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北朝鮮指導部にとって韓国とは何か

ニュースリリース| 2022年06月26日(日)

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 2022年6月20日、韓国のクォン・ヨンセ統一相は交渉相手と言える朝鮮労働党統一戦線部長の李善権氏に南北関係を改善するため会おうと提案しました。いつ、どこで、どのような形であれ会って、対話をしようという提案でした。しかし、ほぼ確実に、李氏はこの提案になんら返答しないか、あるいは韓国に向かって激しい非難を含む談話を発表するでしょう。

 私はなぜこのように予想するのでしょうか。20年前から、北朝鮮が韓国をどう見ているかと観察すれば、その理由は簡単に求められます。北朝鮮指導部にとって韓国とは何か。何よりも、カネと価値のある物資をタダでくれる国だということです。

 南北関係の歴史を見ると、平等な交流はほとんどありませんでした。韓国は北朝鮮と経済協力を行うたびに、多かれ少なかれ、カネを与えました。代表的な事例は、1998~2008年まで行われた金剛山観光事業です。この事業を行った韓国の現代峨山は、金剛山観光が始まると多くの韓国人が行きたがるだろうと予想しました。しかし、実際には予想していた数字の30~40%ほどしか行きませんでした。結局、韓国企業は稼いだカネよりも、金剛山観光を支援するために支出しなければなりませんでした。このようなカネの一部は、韓国の国家予算から出されました。韓国当局の支援がなければ、金剛山観光事業は数年も経たずダメになっていたでしょう。

 開城工業地区も同様です。工業地区で事業を行っていた韓国企業は、比較的カネを稼いだほうす。しかし、韓国企業が開城工業地区で活動できた理由は、この地区の施設がきちんと整えられていたためです。工業地区の道路や電気、水道などはすべて韓国の国家予算で整備され、稼働されていたものでした。

 南北経済協力として行われた事業の大部分は、政府支援を受けました。それならば、韓国政府はなぜこのような支援を行ったのか。もちろん、人道主義の目的がなくはありませんでした。それよりも重要な目的がありました。韓国側は対北支援を行いながら、これを平和共存のための準備だと考えました。言葉では統一のための準備だと言いましたが、韓国指導部は事実上、平和共存を望んでいたと思います。

 しかし、数年前から韓国政府は南北経済協力への支援を前ほど行わなくなりました。理由はいくつかありますが、最も重要な理由は国連安保理の対北制裁決議案のためです。決議により、対北経済協力や支援がほとんど禁止されました。世界中の誰もが、北朝鮮国内にビルや工場を建設することも禁止されました。したがって、開城工業地区や金剛山観光事業のような事業は不可能になりました。北朝鮮とは違い、国際社会と交流しながら生きていいる韓国は、国連決議案に反することはできません。とても深刻な経済的、政治的打撃をもたらすためです。

 いま韓国は保守党の政権になりました。保守政権は対北支援を行う考えはほとんどありません。とはいえ、ひと月前まで政権を握っていた文在寅政権は、対北支援に対する意欲は強かったのですが、彼らも対北支援を行えませんでした。

 北朝鮮の立場では、カネをくれない韓国にはこれといった価値はありません。このような理由から、私は北朝鮮側が韓国統一相の提案に応じないと判断しています。
(アンドレイ・ランコフ教授、RFA、2022年6月23日)
https://www.rfa.org/korean/commentary/lankov/alcu-06232022094721.html


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