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核武装を望む韓国国民の意識が持つ3つの特徴(上)

ニュースリリース|トピックス| 2023年02月14日(火)

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パク・チュハ(統一研究院統一政策研究室研究委員)
【要約】
 核武装に対する世論調査結果を土台に、核武装に関連する国民の認識において、3つの特徴を提示した。核武装という世論に対する通念と多少の差がある。まず、核武装に対する世論は短期的、何かのきっかけで出てくるものというよりは政治的なことだ。核武装を望む国民の比率は、長期間にわたって60%以上を維持してきた。

 次に、核武装を望む理由は多様だ。韓国国民は北朝鮮による核の脅威だけでなく、韓国の全般的な安保環境と国力に合った防衛力の観点から、核武装を望んでいる。

 三つ目に、米国の防衛公約を信頼すればするほど核武装に肯定的だ。核武装に対する国民認識の中流化や複雑さ、そして不確実性を考慮すれば、核武装の世論に対する拙速な分析は止揚すべきだ。核武装に対する賛成・反対の比率に集中して見るのではなく、核武装を支持する国民の心理を理解することが建設的な出発点になるだろう。核武装を望む国民の心理を、より綿密に見つめる努力が必要だ。

最初に

 韓国で独自の核武装に対する議論は、朴正熙政権にまで遡ることができる。1)独自の核武装に対する議論は主に、政界と学界を中心に提起され、国民が独自の核武装に対しどのように考えているかは大きな関心事ではなかった。2022年後半に北朝鮮が前例のない挑発が継続して起こり、独自の核武装に対する議論が再び焦点となった。一方、絶対多数の国民が韓国独自の核兵器開発・保有を望むという世論調査が発表され、国内はもちろん海外でも韓国国民の核武装認識に関心が集まっている。2)

 韓国国民の核武装に対する視覚は、北朝鮮の挑発に直面した故区民が北朝鮮の核能力の高度化に対応するための手段として、格b層を望んでいるのだろうという通念が下地にあることを否定できない。しかし、世論調査で示された核武装に対する態度は、このような通念とは多少の違いを見せている。本報告書には、世論調査で示された韓国国民が核武装に対する態度を3つの特徴に要約した。また重点的に見た世論調査は、統一研究院の「KINU統一意識調査」、韓国日報の「韓国人の対米認識調査」3)、シカゴ国際問題協議会(Chicago Council on Global Affairs、CCGA)の「韓国人の核兵器に対する態度調査」4)だ。

核武装は長らくの熱望だ

 韓国が自主的に核兵器を開発・保有することを望む国民の比率は、長期間にわたって60%から70%水準を維持してきた。統一研究院の調査ではこの4年間、韓国の核武装に賛成する割合は60~70%台へと常に上昇している。(図1)




 韓国日報とCCGAの調査結果もまた、統一研究員の調査結果と似ている。2022年12月に実施した「韓国人の対米認識調査」で、韓国が核兵器を保有すべきと回答した比率は66.8%、2021年12月のCCGAの調査では、韓国が自主的に核兵器を開発すべきとの回答が71%だった。

 興味深い点は、この4年間、核武装を望む国民の割合が十数年前に核兵器保有を望む国民の比率と大きな差がないという点だ。今から17年前となる2006年、核兵器の保有が必要だと考えていた国民の比率は67%5)、10年前の2013年には核兵器の保有が必要だと考えていた国民は64%だ。6)

 2022年下半期、北朝鮮の挑発を契機に政界、学界、メディアなどが核武装に対する国民の態度に関心を置くようになったことは明らかだ。しかし、韓国国民の核武装に対する態度を2022年下半期の北朝鮮による挑発というフレームの中だけで分析するとしたら、木を見て森を見ずといった誤りを犯す可能性が高い。韓国国民の核武装に対する認識は、北朝鮮の挑発に対応するための短期的な対応というよりは、長い間形成されてきた態度として見るべきだ。核武装に対する国民認識の時系列的流れを考えると、2022年下半期における北朝鮮の挑発は核武装に対する国民の態度に決定的な影響を与えていないとみるほうが妥当な分析だろう。

核武装を望む理由は複合的だ

 核武装に対する選好を問う世論調査は多数存在するが、核武装を望む理由を調査した研究と調査は思ったより多くない。これは韓国国民が北朝鮮の核に対応するという側面から核武装を望んでいるという一般的な期待感の結果だとみることができる。しかし韓国国民がなぜ核武装を望んでいるのかを直接的に調査したCCGAの調査は、韓国社会の通念と反する結果を見せている。(図2)



 CCGAの調査では、北朝鮮からの脅威を韓国が核武装すべきとの理由として挙げた回答者は23%に過ぎない。一方、韓国以外の脅威に備えるために核武装をすべきだと回答した者は39%と最も高い回答者となっている。米中競争の深化で代弁される国際秩序の変化、朝鮮半島を取り巻く域内国家に対する脅威認識などが核武装への態度に大きな影響を与えていることを示唆する結果だ。韓国の国際的地位を強化するため核武装が必要だと回答した者は、北朝鮮の核の脅威を言及した回答者と比べ、誤差の範囲として優勢な26%だった。韓国の国力に合った国防力に対する熱望もまた、核保有を説明する要因の一つである。

 CCGAの調査が2021年12月に実施されたという点において、現在の韓国国民の核保有に対する態度を忠実に反映させることはできないという批判が可能だろう。しかし、2022年4月に実施した「KINU統一意識調査」、同年12月に実施された韓国日報の調査結果は、北朝鮮の核の能力の高度化に対する憂慮が核武装に対する態度の支配的な要因とならざるを得ないことを間接的に示している。統一研究院の調査で、韓国の軍事力が北朝鮮と比べ強いと考える回答者の71.2%が核武装を望んでいる反面、韓国の軍事力が北朝鮮より弱いと考える回答者の場合、その63.4%が核武装を望んでいる。韓国日報の調査では、安保状況が安定的だと評価する回答者(74.7%)が安保状況が不安定だと評価する回答者(60.8%)より核武装を望む割合が高い。

 北朝鮮の核能力の高度化が、国民の自主的核兵器保有への意志と関連がないということではない。疑う余地もなく、北朝鮮の核能力の高度化に対する憂慮が高まれば高まるほど、核武装に対する選好が高い。ソウル大学統一平和研究院の調査は、北朝鮮の核の脅威レベルと核保有認識が肯定的に関連することをはっきりと示している。例えば、北朝鮮が核実験やICBM発射モラトリアムを宣言した2018年、核武装への支持度は最も低いレベルだった。しかし、核武装に対する国民の心理を北朝鮮の核能力の行動かという一つの要因でだけ説明することは、核武装に対する国民の心理を誤読する可能性が高い。北朝鮮の核、国力、国際情勢など韓国の安保環境全般に対する国民の認識を総合的に考慮すると、核武装に対する国民の態度を正確に把握することができるだろう。

アメリカの防衛公約を信頼すればするほど核武装に肯定的だ

 アメリカの安保公約に対する信頼が大きければ大きくなるほど、独自の核武装に対する支持が減少するという思い込みが、学会や政界では一般的だ。アメリカの強力な核抑止力への意志を通じ、韓国の安保への憂慮を解消できるという専門家の助言は、このような思い込みが反映されている。8)ところが、韓国国民の核武装選好に対する研究と調査では、このようなアメリカの公約に対する信頼が高まれば高まるほど、核武装に対する支持が下がるという通念とは反する結果を見せている。

 ロンドン政経大のローレン・サーキン教授は、米国の韓国に対する安保公約が操作した後、韓国国民の核武装への意志を測定した実験研究を進めた。結果、アメリカの韓国に対する安保公約の信頼度が高いという情報に接した参加者が、アメリカの韓国に対する安保公約に対する信頼度が低いという情報に接した参加者と比べ、核兵器への意志が強くなった。9)
 
アメリカの安保公約に対する信頼度と核武装への維持を測定したCCGAの調査でも、サーキン教授の研究結果と類似したパターンが観察された。CCGAの調査で、アメリカの安保公約を信頼するとの回答者は61%(とても信頼49%、多少信頼12%)だった。興味深いことは、アメリカの安保公約に対する信頼が高まれば高まるほど、信頼するとの回答の78%が核武装を支持する一方で、アメリカの安保公約はとても信じられないとする回答者の場合、56%が核武装を支持した。
(下に続く)
 


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