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北朝鮮の非核化に代案はあるのか

ニュースリリース| 2019年05月19日(日)

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「北朝鮮の核問題に対するあなたたちの代案は何なのか」
非核化という難題を解決しようとする文政権の試みを批判するのは簡単だ。
難しいのは、実際に実現可能な方案をつくり、名分と実利を同時に追求して国益を得られるような道を探すことだ。
文正仁・延世大学名誉特任教授(2019年5月8日、韓国『時事IN』)

 文在寅政府が袋だたきに遭った。ハノイでの米朝首脳会談が失敗し、それがまるで韓国政府のせいのような批判が相次いだ。そのため、4月11日に米韓首脳会談についても批判的な声が強まっている。主張は大きく分けて三つある。まずは、戦略も準備もなく、性急な米韓首脳会談を開いたものの失敗に終わったというもの、次に制裁緩和云々といい、北朝鮮の立場だけを擁護したところ、米韓同盟に亀裂が生じたということ、三つ目は文政権がプライドをなくすような対米、対北外交を展開しているというものだ。結論から言えば、どれも同意するには難しい。

 文政権の戦略ははっきりとしている。ハノイの米朝首脳会談が米国の「ビッグディール」と北朝鮮の「スモールディール」の間で衝突したためにうやむやになったとうことを考え、その折衷案を代案として提示したというものだ。米国が望む完全な非核化に対する一括妥結と包括的合意、また北朝鮮が望む漸進的な非核化の履行、特に履行に対するロードマップと時間表を用意しようというのが、韓国政府が提示した大枠だ。

 現時点ではたして、他の代案があるだろうか。一方的な核武装の解体を前提とするビッグディールを平壌が受け入れる可能性はほとんどないと思える。反対に、米国が寧辺の核施設解体を条件に2016年以降、国連が決議した対北制裁をすべて撤回する措置に同意するということも筋が通らない。可能なのは、その折衷案である「十分によいディール」(good enough deal)だけだ。これを指摘して、韓国政府に戦略と代案がないと批判する者は、どのような戦略と代案について言うのか。

 ハノイの首脳会談以降の状況展開において最も注目すべきなのは、トランプ大統領が北朝鮮とトップダウン方式による対話を持続するという意志がはっきりとしているということだ。ビッグディールと「完全な非核化の前には制裁解除は不可」という減速を鮮明にしながらも、スモールディールの可能性に言及し、食料援助など人道的支援を許容する意志を明らかにしたことも、韓国側の折衷案的な要求を一部とは言え受け入れた結果ではないかと思う。

 文政権を批判する者は、このように折衷案を出そうとする韓国政府の試みを「制裁緩和」として見なし、「金正恩の代弁人」または「米韓同盟を傷つける行為」と置き換えている。制裁はそれ自体が目的ではなく、非核化のための手段だ。2018年11月以降、文政権は北朝鮮が寧辺の核施設の完全で永久的な廃棄のような「不可逆的段階の非核化」措置を具体化すれば、開城工業団地と金剛山観光事業の再開など南北間の経済交流程度は例外として認めることが出来るだろうという見解を示してきた。もちろん、それ以降、北朝鮮が非協力来的な態度に転向すれば、いくらでも撤回出来るように(snap back)制度的な装置を作ることも可能だ。

制裁が続けばいつかは北朝鮮が屈する?

 今後も制裁を継続すれば、いつかは北朝鮮が膝を屈するだろうという無謀な制裁万能主義といったものが、現状を打開するためによりよい代案だろうか。可能な折衷案を作り出そうとする努力をすべて放棄し、制裁が北朝鮮経済を崩壊するまで、座って待っていることが賢明な代案だという意味だろうか。その過程において生じうるすべてのリスクを無視するのが、果たして責任ある政府の態度だというのか。

 ついでに、「2分間の単独首脳会談」というフレームで国の品格について言及する主張にも見てみよう。午餐を兼ねた拡大首脳会議、その前の小規模な拡大会議などを通じて、文在寅大統領がトランプ大統領はもちろん、出席したポンペオ国務長官やボルトン国家安全保障担当補佐官と突っ込んだ話を交わしたという事実は、すでに公開されている。これらをすべて無視して、ただ「2分間しか会談できなかった」と批判するが、まず非難を受けるべきはていねいな応対が出来なかった米国側であり、太平洋を渡って話し合いをしようと来た韓国大統領ではない。

 非難することは簡単だ。難題を解決しようと多様な代案を工夫しながら提案する努力を「金正恩の代弁人」として攻撃する言葉は、誰でも口にすることが出来る。難しいのは、実際に実現可能な方案をつくり、名分と実利を同時に追求し、利害関係者をひとりずつ説得して国益を得られる道を模索することだ。誰にでも出来る非難と行きすぎた蔑視をする代わりに、常識と道理という前提から出てくる批判、精巧に作られた政策代案を韓国の政界に期待することは本当に難しいことなのか。


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