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手を打つべき順序が違う南北関係

ニュースリリース|トピックス| 2020年09月20日(日)

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北京大学 崔応九教授
「ネイル新聞」2020年9月10日付
 新たに任命された韓国・統一省の李仁栄統一省は、南北関係を復元するために多様な方案を打ち出した。文在寅大統領は今年8月15日の演説で、南北間の医療協力や災害予防、山林農業分野での協力を提案し、協力こそが南北にとって最高の安全保障であることを強調した。しかし、北朝鮮はまだ手を差し伸べようとしない。彼らが望む最も重要で優先的な問題は、経済協力よりは安保なのだ。北朝鮮が6月に宣言した内容はたった一つ、「韓国は依然として敵」ということだ。

 南北は敵対関係を続けてきた。2018年の板門店宣言と平壌宣言は、南と北に「すでに非敵対関係へと変わり、今後は友好的な関係へと発展していくのだろう」と期待感を残した。だが、彼らの考えは元に戻った。金剛山観光を再開し、開城工業団地を再稼働させるとした約束を守らなかったためだろうか。そうではないだろう。そんな経済的な理由ではなく、協力と友好関係の基礎となる安保と信頼の問題が解決されていないからだ。彼らは2018年の「919南北軍事合意書」に明示された、相手に対するいっさいの敵対行為の中止や軍事分界線一帯の軍事演習の中止、非武装地帯(DMZ)の平和地帯化、段階的軍縮がなされることが、終戦宣言と軍縮に進むきっかけだと信じた。しかし、韓国は従来通りの韓米合同軍事訓練を行い、北朝鮮の侵攻に対する防御はもちろん、北朝鮮全域を占領する訓練も行った。

 韓国は天文学的な予算を組んで米国産の戦略兵器を大量購入し、航空母艦まで作ろうとしている。韓国は経済力で北朝鮮の50倍、軍事費は北朝鮮の20倍だ。現政権の軍事費は歴代最高額だが、それでも足りないと大幅に引き上げようとしている。これでは、「文在寅政権の隠された意図は何か」と北朝鮮は疑わざるを得ないだろう。

北朝鮮、経済協力と安保の交換を拒否

 こうなってしまうと、文大統領と李統一相が行った提案は色あせてしまう。確かに南北協力が安保への近道となりうる。しかし、その土台には信頼と安保、平和がしっかりと土台に敷かれてこそ可能となるものだ。このような土台がなくては、金剛山観光も開城工業団地の再稼働も一瞬にして崩れてしまう。南北関係を復元するためには、まず緊張状態の緩和と信頼構築に目を向けるべきなのだ。韓国大統領府は徐旭(ソ・ウク)陸軍参謀総長を国防相に内定した。彼は「919南北軍事合意」に寄与した人物であり、戦時作成統制権の早期回復を主張する人物だ。北朝鮮と軍事問題で摩擦を生じさせた鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相よりは、南北軍事合意を点検・実行するのに適任だろう。カギは、文大統領の考えと決断だ。

 この70年間、南と北は相手よりも強い軍事力を持ってこそ自分たちの安全を守ることができると考え、軍事力を絶えず強化してきた。南と北の軍事競争は70年間継続したが、これは冷戦と対決路線がおのずともたらした結果だ。対決路線から共存路線へ旋回させるためには、優位な軍事力で自国の安保を守ろうとするパターンから、敵対関係を非敵対関係へと変える関係改善のパターンへ変えないといけない。敵対関係を非敵対関係へ転換させようとすれば、軍事的な緊張状態を緩和させ、軍事費競争を中止し、軍縮へと進むべきだ。とはいえ、現在の文大統領の考えは、基本的に軍事優位パターンにとどまっているようだ。彼は、南北の緊張関係は武力挑発を防ぐレベルで管理し、南北間の交流と経済的協力を先行させながら、韓米同盟の強化で北朝鮮の核を抑制し、戦時作戦統制権を回復させ、国防力を強化した後、南北の安保問題を解決しようとしているように見える。

 北朝鮮は文大統領のこのような考えを読み取り、彼に対する信頼を失った。そのため、開城にある南北連絡事務所を爆破した。文大統領は南北間の軍事的緊張緩和には関心がなく、口先だけの経済協力を唱えているだけだと考えている北朝鮮が、文大統領に手を差し伸べるのは容易ではないだろう。

朝鮮半島の平和は南北にかかっている

 東北アジアは強大国の角逐で揺らいでいる。朝鮮半島が再び強大国に巻き込まれ、分断される危険性をはらんでいる。南と北が冷静に将来をみつめ、進むべき道を選択すべき時期だ。南北が互いに相手を消滅させようとしていた時期は、すでに歴史の中に消えてしまった。南と北はすでに相手の飲み込まれないほどに大きくなり、戦争は南北ともに何の利益にもならないためだ。南北が手を取り、緊張緩和と関係改善を目標に協力すれば、すべての問題が簡単に解決することもある。朝鮮半島の平和は強大国にまかせることではない。南と北が自らの役割を果たしてこそ、朝鮮半島に平和が訪れ、強大国からの尊敬も受けるようになるだろう。


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