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北朝鮮の成長率は年5.1%? 国連に報告書を提出

ニュースリリース|トピックス| 2021年07月15日(木)

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 新型コロナウイルスが流行し国境を閉じて国際社会で孤立している北朝鮮が、最近になって自国の状況を知らせる63ページの報告書を国連に提出した。7月13日、オンラインで開催された国連経済社会理事会高位級政治フォーラム(High-level Political Forum, HLPF)で、北朝鮮が「自発的国別検討」(Voluntary Nation Review, VNR)を発表した。

 VNRは2015年の第70回国連総会で加盟国が2030年までに達成することを決定したアジェンダ「持続可能発展目標」(SDGs)の履行現況を、各国が自発的に検討して国連に提出する制度だ。韓国は初年度となる2016年にVNR報告書を提出した。2021年には北朝鮮やキューバ、アンゴラ、ボリビアなどが初めて報告書を提出した。

 北朝鮮が提出した報告書によれば、北朝鮮は当初2020年7月にVNRを発表しようと計画していた。しかし、コロナ禍で北朝鮮が2020年2月に「緊急防疫体系」を活性化し、北朝鮮政府はVNR報告書の草案に対する意見を収れんするために開催しようとした国内のセミナーもキャンセルとなり、結局、発表が1年先送りになった事情がある。北朝鮮はこの間、分野別にオンライン会議を開き、報告書の草案に対する関係部署や機関との議論を収れんし、初めて報告書を完成させたと説明している。

 また、国際基準に沿うVNR報告書を企画するため、国連アジア太平洋経済社会委員会と東北アジアの利害関係者とのフォーラムが組織したワークショップに出席し、国連の専門家から専門的な支援を受けるなど、特別な注意を払って完成させたことを明らかにした。

 報告書は北朝鮮内閣副総理兼国家計画委員会委員長のパク・ジョングン氏の冒頭陳述から始まる。パク氏はここで「強力な社会主義国家」を建設するための国家発展政策に従って、「持続可能な発展のための2030年アジェンダ」を認知し、全面的に支持を表明してきたと述べている。また、このアジェンダを履行するため、北朝鮮政府は「持続可能な発展国家タスクフォース」(NTF)などを設置したと紹介している。

 さらに北朝鮮のSDGsは、▲科学と教育を優先しする基調を維持し、自立型国家経済の基礎を固め、▲エネルギーと農業、水と生活衛生・個人衛生と環境分野での努力を傾け、▲人民注視的な政策を完璧に執行していくことで、人民により豊かで良識ある生活を提供することを主な内容としていると説明している。そして、北朝鮮に対して継続されている制裁と封鎖、毎年発生している自然災害、2020年から継続されている世界的な保健危機は、国家の持続可能な発展を達成し人民の生活を増進させるための北朝鮮政府の努力にとって主要な障害物になっていると言及している。

 以降、本文の導入部から北朝鮮は「北朝鮮政府は2030アジェンダを履行するため、すべての努力を尽くしてきたと断言する」と強調している。本文内容を見ると、北朝鮮がアジェンダの枠内で立案した自国の持続可能発展目標別に、各目標を履行するための北朝鮮政府の政策や成果と課題、今後の計画について記述されている。

 北朝鮮が立案した目標は、▲人民生活の改善、▲農業の持続可能な発展、食糧自給、▲健康な生活の保障とすべてのためのウェルビーイング増進、▲すべてを聡明な労働者に、▲性の平等と女性・少女の権利強化、▲水の使用と衛生管理での持続可能性の担保、▲すべてのための持続可能で現代的なエネルギーに対するアプローチの保障、▲自立的な知識基盤経済樹立、すべてのための雇用の保障、▲持続可能な消費・生産を保障、▲気候変動及びその影響との戦い、▲社会主義体制の強化、▲友好的なパートナーシップの発展など計17目標だ。

■「人民中心社会主義、住宅・医療施設整備」…GDP成長率は年平均5.1%

 報告書でひときわ目に付くのが、紹介されているいくつかの生活関連施設の整備だ。「働く人民大衆がすべてのものの主人となり、すべてが彼らの利益に服務する人民中心の社会主義国家」という国家の正統性に合わせ、関連政策が実施されてきたということだ。

報告書では、2015~2020年の間に、未来科学者通りや黎明通り、衛星科学者住宅地区が華麗に建設され、併せて9500戸の住宅が平壌住民に無償分配されたと紹介している。また、2016~2020年の間に現代的な医療施設も建設されたと報告している。平壌産婦人科病院の乳がん関連機関、玉流こども病院、柳京総合眼科病院、柳京歯科病院、妙香山医療器具工場をその例として紹介している。2020年からは包括的医療サービスの提供を目標に、平壌総合病院建設という新たなプロジェクトが始まったと付け加えている。さらに、2013~2020年の間に馬息嶺スキー場と美林乗馬場、文繍遊技場、綾羅人民遊園地、陽徳温泉文化休憩地が完成し、元山葛麻海岸観光地区建設が活発に行われていると述べている。

 報告書は、北朝鮮の国内総生産が2015年の274億ドルから19年に335億ドルとなり、年平均5.1%の成長を遂げ、1人当たりGDPは同期間で年平均4.6%成長したと明らかにしている。

■自然災害が深刻、穀物生産梁はこの10年で最低水準…制裁、封鎖に不満も

 自国が置かれた厳しい状況を強調した部分もある。報告書には対北制裁と封鎖が継続し、毎年発生する自然災害、世界的な保健危機(コロナ禍)が経済発展はもちろん、持続可能な開発目標を達成するための深刻な障害となっていると何回も言及している。

 代表的なものは食糧難だ。報告書は2018年に北朝鮮の穀物生産梁が495万トンとなり、当初計画していた700万トンに及ばないのはもちろん、この10年間で最も低いことを明らかにしている。原因としては、自然災害と農業資材の不足などを挙げている。

 自然災害の具体例としては、2015年に気象観測史上2番目に高かった異常高温と2度の台風被害、6回の黄砂が指摘されており、4~6月と8~10月の間にあちこちでひょうによる被害があったと報告されている。また、2016年には豆満江流域で洪水が起き、2018年から2020年まで毎年数日間、高温と台風、洪水が相次いで発生したことを明らかにしている。そのため、自然災害からのリスクを減らすために国家機的な危機管理システムを強化し、造林と貯水作業に注力するとの政府計画を紹介している。

 何よりも徹底して対処すべき問題としては、新型コロナウイルスへの防疫を上げている。徹底した検疫はもちろん、すべての入国ポイントで人を隔離し、発熱のようなケースを徹底して把握するために体温測定などに万全を期しているという。輸入品もまた徹底して消毒し、海外からの流入する伝染病の拡散を徹底して防ぐべきだと述べている。

 北朝鮮への制裁と封鎖については、「平和と繁栄はこの時代の一般的な熱望であり、平和的環境は経済建設にすべての努力を集中することで、人民生活を増進させることが必要だ。しかし、北朝鮮に対して継続される敵対的な軍事行動と誹謗キャンペーン、敵対的な政策のために、北朝鮮の自主権と発展の権利は重大な挑戦に直面している」と言及している。

■気候変動への対応、性の平等にも言及

 報告書では気候変動と性の平等など、総体的に新しい分野でのイシューについても一部言及している。北朝鮮政府が気候変動に適応するための教育と意識向上への努力を継続しており、気候変動の否定的な影響に対する概念的な内容が、小・中学校の教育課程に含まれていることを明らかにした。また大学では、気候変動問題の緩和と適応、早期警報に関する問題を教えており、メディアを通じて気候変動の否定的な影響について定期的に扱っていると報告している。

 性の平等に関する問題では、政治・経済・社会的生活において女性の権利をより強化させており、最高人民会議で女性代議員の比率が2015年と2019年で20.2%、17.6%、各地域の人民会議では女性比率が25%を超えていると明らかにしている。

 そのほかにも、2017年現在で15~49歳の携帯電話加入者のうち、男性は55.7%、女性は47.9%というデータも公開している。また、北朝鮮政府は政府機関の幹部に女性をより多く任命する計画であると説明している。ただ、女性に対する精神的・物理的暴力については「人民がすべての主人であり、すべてが人民に使える北朝鮮では、女性に対する暴力が社会的問題になっていない」と一蹴している。

■人民大衆が一致団結して困難を克服する

 報告書の末尾では、今後の課題として「国家と人民の安全のため継続している世界的な保健危機に対処する緊急防疫キャンペーンを強化」することと、「北朝鮮内の資源と技術、内部の力を最大限活用して国家の自足可能な発展目標を達成すること」を挙げている。さらに、この目標に対する進展状況を国内各部署と機関、市民社会に伝えることを明らかにしている。

 報告書は「北朝鮮政府は人民大衆の一致団結を通じて挑戦と困難を克服し、持続可能な発展アジェンダを履行しながら国際社会との協力をより強化していく」と強調した。
(KBS、2021年7月14日)

(報告書)
https://sustainabledevelopment.un.org/content/documents/282482021_VNR_Report_DPRK.pdf?fbclid=IwAR2jWmO6ftwoP3AiSFTs-hkbXBPu1pTsz29hiVWsgBBdbG4O71J0ISdcWq8


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