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金正恩委員長の発言を専門家はどう分析しているか

ニュースリリース|トピックス| 2021年01月10日(日)

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 北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が1月9日、朝鮮労働党第8回大会の事業総括報告において対南、対米メッセージを出した。これについて専門家らが様々な評価を出している。

 北朝鮮が条件付きで南北関係の改善に意欲を見せたため、韓国政府の今後の姿勢いかんで関係改善がなされるかどうかがわかるとの意見も出ている。時間的には、今年3月に予定されている米韓合同軍事演習が一つの節目になるだろう。同時に、北朝鮮が米国に向けて「強対強、善対善の原則」(強い姿勢には強い姿勢で、善意がある行動には善意で応える)を提示した。これ対して、「今後の米朝関係に期待しないという意味」という見方や、「バイデン新政権の北朝鮮政策に北朝鮮の意見を反映してほしい」という間接的なメッセージだという見方もある。

◇林乙出・慶南大学極東問題研究所教授
「南北関係改善への余地は残されている」


 林乙出(イム・ウルチュル)教授は、北朝鮮が対南関係で完全な破局を宣言せず、条件付きで関係改善への余地を残したと見る。「全般的に、韓国当局の態度次第で南北関係が復元できるというメッセージだが、これは名分を事前につくっておくためだと思われる。韓国側がこれまで、北朝鮮にとっては受け入れがたい条件を追加しており、南北関係について北朝鮮の期待はそれほど大きくない」と評価する。「受け入れがたい条件」とは、▲米韓軍事訓練の中断、▲先端軍事装備の米国から韓国への搬入中断、▲北朝鮮の軍事挑発に対する是非ということだ。

 林教授は「文政権は2022年5月までの残された任期内に南北関係を改善するためには、北朝鮮が要求する本質的な問題に明確な回答を出すべき状況にある」と指摘、「時間が経てば経つほど南北間の軍備競争が促進され、この解決策こそ至急の課題だ」と言う。

 また、米国を最大の主敵と規定したことは「米国が政権交代しても、北朝鮮への敵対視政策は変わらないと考えている」と言う。とはいえ、「対米政策の方向は強対強、善対善という条件付きの関係改善という方針を示した。これにより、北朝鮮が一貫して強調してきた対北朝鮮敵対視政策の撤回という条件も変わらない」と指摘する。これは「新たな米朝関係構築という希望をほぼ放棄したもの」と評価する。そして「米国の敵対視政策がよりひどくなり、バイデン政権になっても複雑な国内政治に対処するため、北朝鮮との非核化交渉でも米国は譲歩するには難しいことをしっかりと考えている」と説明する。

◇梁茂進・北韓大学院大学教授
「米韓合同軍事演習がカギ」


 梁茂進(ヤン・ムジン)教授は、北朝鮮は全体情勢を深刻に受け止めており、2016年の第7回大会で見られた攻撃的な言及からは一転し、受け身的な立場で一貫していると評価する。「条件付きでの対南、対米政策が特色」と指摘、金日成・金正日時代の「政治軍事問題優先論」に言及しながら、「政治軍事的な障害を韓国や米国が取り除かない限り、そちらの手をつなぐことは難しい」ということだと説明する。

 梁教授は「金日成の時代には攻撃的な面がよく出ていたが、1990年代後半の苦難の行軍を経験した金正日の時には防御的な姿勢が見られる。経済制裁、コロナ禍、水害復旧という三重苦で厳しい立場にいる金正恩もまた、政治軍事優先決定論、根本問題優先論を自国の防衛的な手段として活用した」という。しかしながら、「当面は今年3月の米韓合同軍事演習を、北朝鮮が南北関係に動き出す節目と見ている可能性がある。韓国が米新政権とこの訓練をどう処理するかが主要な課題だ」と主張する。
 
 梁教授はまた、北朝鮮が「国家核兵器建設という大業の完成を称賛し、新型弾頭ミサイルの開発を続ける意志を表明し、責任のある核保有国としてい自衛的な手段としてのみ使用することを再確認した」と述べた。ただ、「原則的な立場を云々して条件付きで出てくる点、南朝鮮当局の態度しだいで近い時期に北南関係が3年前の春のように戻りうる点などに言及したことを見ると、出口は用意してあり、それに合わせたメッセージだろう」と見ている。さらに、「大きな枠では先南後米の戦略が込められており、米国に対して強いメッセージを送ったことは、バイデン政権に対し北朝鮮の意向を政策立案に反映させよという間接的な要求が込められている」と見ている。

◇チョン・テジン亜州大学亜州統一研究所教授
「3年前の春のような状況になるかは疑問」


 チョン教授は対外関係は韓国と米国の態度次第というメッセージを送ったと見ている。「対外関係では併進路線、多弾頭、戦術核、原子力潜水艦、超音速ミサイルなどに言及するなど、言葉としては低強度の挑発、韓国と米国の今後の態度次第で武器を選んでの挑発がいくらでもできることを示唆した」と分析する。

 さらに「今回のメッセージ程度では韓国と米国新政権が反応する可能性は高くない。とはいえ党大会で武器システムについてあれこれ言及したことは、国防力を強化したという成果は高いものであり、かつ明確に国内にアピールできる。同時に、対外的にも圧力を継続するという立場を示すことができるという二重の意味がある」と説明する。また対南関係で金剛山施設の撤去に言及したことも、今後の南北関係の進展に障害となりうると見ている。

 チョン教授は「北朝鮮が韓国当局の態度次第で3年前の春に戻ることができると述べたが、実現するかは疑問。全般的に南北協議で出された合意内容の履行を要求する流れだとすれば、制裁緩和による大規模な経済協力、鉄道連結のためのインフラ構築のような相当なレベルになってしまう。しかし、米新政権の政策検討期間、北朝鮮の対米圧力姿勢を見ると、短期間で解決するには難しいだろう」と見る。

◇シン・ボムチョル経済社会研究院外交安保センター長
「情勢を厳しくさせる洗練されていない行動」


 シン氏は、米国の大統領が誰であれ、北朝鮮からまず譲歩する立場にはないというメッセージだとみている。

 シン氏は「表現はかなり強硬なものに見えるが、この3年以上前から北朝鮮がとってきた根本的な立場をより明確に示しただけ」と指摘する。とはいえ、「北朝鮮が本質的な部分で本音や今後の行動を予告しながらも、実際には行動を自制しているため、対話の余地は残されている」と評価する。

 また「韓国耶米国との交渉のテーブルから外れたというよりは、挑発を予告することで、米国や韓国政府が前向きな立場を見せることを期待している。問題は、もう少し洗練した言葉遣いで対話再開の与件をつくることに注力し、戦略的挑発を予告し、米国と韓国政府を圧力する姿を見せたことだ」という。

 シン氏は米朝関係について「当分は硬直した局面が続くだろう。今回の党大会報告での発言は、バイデン新政権の行動に柔軟性を提供したというよりは、むしろ硬直させる言動だ。米国がこの程度の発言を意識して北朝鮮と対話すべきという立場になる可能性は低い。対話の窓は開けているというが、北朝鮮の核保有というはっきりとしたメッセージは米国には響かないだろう」と述べた。

 南北関係については、「北朝鮮としては文政権を非難したいだろうが、文政権にも行動に限度があることを理解している。それでも過度な要求をした。文政権の対北政策に負担を与えている」と批判した。
(韓国「ニュース1」2021年1月9日)


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