 포기했다,” 한겨레, 2011.5.12., <https://www.hani.co.kr/arti/
politics/politics_general/477753.html> (검색일: 2023.1.31.).
2) “한국인 70%가 핵무장 찬성… 여론조사에 깜짝 놀랐다,” 조선일보, 2023.1.21., <https://www.chosu
n.com/international/us/2023/01/21/GB2RI6XSJZFOTB6OQXYP4AKP2M/> (검색일: 2023.1.31.).
3) 한국일보가 한국리서치에 의뢰해 2022.12.12.~12.14. 동안 전국에 거주하는 18세 이상 성인남녀 1,000
명을 대상으로 진행한 전화면접 조사. 자세한 사항은 중앙선거여론조사심의위원회 홈페이지를 참고.
4) 시카고국제문제협의회(CCGA)가 한국리서치에 의뢰해 2021.12.1.~12.3. 동안 전국에 거주하는 18세 이
상 성인남녀 1,500명을 대상으로 진행한 전화면접 조사.
5) “국민 67%, 우리도 '핵폭탄' 필요,” 뉴시스, 2006.10.10., <https://www.chosun.com/site/data/html_d
ir/2006/10/11/2006101160429.html> (검색일: 2023.1.31.).
6) “북한 3차 핵실험과 대북관계에 대한 여론조사,” 한국갤럽, 2013.2.15., <https://panel.gallup.co.kr/C
ontents/GallupReport/%ED%95%9C%EA%B5%AD%EA%B0%A4%EB%9F%BDGallupReport(2013022
0)_%EB%B6%81%ED%95%B5%EA%B3%BC%EB%8C%80%EB%B6%81%EA%B4%80%EA%B3%84.pd
f> (검색일: 2023.1.31.).
7) Toby Dalton, Karl Friedhoff, and Lami Kim, “Thinking Nuclear: South Korean Attitudes on
Nuclear Weapons,” The Chicago Council on Global Affairs(CCGA), February 2022, p. 14,
<https://globalaffairs.org/sites/default/files/2022-02/Korea%20Nuclear%20Report%20PDF.pdf> (검
색일: 2023.1.31.).
8) “전문가들 “윤석열 핵보유 언급, 한국 여론 반영…확고한 확장억제 공약으로 한국 우려 해소해야”,” VOA, 2023.1.13., <https://www.voakorea.com/a/6916589.html> (검색일: 2023.1.31.).
9) Lauren Sukin, “Credible Nuclear Security Commitments Can Backfire: Explaining Domestic
Support for Nuclear Weapons Acquisition in South Korea,” Journal of Conflict Resolution, vol.
64, no. 6 (2020), pp. 1011~1042.
10) Toby Dalton, Karl Friedhoff, and Lami Kim, “Thinking Nuclear: South Korean Attitudes on
Nuclear Weapons,” p. 8.