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変化を予告する北朝鮮党大会の事業総括報告

ニュースリリース|トピックス| 2021年01月09日(土)

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【鄭昌鉉の北朝鮮を読み解く】
「ニュース1」2021年1月8日

 2021年1月5日に開幕した朝鮮労働党第8回大会では、金正恩委員長が開幕の辞を述べたのに続き、5年間の党中央委員会の活動とその成果を決算する「事業総括報告」が3日間にわたって行われた。まだ全体の内容が公開されていないが、北朝鮮メディアによる報道内容を見ると、報告の基本的な方向性がわかってくる。

 今回の事業総括報告では、大きな枠として5年間の評価、経済、国防、科学技術、文化・社会、社会生活、大衆団体、対南問題と対外関係、党強化の順序で行われた。

◆経済分野に多く言及

 報告順序を見ると、この数年間の「新年の辞」のように経済分野について最初に触れ、かつ最も多く言及している。経済発展に集中するという意図がうかがえる。

 総括報告で金委員長は、国家経済発展5カ年戦略の遂行において生じた問題と目標達成に失敗した客観的要因を分析した後、新たな5カ年計画(経済発展5カ年計画)を提示したようだ。ここには、「全般的経済をさらにひと段階引き上げるための事業」内容が大枠で記されているだろう。

 ここから、金属や科学、電力、石炭、機械、採取工業などの人民経済の基幹工業部門、交通運輸、基本建設・建材工業、通信、商業、国土環境、都市経営、対外経済をなどの主要部門、農業や軽工業、水産業部門の実態と今後の課題が提起された。おそらく、各分野別で具体的な数値目標が提示されなかった可能性が高い。

 注目すべきは、対外経済分野では「対外貿易で信用を守り、(1国=中国に貿易相手が集中するという)一辺倒をなくし、加工品の輸出と技術貿易、サービス貿易の比重を高める方向で貿易構造を改善」し、「経済開発区などに有利な投資環境と条件を保障し、運営を活性化し、観光を活発に組織」する方向から、もう少し具体的な目標と実践の方向について言及があったと思われる。とくに、新義州経済特区と関連した言及があったかどうかが注目される。

 また「経済管理分野」に対する実態と分析が提起されたことは、「社会主義企業責任管理制」に立脚した各工場や企業所、協同農場の経営革新を注文したはずだ。

 とくに金正恩時代になり、実践イデオロギーとして強調されている「人民大衆第一主義思想」をすべての単位で徹底して具現し、活動過程で生じる形式主義、旧態依然とした事業方式から脱皮すべきだと指摘した。

 そして今回の報告では、「市、郡などを自律的、多角的に発展させ、人民生活において肌で実感できる実質的な変化をもたらすための解決方法など」が言及された。北朝鮮は2020年、水害と台風など相次ぐ自然災害による被害を受けた地域の復旧作業に集中してきたが、これをきっかけに、地方に対する投資と建設を画期的に強化する方針が提示されたものと予想される。何よりも、地方のインフラ建設と住宅供給問題の解決が重要なものとして言及されたはずだ。

◆国家防衛力強化を再確認

 国防分野では「核武力」の代わりに「国家防衛力」という言葉を使用した。北朝鮮メディアは金委員長が報告で「国家防衛力をより高い水準へ強化し、国と人民の安全と社会主義建設の平和的な環境を信頼できるように守ろうとする重大な意思を改めて鮮明」にしたと報道した。「改めて鮮明」という言葉でわかるように、既存の路線を続けるということだ。

 北朝鮮は2019年末に開催した朝鮮労働党中央委員会第7期第5回全員会議(総会)で、「強力な核抑止力の動員態勢を恒常的に信頼できるように維持し、われわれの抑制力強化の幅と深度は米国の今後の対朝鮮の立場によって上方調整されるだろう」と述べ、さらに「米国の対朝鮮敵対視が撤回され、朝鮮半島に恒久的でしっかりとした平和態勢が構築されるまで、国家安全のための必須的で先決的な戦略武器開発を中断することなく継続して進行させる」と明らかにしたことがあった。

 経済建設に集中するため平和的な環境が必要だという基調を繰り返してはいるが、米国との非核化交渉に囚われることなく、国家防衛力を強化する方向において、自力で平和的な環境を構築するという意志の表明だと思われる。継続して「戦略武器」開発を進めながら米国側の態度を注視するということだろう。ただ、「核武力」と直接的な表現を使わず、「国家防衛力」としたことは、米国を刺激しないような慎重な態度を見せたとも言える。

 いったんはまず「軍事的行動」に出るよりは、米国のバイデン新政権の対北政策、例年3月に行われる米韓合同軍事演習などを見守るということだ。

◆対外関係の全面的拡大を明らかに

 金委員長は3日間の報告で「現在の情勢と変遷する時代的要求に合わせて対南問題を考察し、対外関係を全面的に拡大・発展させるためのわが党の全体的な方向と政策的立場を鮮明」にした。具体的な内容は公開されていないが、北朝鮮メディアが初めて「北南関係」ではなく「対南問題」と述べたことが目を惹く。

 金委員長は5日の開幕の辞で「わが党の規約で以前の古いもの、他人のものを機械的に踏襲して現実とかけ離れていた諸問題を、発展する革命の要請と主体的な党建設原理に即して是正するための深みのある研究を行った」と明らかにした。党規約の大幅な修正に意欲を見せたものとして評価される。

 中でも最も気になる部分は、党規約前文にある「南朝鮮革命」分野を改正するかどうかだ。現在、党規約に含まれた内容は「朝鮮労働党は南朝鮮で米帝の侵略武力を押し返し、外部の勢力の支配と干渉を終わらせ、日本軍国主義の再侵略策動を払拭し、社会の民主化と生存の権利のための南朝鮮人民らの党争を積極的に支持声援し、わが民族同士で力を合わせて自主平和統一の民族大団結の原則において祖国を統一し、国と民族の統一的発展を成し遂げるために党争する」となっている。

 実質的に、南北が特殊な関係の中で南北首脳会談が数回開かれた状況を反映して、北朝鮮が党規約上のこのような内容を「古いもの」として規定し、新たに変更する可能性があるということだ。まだその可能性は低いが、この規約が実際に削除されたり変更される場合、北南関係ではなく「対南問題」という呼び方自体に、北朝鮮の対南意識の変化をうかがえる証拠となるだろう。

 また、北朝鮮は「対外関係の全面的な拡大発展」を標榜し、コロナ禍が沈静化すれば、大々的な外交的平和攻勢に出るものと思われる。南北の民間交流も制限的ではあれ、現在よりは自由になるだろう。こうした方針にしたがって、2021年の適切な時期に金委員長の訪中が推進され、これまでとは違う中朝経済協力が模索される可能性が高い。すでにいくつかの分野で具体的な事業内容が言及されている。とくに韓国政府が関心を持つ南北鉄道連結事業や金剛山観光、医療協力などが一つでも党大会最終日に採択される「決定書」に含まれるかどうか注目される。

 今回の第8回大会の「事業総括報告」は、全般的な変化を強調する内容になるのではないか。北朝鮮内部から見ると、朝鮮労働党の事業で生じている偏向、党的指導で生じている問題などを集中して検討・改善することに焦点が合わされている。北朝鮮メディアは「事業総括報告」で、「現在の党事業内在する偏向を急いで正し、党と革命隊伍をより強化し、革命と建設に対する党的指導を進化させるための課業と全体像を提起した」と短く報道しているが、実際の党大会に向けた準備と大会期間、大会が終わった後にもこの分野が最も集中的に議論されるものと思われる。党レベルでの認識と事業方式の変化が実質的な政策の変化と成果につながるためだ。
 


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