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南北間のホットラインが再開

ニュースリリース|トピックス| 2021年07月27日(火)

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 韓国と北朝鮮が直通連絡線(ホットライン)を2021年7月27日午前10時、全面的に再開させた。偶発的な軍事衝突を防ぐため、また軍事的緊張を緩和させるために必要とされてきたホットラインを再開させたことは、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩総書記の合意によるよ。2020年6月に脱北者団体による北朝鮮の反体制ビラ散布に反発、北朝鮮側が板門店などのチャネルをすべて断絶させてから13カ月ぶりのことになる。

 とくに両首脳が68年前となる1953年、朝鮮戦争の停戦協定締結となった7月27日という日に回復させたことは、南北関係の改善に向けた強い意志が垣間見える。

韓 国大統領府のパク・スヒョン国民疎通首席補佐官は記者会見で、「南北首脳は2021年4月から数回にわたる親書巷間で、南北関係の改善という問題で意見を交わし、まずは断絶状態だったホットラインを再開させることに合意した」と明らかにした。さらに、「両首脳は一日も早く、相互の信頼を回復し関係を再び前進させることで意見の一致を見た。ホットラインの再開は今後の南北関係改善と発展に肯定的に作用するものと期待する」と述べた。

 北朝鮮側も朝鮮中央通信を通じて「いま同じ民族は挫折と沈滞状態にある北南関係が一日でも早く回復することを切実に願っている。北南首脳において、最近数回にわたってやりとりをしていた親書を通じて、断絶した北南通信連絡通路を再開したことで、相互信頼を回復し、和解を促進するための大いなる一歩を踏み出すことに合意した」と明らかにした。

 南北間のホットラインには、首脳間のホットラインと国家情報院・統一戦線部のライン、軍、統一省チャネルなどがある。

 大統領府高官は「統一省と軍で運営していた南北ホットラインなどが再開された。首脳間のホットラインはこれからの協議による」と述べた。国家情報院と統一戦線部のラインはこれまでも間欠泉的に稼働されており、首脳間の親書交換などもこのチャネルを通じて行われていたようだ。

 韓国による対話再開を無視し続けてきた北朝鮮が、突然その態度を変えたのか。韓国と北朝鮮間のホットラインとなる「南北軍事通信線」を、北朝鮮から復活させた理由に関心が集まっている。韓国では復活させた理由について、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために国境を封鎖したことや、それによる食糧難によるものではないかとの観測が出ている。

 韓国国防省は2021年7月27日午前10時、黄海地区の軍通信線が開通され、試験通話などを行った後に運用に問題がないことが確認されたことを発表した。これは北朝鮮が2020年6月9日から軍の通信線を用いた定期通話に応答しなくなってから13カ月ぶりに開通したことになる。

 とくに7月27日は、1953年に朝鮮戦争の停戦協定が結ばれ銃声が止んだ日から68年となる日でもあり、復活させた意味について多くの意見が噴出している。国防省は「南北首脳の合意により、軍の通信線が復旧されて正常化したことで、南北軍事当局間の「9.19合意」の履行など、軍事的緊張緩和に実質的に寄与するものと期待している」と評価した。

 北朝鮮はこれまで、2021年1月に発足したアメリカのバイデン政権が朝鮮半島にどのような政策を打ち出すか、慎重な姿勢を維持し続けてきた。しかし、韓国側の対話提案には無視し続けてきた。しかも、2021年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会を韓国がどう反応してきたか、韓国が開発中の「玄武4」弾道ミサイルの開発動向、北朝鮮体制を批判するビラの散布といったことを取り上げて非難するなど否定的な反応を見せてきた。

 また2021年3月に米韓合同軍事演習には抗議し、北朝鮮の祖国平和統一委員会と金剛山国際観光局などを解体すると発言したこともあった。

 このため、軍事通信線を普及させたことについて、一部では北朝鮮がコロナ禍と食糧難といった問題を克服するため、韓国側からの支援が必要であると認めたことになるのではないかとの分析が出ている。実際に、北朝鮮は2020年以降、コロナ禍の拡大を防ぐために中朝国境を封鎖したことで、かえって経済難に陥っているとの見方が広がっていた。

 新型コロナウイルス感染者が発生したという話は北朝鮮から聞こえてこないが、北朝鮮国内へのワクチン搬入と接種はなされていないのが実状だ。韓国のシンクタンク・峨山(アサン)政策研究院のチャ・ドゥヒョン首席研究委員は、「北朝鮮もまた国際制裁やコロナ禍により、これまで国民にアピールしてきた自強力だけでは状況の打開に限界があるということを認識し始めた証拠」と指摘する。

 13カ月の断絶の後に、ようやく再開された南北間の連絡チャネルが、韓国の文在寅政権の北朝鮮にとってどのような影響を与えるか。文政権が政権発足以降掲げてきた「朝鮮半島平和プロセス」が、再び動こうとしている。

 とくに連絡チャネルの回復は、南北首脳の積極的な意思を反映した「トップダウン」でなされたことは、2022年5月任期を迎える文在寅大統領にとって肯定的な触媒となるかどうかに注目されている。3回の南北首脳会談と初の米朝首脳会談が行われた2018年のような状況へ導くことができるだろうか。

 文大統領と北朝鮮の金正恩総書記は、2021年4月に2018年の板門店での南北首脳会談3周年を契機に親書のやり取りを始めたという。南北ともに具体的な親書の内容は明らかにしていない。

 ただ、韓国大統領府関係者は「南北関係が久しく断絶していたという問題点を共有し、朝鮮半島の平和のために早期の関係回復が必要だという点で意見が一致した。コロナ禍で南北共に苦痛を受けている状況を一日も早く克服していこうという気持ちを共有し、南北同胞の健康と平安も伝えた」と説明した。

 1953年7月27日に停戦協定を結ばれた1953年から68年過ぎたこの日、親書の巷間と南北連絡チャネルの再開という事実を同時に公開したことも目を引く。これまで3カ月程度、南北首脳間でコミュニケーションがなされ、さらに実務協議も行われたことになる。だが、大統領府は「(停戦協定の節目といった)再開時点に対する特別な考慮はなかった」という。南北首脳の対面接触やオンラインによる会談が行われるかどうかについても、「協議されたことはない」と付け加えた。

 南北連絡チャネルの再開で、2019年にベトナムのハノイで行われた米朝首脳会談以降、膠着状態に陥った南北関係が改善のきっかけとなるのは明らかだ。さらには、北朝鮮側が国境を封鎖するなど、コロナ禍に極度に敏感な姿勢でいるとはいえ、文大統領の任期内に4回目の南北首脳会談開催の可能性も排除できない。

 韓国・統一研究院のホン・ミン研究委員は「親書が4月から交換されたことを考えると、両首脳が南北関係の改善を活用する機会にとして相当共感している可能性が高く、停戦協定が結ばれた7月27日に発表したことは、2021年下半期に何かを成し遂げるという共通の気持ちがある。4回目となる南北首脳会談が行われる可能性がある」とみている。韓国・北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「南北首脳が互いに信頼することで連絡チャネルが再開されたという事実は、南北首脳会談へのシグナルであり、ニューヨークチャンネルという米国と北朝鮮間の連絡窓口も活発に利用されるなど、米朝関係にも肯定的な影響を与える」と述べた。

 一方、現実的には南北首脳会談開催までの条件や環境を楽観視できないという見方もある。当面、北朝鮮が体制への脅威としてみている米韓合同軍事演習が2021年8月に予定されており、非核化交渉の再開に関する米朝間のつばぜり合いも続いている。さらには、南北協力が今後活発化されるにはまだ限界も多い。結局、「朝鮮半島平和プロセス」を推進するエンジンを得ようとすれば、文大統領が双方を仲裁すべきだということになる。

 2020年6月に北朝鮮・開城市に設置されていた南北共同連絡事務所を北朝鮮が爆破したことに対するはっきりとした謝罪がなければ、南北関係の健康的な発展は難しいという指摘もある。大統領府関係者は「今後、協議すべき問題だ」と述べた。
(「ソウル新聞」2021年7月27日)


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