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朝鮮半島情勢と南北対話の可能性

ニュースリリース|トピックス| 2021年07月18日(日)

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 米国政府は条件なしでの対話のみを主張するだけで、行動は対北全面制裁の1年延長や北朝鮮の人権問題など、韓米共同声明と相反する措置をとっている。バイデン政権は今、EUとNATOの32カ国を動員して黒海でロシアを目標とした海上演習を行っている。米国はこのようなやり方でロシアを孤立させ、同盟国に対するリーダーシップを回復させようとしている。

 米国は中国を最も重要な競争相手と定め、EUとNATOを「反中」前線に引き入れようとしており、アジア太平洋地域ではQUADをつくった。ここに韓国を引き入れることは、米国の反中戦略の実現に重要だ。このためには、南北間の摩擦が必要だ。南北間に摩擦が生じ、中国が北朝鮮側に立つようになれば、韓国はQUADに参加する可能性が高まるとみているようだ。

 これは文在寅政権の朝鮮半島新経済構想や新北方政策、南北共同繁栄の理念と相反する。米国は8月に米韓合同軍事訓練を行うだろうし、韓国は反対する可能性が高い。また8月には朝鮮半島がこのまま安定を維持するか、あるいは再び不安定な状況に陥る始発点になるかを決定する重要な時期になるだろう。

 しかしバイデン政権はまだ対話を優先すると主張している。しかも、北朝鮮からは対話を拒否されたため、北朝鮮を目標とする米韓軍事演習を強行するには厳しい状況だ。演習規模を縮小し、内容も調整して北朝鮮からの反発をある程度抑えようとする可能性が高い。

韓国の対中、対ロ関係も重要

 米国は同盟国に反中前線に加わるように要求している。韓国に対しても同様だ。米韓首脳会談では台湾海峡の平和、南シナ海の航行の自由だけに言及し、香港や新疆の問題については扱わなかった。韓国は黒海で進行中の海上演習には参加しなかったが、米国とオーストラリアが行う海上演習には軍艦を派遣することにした。韓国としてはこれまで、中国、ロシア、北朝鮮と積み上げてきた実績を台無しにしたくはないはずだ。文在寅大統領も任期内には東北アジアの和合を意味するこの「マジノ線」を守ろうとするだろう。

 韓国はこれまで、南北対話を再開させるため法を制定して、北朝鮮に向けて体制批判のビラを飛ばすことを含む、北朝鮮に対する一切の敵対行為を行わないとし、板門店宣言の約束を守ろうとした。さらには、板門店宣言を法的に認めるための努力を国会で行っており、対北制裁下の状況にあっても北朝鮮とできることを政府と自治体、民間レベルでたくさんの準備を行ってきた。北朝鮮が米国の罠と見なしていた米韓ワーキンググループも解体した。韓国は制裁下でできることからまずは始めて、徐々に成果を拡大していこうとするようだ。

 一方で、北朝鮮は世界的な地殻変動が始まり、米国が単独で世界を支配していた時期は二度と来ず、多極化の新たな政界秩序が構築されるとみている。したがって、彼らは朝鮮半島情勢に南北、米国だけでなく、中国、ロシアも関与してくるとみている。仮に南北が和解したとしても、韓国が米国と共に中ロに反対する前線に加われば、朝鮮半島の平和を保障することが難しいと考える。このため、韓国政府が中国との関係を一定程度犠牲にしながらも、米韓関係と南北関係を改善するのではないかと憂慮しながら見守っている。

南北、米朝対話は北朝鮮の態度次第

 北朝鮮は、米国が実際の行動で対北政策が変わったことを確認するまでは、対話の手を差し伸べないだろう。米国も自分から北朝鮮に善意を見せることは難しい。そのため、今年下半期は、米朝間の膠着状態が続く可能性が高い。とはいえ、北朝鮮を対話の場に来させるためには、韓国の南北対話を利用する可能性があるようだ。問題は北朝鮮の態度だ。

 北朝鮮は米国の敵対政策が変わらない限り、南北関係の持続的な発展は不可能だと考えている。北朝鮮としては韓国政府の対中、対ロ政策がある程度しっかりと確定しづらいだけでなく、現政権の任期もそれほど残されていないため、対話の再開には慎重だ。ただ、韓国とまずは対話することが米国にとって圧力となって対北交渉に本腰を入れるきっかけとなり、韓国の対中、対ロ政策に有利に作用しうると判断すれば、交渉を始めることはできる。その時期は年末か、来年初頭となる可能性がある。
(韓国「ネイル新聞」、北京大学・崔応九教授、2021年7月17日)


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