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【火星17型】国連安保理の対応に限界も

ニュースリリース| 2022年03月28日(月)

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アメリカの専門家は米中、米ロが対立する中で北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことに対して国連安保理の対応に限界があると指摘しました。抑止力を強化しながら、北朝鮮の情報流入のような創造的な方法を模索すべきだと助言しました。ランド研究所のブルース・ベネット先任研究員と、米外交協会米韓政策局のスコット・スナイダー局長が対談しました。

――北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射しました。今回の発射をどうみますか。

ブルース・ベネット
=私は金正恩が現時点から先へ進もうとしているのだと思います。彼はロシアとウクライナの問題で世界の舞台から注目を得られていません。ICBMの発射でさえ、アメリカのメディアで話題になっていません。とくに金正恩はアメリカと韓国に譲歩せよと圧力をかけようとしています。自分が交渉のテーブルに行けるように、何かを提供せよということです。

 金正恩はまた、文在寅政権の任期が残り1カ月ほどという事実を利用しようとしています。韓国側とある程度妥協点を求めようとしています。より強硬な尹錫悦次期大統領が就任する前に、ということです。われわれは1週間前に失敗した発射も記憶すべきです。おそらくICBM発射に失敗したことでしょう。これもまた発射の要因になったと思います。

――スナイダー氏はどうみていますか。

スコット・スナイダー
=私はベネットさんとは少し違った見方をしています。ベネットさんが言及されたことが潜在的に付随的なものだという点に同意します。しかしわれわれは金正恩が時間表をつくったということをつねに念頭に置くべきだと考えます。彼は可能な限り早く、それを達成しようと努力しています。

 したがって、最大の疑問は何もなかった2020年3月から2021年9月までの18カ月間です。なんの試験もありませんでした。気になる部分です。なぜそうだったのか把握すべきことかもしれません。北朝鮮が意図的に時間を遅らせたとは考えません。今後どんなことが起きるかわからない状況において、そう計画したのではないのでしょう。

――北朝鮮は最近の発射が火星17型だと主張しています。しかし韓国の専門家の中には、今回のミサイルは火星15型だと指摘する人がいます。

スナイダー
=北朝鮮の立場から、ミサイルプログラムの進展に肯定的な段階を踏んでいるということが、今回の試験発射の重要な示唆点です。2017年11月に火星15型の発射と比べてみたら、ということです。今回発射されたミサイルは1000マイルからさらに上昇し、18分ほど長く空中にありました。これは無意味なことではありません。1万5000キロメートル飛行し正確な打撃を行える力を確保だという自らの目標に向かって、北朝鮮が継続して射程距離を伸ばそうとしているというはっきりしたシグナルです。

――今回発射されたミサイルが火星17型だとすれば、どのような意味を持ちますか。

ベネット
=火星17型であれほかの改良型に関係なく、今回のミサイルは2017年に発射されたものよりはるかに長い射程距離を持っています。例えば北朝鮮専門メディア「38ノース」は、2017年に発射されたミサイルが500キログラムの弾頭を搭載できると主張していました。これは北朝鮮が8500キロメートル、すなわちアメリカのサンフランシスコに少し及ばないレベルの射程距離を持つ核兵器を生産できるということを意味します。

 今回発射されたミサイルは、これよりはるかに長く飛びます。おそらく、アメリカの大部分の地域にそんな弾頭を飛ばして見せることができるという意味でしょう。また、今回のミサイルは北朝鮮が実戦配備する最も大きなミサイルではないとも言えます。

――北朝鮮は武器実験の強度を徐々に高めています。北朝鮮の意図は何でしょうか。

ベネット
=私は北朝鮮がアメリカを試しており、またアメリカを飼いならそうとしていると思います。北朝鮮はアメリカの抑止力がどれほど真剣なものなのかを知ろうと努力しています。抑止力は敵にとって「悪い行動をすれば深刻な代価を払う」という確信を与えることがすべてです。

 北朝鮮が試そうとして短距離ミサイルを発射しましたが、アメリカは多くのことを行いませんでした。彼らが中距離ミサイルを発射した時も、アメリカはこれといった特別なことをしませんでした。したがって、私は北朝鮮がICBMを発射してもアメリカがこれといった対応をしないだろうと確信したのだと思います。「棍棒を持って静かに話せ」というセオドア・ルーズベルト大統領の言葉を知っているはずです。この数年間、アメリカ政府は大声で話し、とても小さな棍棒を手にしていました。

――スナイダーさんはどう考えますか。

スナイダー
=私はベネットさんが話しをされた北朝鮮の戦略に関する内容に100%同意します。これは「鍋の中のカエル」戦略と同じです。北朝鮮が徐々に温度を高めながら、われわれが危機を感じることができなくするというものです。残念ながら、現在の状況においてバイデン政権が抱える最大の課題は、過去によく使っていた「対応道具」、すなわち国連安保理決議に通じた方式をこれ以上使えないということです。したがって、少し低いレベルの道具、例えば修辞的な道具、すなわち「糾弾声明」方式などを使っているのでしょう。

 北朝鮮のミサイル試験発射に対応して、国連安保理ほど有用なものはありません。

――金正恩はICBM発射を通じて何を望んでいるのでしょうか。アメリカの譲歩でしょうか。

スナイダー
=金正恩の目標は軍事的進展を追究することだと思います。より強く、強大な国、すなわち「核保有国」になるというものです。そうなれるようにアメリカと国際社会が北朝鮮を核保有国として認めざるをえない状況にさせる、ということです。そうしようとして、交渉が始まりうるのでしょう。北朝鮮の核の力量は議論の対象ではないということです。

――ベネットさんもそう思われますか。

ベネット
=もちろんです。しかし、私はそれよりも先に進むことができると思います。プーチンは核兵器の使用をほのめかしています。核の活動に対する影を背後にしたものです。プーチンはウクライナで厳しいことを行っています。そうしながら、彼はこんな脅威の手段を持っているため保護を受けています。金正恩がこれを理解したようです。彼の父もずいぶん前にこれを知ったのでしょう。今や金正恩は、信頼できるだけの力量があり、その力量をどれほど活用できるかを知るために、時間を掛けて試験しようとしています。どの程度まで脅しに使えるかどうか、ということです。

 彼はアメリカの領域内の支配を望んでいません。中国の優位も望んでおらず、もちろん韓国の支配力も望んでいません。核兵器はそのような支配力を突き崩す潜在的な手段でもあります。

――アメリカは安保理の会議を招集し、北朝鮮とロシアの個人と機関に制裁を与えました。このような措置は効果的でしょうか。

スナイダー
=そうではありません。国連安保理は無力化された状態です。われわれはこのような状況をこの30年間経験したことはありません。われわれはさまざまな目的で国連安保理を利用してきましたが、国連安保理はこれ以上、このような問題を扱うための中心的な役割を果たせずにいます。強大国の間に地政学的戦力という側面から、分裂が存在する状況ににおいて、です。例えば、一方からはアメリカと中国、そしてもう一方からはアメリカとロシアで見られることについてです。

――ベネットさんも懐疑的に見ていますか。

ベネット
=とても疑っていますよ。そんな措置が金正恩にどの程度衝撃を与えましたか。金正恩が代価を払うようにするための制裁付加にどれだけ真剣かということです。抑止力は金正恩が深刻な代価を払うだろうということを事前に知らせてくれます。しかし、われわれは強い声明を発表しますが、具体的ではありません。深刻な費用を払わせるという意思も見えません。われわれは伝統的なやり方に囚われています。われわれは金正恩が外部の情報にとても敏感だという点も知らずにいます。それを使っていません。彼はKポップスと韓国の文化を若い世代の道徳に害を与える悪性のがんだと言いました。われわれがとても創造的であれば、これはわれわれが使える十分な武器になるのではないですか。
(2022年3月26日VOA)


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