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北朝鮮「経済研究」で分析した経済政策の変化:テキストマイニングアプローチによる

ニュースリリース|トピックス| 2020年02月24日(月)

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『BOK経済研究』2020-6号の要約

【研究の背景】
□北朝鮮は対外的に自彊主義路線を主張しているが、内部的には改革と開放を追求する経済政策の戦略と方向がうかがえる。
 ○しかし、基礎統計をはじめ北朝鮮関連の研究資料が十分ではなく、北朝鮮内部の変化を既存の研究方法で分析にするには限界がある。
 ⇒このような北朝鮮研究の限界を補完するため、テキストマイニングなどAI(人工知能)を利用した方法を活用し、北朝鮮の文献から類推できる北朝鮮の最高統治者の政策的関心事と路線の変化などを分析。

【分析方法】
□1998年1月~2018年12月の間に刊行された北朝鮮の学術誌「経済研究」に掲載された論文計2757件の題名に、統治者別の経済政策の特徴が現れているかを点検。
 *電子文書化された論文の本文がなく、各論文の革新的なキーワードが反映されているテーマを使用。
 ○統治者時期別の論文主体の特徴を把握するため、論文のテーマの類似度が高い年度同紙を群集化した。
 *論文の作成時期に対する事前の分類なく、テーマの特性だけで分類する「教師なし学習」(unsupervised learning)方法や階層的な群集化(hierarchical clustering)を活用。

―金日成、金正日、金正恩の統治時期と、群衆内の年度が一致するかどうかを分析し、論文テーマには統治者別経済政策の関心事が反映されているかどうかを評価。

 ○機械学習分類のモデルで作成時期が表示されたテーマを学習したアルゴリズムを利用し、予測の正確度を点検したことで、各論文のテーマの特徴だけで論文の作成時期を予測できるかを検証。
 *訓練、検証、予測標本で区分し、予測モデルを更生する教師なし学習の方法でロジスティック回帰分析を活用した。

□統治者時期別の関心主題の変化を観察するため、テキストから主題を抽出するトピックモデルを利用し、統治者時期別の論文主題分布の変化を分析。
 *LDA(Latent Dirichlet Allocation、潜在的ディリクレ配分法)方法を活用した。
 ○論文の題名に登場する単語と主題の結合確率を極大化する方式で、時期別論文の題名の主体分布を推定。

【分析結果】
□「経済研究」に掲載された論文の主題は類似度によって、大きく3つの期間で群集化がなされ、各時期は統治者別の執権時期と類似している。(1期:1988~98年、2期:1999~2010年、3期:2011~18年)

 ○1期は主に金日成の時期(1988~94年)と金正日初期(95~98年)に該当し、これは金正日が執権初期には経済政策に大きな変化がなく、金日成の政策方向を踏襲したことを示唆している。

 ○2期は金正日時期であり、前期(1995~2005年)には体制の没落危機に瀕した北朝鮮が市場化を受け入れ、後期(2006~11年)には行き過ぎた市場化を警戒し、抑制していた時期。

 ○3期は金正恩時期に当たり、前期(2012~16年)は市場経済を積極的に受け入れ、輸出入が大きく増大していた時期であり、後期(2017~18年)は国連安保理制裁が強化され、逆成長を経験した時期。

□論文の題名の特徴を分析し、作成時期を予測した結果、予測の正確度は64~91%と出た。題名の特徴だけでもどの統治者の下で作成されたかを比較的正確に予測できた。
 ○①金日成/金正日/金正恩時期の区分時には64%、②金正日/金正恩時期の区分時には70%、③金日成/金正日時期の区分時には82%、④金日成/金正日時期の区分時には91%の予測正確度となった。

□トピックモデルで統治時期別の論文題名の変化を推定した結果、統治者別の政策関心事が経済環境の変化と政策路線の流れを反映するものとして現れた。
 ○金日成時期には農業、資本主義体制批判などの主題が高い確率で抽出され、金正日時期には資本主義批判、植民地侵奪、生産力増大などの主題が主に抽出された。
 ○金正恩時期には海外銀行制度、貨幣流通とレート、貿易理論、国際化時代の競争力など多様で幅広い主題を扱っており、改革と開放のための理論的、実証的基礎研究がなされていることを示唆。

【示 唆】
□北朝鮮関連の基礎研究資料が不足している状況で、人工知能分析方法を活用する場合、分権のテキスト資料から北朝鮮の最高指導者の政策的関心事、北朝鮮の経済政策の方向性などに対し意味のある診断が可能。
 ○標本が「経済研究」の題名だけで構成されており、その大きさは小さいにもかかわらずマシンリサーチを通じた分類の正確度が高く、統治者時期別で論文の題目の主題別特性がはっきりと区分できた。
 ○特に金正恩時期の論文主題を分析した結果、北朝鮮は外部には自彊第一主義、国産化を奨励する政策など閉鎖・孤立主義を打ち出していると同時に、内部には改革、開放のための計画を推参していることを示唆している。
(韓国銀行、2020年2月19日)

原文はこちら。
https://www.bok.or.kr/imer/bbs/P0002455/view.do?nttId=10056579&menuNo=500788&pageIndex=1
 



  • 北朝鮮で発行される経済論文誌「経済研究」

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