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北朝鮮の現実的な選択

ニュースリリース| 2021年02月06日(土)

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 この数年間、北朝鮮指導部はトランプと米国、文在寅大統領と韓国に対して考え方をずいぶんと変えた。北朝鮮指導部は2018年6月の米朝首脳会談で「核を放棄する代わりに、米国が米朝関係を改善し、朝鮮半島の平和を保障する」としたトランプ大統領の約束を信じた。

 ベトナム・ハノイで行われた2019年2月、2回目の米朝首脳会談ではこの約束を履行する最初の実行として、北朝鮮が寧辺の核施設を廃棄する代わりに、米国が北朝鮮の民生に関する制裁を解除することを信じた。しかし、トランプは交渉のテーブルから離れ、米朝関係を自分自身の政治力としてだけ利用した。

 北朝鮮指導部が文大統領に対してかけた期待は、トランプに対するそれよりも大きかった。2018年4月の南北首脳会談で出された板門店宣言は、実際に南と北が終戦を宣言したものであり、18年9月19日の南北軍事合意書はその具体的な実践方案となって国防担当トップが書面した法的な分権だ。そして同年9月の平壌宣言は、南北首脳が約束した南北経済共同体へと進む青写真だ。ところが、ハノイでの米朝首脳会談が決裂すると、文大統領はそこから一歩も動かなかった。北朝鮮は「金剛山観光だけでも再開しよう」と2回も提案したが、文大統領はこれを無視してしまった。彼らは文大統領にはこれ以上期待できないと理解し、完全に軍事的主権がない韓国は米国に従うほかないとの結論を出すようになった。

米韓に失望した北朝鮮は「正面突破」を選択

 米国が世界覇権を放棄せず、北朝鮮に対する敵対政策も変えなかったと結論づけた北朝鮮は、米国を主敵として認識し「強対強、善対善」(強硬な姿勢には強硬な姿勢で、善意には善意で)という新たな対米政策を打ち出した。このために、多弾頭の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の命中率を高め、水中発射型の核戦力武器の生産を追求し、極超音速兵器も開発すると宣言した。そして、北朝鮮周辺の米軍基地を打撃できる戦術核兵器もつくることを明らかにした。米国の対北朝鮮政策に向かって正面突破するという意味だ。

 北朝鮮は文大統領には期待しないことにしたようだ。米韓合同軍事演習も戦略兵器の朝鮮半島への搬入も中断しないだろうし、バイデン政権の北朝鮮政策は米国の中国に対する政策と同盟政策に害となる方向で定まると見ているためだ。そのため、韓国の役割はこれといって大きくないと考えたようだ。北朝鮮が文大統領が合意を履行する範囲に従って相応の対応を取ると述べたが、これといった期待はしていないと思われる。

 2021年1月に平壌で開催された朝鮮労働党第8回党大会は、トランプを通じて米国との関係を改善し、文大統領を通じて韓国と共存へと進もうとしたそれまでの夢をあきらめ、現実を選択した会議と言える。彼らは今回の党大会で、全党・全国民を動員して自力更生・自給自足路線と持久戦によって克服していくことを決定したものと思われる。

 北朝鮮はこの10年間、エネルギーと食料の問題解決に注力してきた。大型から小型まで多くの水力発電所を建設し、火力発電所の設備更新と太陽光エネルギーの利用などで生産用・生活用の電力供給を基本的に保障できるようになった。種子の改良や肥料供給の増大などで農産物の生産量が増え、畜産業や果樹、野菜の生産品目多品種化など農業経営を多角化したことで食料の問題もかなり改善した。今後5年間は、金属工業と化学工業を中心に農業と軽工業にも多くの力を集中させ、自立経済の土台の拡充に注力すると明らかにした。言い換えれば、制裁と封鎖に耐えられる経済構造を作るということだ。

 バイデン政権は新たな北朝鮮政策を打ち出すと述べた。南北和解と朝鮮半島の平和は在韓米軍の撤収を意味し、これは米国のアジア政策と反する。しかし、北朝鮮の核問題も「すぐそこにある危機」だ。新たな解決策を求める時期に来た。また、制裁と武力で北朝鮮を屈服させることはできないことがすでに証明された。バイデン政権の北朝鮮政策の方向性がとても気になる。

漸進的な非核化と平和体制の構築

 3月に予定されている米韓合同軍事演習が最大の問題だ。米国が強行すれば、北朝鮮は衛星発射やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)発射実験も始める可能性がある。そうなると、朝鮮半島は緊張が高まった2017年に逆戻りするだろう。再び力と力による対立構造が始まることになる。在韓米軍の撤収と米朝関係の改善がなくては、北朝鮮が核を放棄しようとする「無核平和」アプローチはそれ以上通じなくなるようだ。今こそ、考えを変えるほかない。「有核共存」から始め、漸進的なやり方で朝鮮半島の非核化と平和体制を実現し、東北アジアの集団安保体制を構築する方向へ進むべきではないだろうか。
崔応九・北京大学教授(韓国「ネイル新聞」2021年2月5日)


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