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北朝鮮の中国向け輸出の40%が「域外貿易」形態

ニュースリリース|トピックス| 2020年03月14日(土)

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 2019年、北朝鮮が中国へ輸出した物品の40%が、物品を代替して生産して手渡す「域外加工」だったことがわかりました。一般の生産方式の貿易が急速に減少し、事実上、域外加工形態の貿易の割合が高まったものです。

 中国の税関統計で、北朝鮮からの輸入に関する資料では、輸入の形態と金額が明示されています。これによれば昨年、中国が北朝鮮から輸入した中でも最も多かった貿易形態は「域外加工」によるもので、その金額は約8271万3000ドルでした。昨年、北朝鮮が中国向けの輸出総額、すなわち中国が北朝鮮からの輸入した金額が約2億1000万ドルだったことを考えると、北朝鮮の中国向け輸出の約40%が域外加工貿易だったことになります。

 域外加工とは、中国が北朝鮮のような他国の人材と生産施設を利用して物品を生産した後、これら物品を再び中国へ移す形態の貿易を意味します。したがって、北朝鮮は輸出全体の約半分を中国の製品を変わって生産し、販売する方式を行っているということです。

 その次に多く行われている中国向け輸出形態は「国境貿易」です。金額は域外加工の半分に当たる4268万ドルでした。また、中国を経由して第三国へ向かう物品に適用される「通過貿易」が3472万ドル、通常的な形態の「一般貿易」は1237万ドルと5番目に多い形態になっています。

 全体的に見ると、北朝鮮は自国内の資源でモノを生産・販売する一般貿易より、他の国の製品を変わって生産して手渡す「域外加工」が7倍も多く行っているということです。域外加工貿易が大きく増加したのは、最近、北朝鮮が腕時計など一部製品の輸出を大きく増やしているという事実からもうかがえます。VOAは北朝鮮の腕時計の中国向け輸出額が2018年から急増しており、同期間、北朝鮮は中国から時計部品の輸入を増やしていると報道したことがあります。時計部品を輸入して完成品として販売する状況だということです。

 北朝鮮経済の専門家であるジョージタウン大学のウィリアム・ブラウン教授は、中国が最近北朝鮮からの輸入を大きく増やしている品目が、域外加工方式で取り引きされているものであり、靴などほかの品目の動向にも注目していると述べました。

 この数カ月間、中国の北朝鮮から輸入した品目では靴が大きく増えています。これは中国側から提供された資材などを利用して生産された可能性があるということです。実際に、靴は2016年までは北朝鮮の台中輸出額で21万ドル程度でしたが、19年1月から11月の間では約484万ドルが中国へ向かい、20倍増えています。

 それ以外でも、おもちゃや革製品なども中国向け輸出が大きく増加していますが、これもまた域外加工生産が可能な品目です。ブラウン教授は、域外加工貿易が北朝鮮の主力輸出形態として登場したのは、2018年初旬から本格化した北朝鮮制裁のためだと分析しています。北朝鮮は2017年までは石炭を含めた鉱物資源と海産物などが対中輸出額の相当部分を占めており、一般的な貿易の形態を示していました。しかし、これらの品目はその後、制裁の対象品目として指定され、販路が塞がってしまいました。一方、腕時計や靴のような品目は制裁対象から外されており、域外加工貿易の割合が自ずと高まったということです。

 実際に、2017年の中国税関統計には、中国が北朝鮮から輸入した中には「倉庫貿易」と「一般貿易」、「国境貿易」などの方式が1位から3位を占め、域外加工は全体の5%程度に過ぎませんでした。したがって、ブラウン教授は一般貿易などが大きく減少した状況において、昨年に域外加工形態の貿易は、わずかに減少したとはいえ、全体に占める割合は半分近いことになったと説明しています。
(VOA、2020年3月13日)



  • 元山靴工場(2016年撮影)

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