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北朝鮮の鉱物輸出は経済成長に制限的に寄与する

ニュースリリース|トピックス| 2020年03月10日(火)

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『BOK経済研究』2020-7号 要約
「北朝鮮の鉱物輸出と品目別輸入:対中貿易を中心に」
キム・ビョンヨン(ソウル大)、キム・ミンジョン、キム・ダウル(ソウル大)

(研究背景)
□鉱物輸出は北朝鮮の最も重要な外貨獲得源泉*であり、鉱物輸出で稼いだ外貨がどのように活用されているのかを把握することは、北朝鮮経済の方向を分析するために重要。
 *北朝鮮の対中輸出が急増した2010~16年の間、鉱物は対中輸出の50%を上回っており、他の品目と比べ外貨獲得率(80%程度)が高く、外貨獲得という側面からはより高い比重を占めている。

 ○資本財輸入の財源として活用されるのであれば、国内資本量を増加させ、経済成長に寄与する方向へ作用可能(Esfahani, 1991; Lee, 1995; Hanson, 1982)
 ○反面、エリート階層および一般住民の消費増加のために使われたり、鉱物産業へ財源が集中される場合、長期経済成長を阻害しうる。*
 *資源が豊富な国家がそうでない国家より長期経済成長に遅れるという「資源ののろい」の観点から。(Sachs and Warner, 1995; Auty, 2001)

□既存研究は北朝鮮の輸出入と経済成長の間の関係を主に総量的な水準から見る程度だったが、
 →本稿は北朝鮮の鉱物輸出が資本財、中間財、奢侈品など細部の輸入品目に与える効果を分析し、北朝鮮の全般的な経済成長にどのような影響を与えたのかに対する含意を導出しようとするものである。

(分析方法)
□1995~2019年のうち、北朝鮮の対中国四半期別輸出入資料を使用し、鉱物輸出の変化に対する細部輸入品目の長短期的な変化を分析した。
 ○期間中、鉱物輸出と長期的な均衡関係*を持つ輸入品目を確認した後、鉱物輸出の変化が該当する輸入品目に与える長期的な影響を分析した。**
 *共和分(cointegration)検定によってその存在があるかどうかを識別。
**ベクター誤差修正モデルにより鉱物輸出と各輸入品目間の長期均衡式を導出して推定

 ○鉱物輸出と長期均衡関係が生じない輸入品目の場合、衝撃半の関数を通じて鉱物輸出衝撃が細部輸入品目に与える影響、または各輸入品目の衝撃が鉱物輸出に与える短期的な影響を分析。
 ―原資料を一次差分し、時系列資料の安定性を確保した後、ベクター自己回帰モデルに基づいて分析した。
 ―Chow検定を通じて構造変化が生じた2010年第3四半期を起点に、それ以前の期間とそれ以降の期間を分けて比較分析した。

(分析結果)
□北朝鮮の鉱物輸出は食料品や燃料、資本財類、中間財輸入と長期均衡関係を持つことが検証された。
 ○鉱物輸出による外貨獲得が長期的に必需財貨の購入に使われるだけでなく、資本財関連の中間財の輸入増加にも影響を与えており、北朝鮮の長期経済成長に寄与する可能性を示した。

□一方、北朝鮮の鉱物輸出と輸入品目間の関係は、鉱物輸出が大きく増大した2010年を前後して相異なる様相を示した。
 ○2010年以降、北朝鮮の鉱物輸出は資本財、中間財、奢侈品輸入の増大に影響を与えているものと分析された。
 ―資本財のうち、車両輸入の増大には留意の影響があったが、一般機器・機械の輸入増大効果は見られず、鉱物輸出が資本財の輸入を通じて製造業の成長に与える影響は制限的なものと評価できる。
 ―ただ、車両輸入の増加は鉱物運送車両の需要増大とともに、北朝鮮の市場化が進んだ状況において、旅客・貨物運送部門でのサービス供給増大にプラスの影響を与えたものと思われる。

 ○2010年以前では、輸入増加が鉱物輸出を牽引する相反する様相が発見されたが、これは社会主義国家で見られるバーター貿易がより頻繁に行われていたことに起因するものと解析した。

(示唆)
□北朝鮮の鉱物輸出は経済成長に部分的に寄与し、住民厚生の増大にも寄与したものと思われるが、製造業の高度化を促進し経済成長を誘導することには制限的な役割にとどまったことを把握できる。
 ○私的所有権が認められておらず、創業と経営の自由が保障されていない制度的欠乏(institutional deficit)は外貨獲得による経済的波及効果の拡散に制約要因として作用したものと予想される。
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