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南北のホットラインを復活させた北朝鮮の目的

ニュースリリース|トピックス| 2021年08月08日(日)

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 2021年7月27日朝、413日間遮断されていた南北の通信線が復元されました。ソウルと平壌から同時に、この事実が発表されました。

 2020年年6月9日、北朝鮮は南北の間のすべての接触を遮断しました。金与正・朝鮮労働党副部長は当時、南北のすべての連絡を遮断しただけでなく、韓国国民のお金で建設された開城の連絡事務所を爆破することも指示しました。

 これは象徴的な意味合いは強いものでしたが、実効性はない挑発でした。連絡事務所は爆破されましたが、南北を結ぶ通信線は技術的な問題がまったく、南側だけでなく北側もこれをよく管理していました。さらには、南北の代表者は接触を続けていました。そのために韓国との連絡遮断宣言は事実上、言葉だけのものでした。

 同様に、今回7月27日の通信線の復元を発表したこともシンボル的な意味合いが強い決定でした。通信線は、軍事境界線で衝突が生じる可能性を減らすためのものですが、通信線があるかどうかはそれほど重要ではありません。したがって、通信線復元措置は、北朝鮮当局が韓国と米国に信号を送るためのだったと見​​ることができます。

 北朝鮮が通信線を復元させたことには、いくつかの理由があります。最近、北朝鮮の経済状況は新型コロナウイルスや転校などにより、ますます悪化しています。そのため、北朝鮮は海外から支援を受ける必要性が高まっています。

 もちろん、今、北朝鮮は必要な支援をいつでも、しかも無料で中国から受け取ることができます。中国は米国との対立関係のため、北朝鮮は緩衝地帯としての価値が大きいとみており、深刻な経済危機や飢饉が生じないように努力する必要があります。飢饉は政治危機を招くおそれがあるためです。

 もし北朝鮮に危機の兆しが見えたら、中国は必要な食糧と油を支援するでしょう。そのため、北朝鮮経済がより深刻な危機に陥ったとしても、餓死者はそれほど多く生じないでしょう。北朝鮮指導部と人民の両方にとって、中国の支援は良いことです。

 しかし、北朝鮮指導部の立場からすれば、中国への過度な依存は問題です。北朝鮮式の世界観の特徴は、隣国すべてを脅威だと考えることです。北朝鮮の主敵は米国ですが、北朝鮮は他の国も信じません。したがって、中国への依存が今日のように高いことは問題となりえます。中国は無償で北朝鮮を支援しますが、その代わりに政治的介入を要求してくるからです。まさにこのことこそ、北朝鮮は代案を探しているのです。

 韓国政府はいま、北朝鮮に支援する心づもりがあります。もちろん最近まで、北朝鮮は韓国の大統領府に不満が多かった。最大の理由は、北朝鮮の希望とは異なり、韓国政府が国際法のような国連決議案に違反できないからです。

 もともと北朝鮮は、韓国から食糧だけでなくより多い支援を望んでいますが、韓国は国連の対北朝鮮制裁を考えて、食糧を除く対北朝鮮支援を検討していません。ところが最近の状況を見ると、北朝鮮は食糧だけでも受け取れればいいという態度です。彼らは韓国や中国などへ分散して食糧を受け取る場合、北朝鮮がある一国に頼る必要性が低下すると考えています。私はこれが正確な外交だと思います。

 そのため、通信線の復活を宣言したことは、この方向に進む第一歩だという印象を受けます。もちろん韓国の大統領選挙が近づいてきており、北朝鮮に与えられた時間が十分にあるのかは疑問に思います。それでも、北朝鮮としては動くだけの価値があると考えた理由が明らかにあるはずです。
(RFA、2021年7月29日、アンドレイ・ランコフ)
​​​​​​​https://www.rfa.org/korean/commentary/lankov/cu-al-07292021102107.html


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