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金正恩の多極化外交の方向性

ニュースリリース| 2019年05月14日(火)

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【時局時評】金正恩式多極化外交の方向性
崔応九・北京大学名誉教授

201959日、韓国『ネイル新聞』)

 2018年から北朝鮮は、それまで堅持してきた核武力と経済建設の併進路線での核をひとまず脇に置いて、経済建設へと頭を向けた。経済建設のためには、極限状態に至った米朝関係の改善が喫緊の課題だった。

 

 金正恩はまずはトランプ大統領とは会わずに中国を訪問し、習近平主席と会った。金正恩の多極外交の始まりだった。彼は米国との対話において有利な立ち位置を確保するため、4回も中国を訪問し関係を正常化させた。2回目の米朝首脳会談では、米朝ともに具体的な成果を得られるものと期待していた。しかし、失敗した。北朝鮮は失敗の主な要因として、米国が望んでいるのは北朝鮮の非核化だけであり、それに見合う関係改善を与える意思がなかったためだと見ている。

 

 そのため北朝鮮は、時間がさらにかかり、苦労も多い道を選択するようになった。国内には自力更生を叫び、国際的には多くの友人と付き合うという道だ。特に、周辺大国との関係改善に注力することになる。その始まりが、金正恩のロシア訪問だ。大国の中でも、この数年厳しかった時期においても北朝鮮と友好関係を維持した国家はロシアのほかない。金正恩とプーチン大統領の会談は始まりに過ぎない。

 

 北朝鮮が次に関係改善を狙うのは日本だ。安倍晋三首相の施政方針の目標のうち、一つがロシアであり、北朝鮮との関係改善だ。安倍首相は52日付け『産経新聞』とのインタビューで、条件を付けずに金正恩と会うという意識を明らかにした。おそらくは4月末の日米首脳会談でゴルフをした際に、安倍首相はトランプと日朝首脳会談に向けた基盤作りを行ったようだ。5月末の日米首脳会談では、日本がより具体的な方案を用意し首脳会談を行う可能性が高い。

 

北朝鮮、日本とは早晩、首脳会談を行う可能性

 

 日本が本当に関係改善への意思を持っており、さらに行動もともなえば北朝鮮は歓迎するだろう。日本との関係改善は、北朝鮮にとって悪いことではない。北朝鮮との関係改善がないままに、日本は国連安保理の常任理事国になることは簡単なことではない。米国との関係改善を望む北朝鮮にとって、安倍首相がそれを支援してくれることも可能だ。日本にとっても、この機会を利用して東北アジアにおける影響力を強めることができる。近い将来、日朝首脳会談もありうるだろう。

 

 南北関係を発展させていくことは、現在の南北の両政府にとって戦略的選択だ。問題は、韓国政府は米朝関係の膠着状態が長期間継続する状況に備えて、自らの戦略と目標、そしてそれを実現するための戦術がないということだ。これらがきちんと整えば、南北首脳会談が再び開催され、南北関係において新たな発展が見られるようになるだろう。

 

 北朝鮮は中国、ロシア、日本との関係改善を行いながら、米国の態度の変化を待つことになるだろう。米朝間のトップダウン方式によるビッグディールの可能性も、まだ残っている。米朝関係の改善は、彼らが望む体制保障と経済発展という目標達成の基礎であり、近道でもあるためだ。トランプも北朝鮮による核の脅威を除去し、来年の大統領選挙で勝利するためには、北朝鮮との問題は必ず解決すべき課題の一つだ。北朝鮮は今年末までは軍事・外交的にトランプに圧力をかけながら、米朝間のビッグディールを試みるだろう。さらに来年になれば、軍事・外交的にトランプの再選を揺るがそうとするだろう。北朝鮮が望むことは、可視的な米朝関係の改善であり、これはトランプが決心さえすればできないことはない。北朝鮮は可逆的ではあるが、完全な非核化への準備ができている。双方が一歩ずつ引けば、前進できる。

 

対北制裁が韓国・中国・ロシアの手足を縛る

 

 米朝間のトップダウン方式が成功しない場合、北朝鮮は中国とロシアとの3カ国で協議体をつくり、その外縁を広げようとするだろう。日韓との関係はもちろん、ベトナムをはじめ東南アジア諸国、イランとシリアのような中東諸国、キューバなどの伝統的な友好国との関係を発展させていくだろう。そうしながら、6者協議のような東北アジアにおける多国間の安全保障協力体制を発足させるため、新たな版図を提示する可能性がある。

 

 東北アジアの諸国、特に韓国と中国、ロシアは北朝鮮の核開発を防ぐために、米国と協調して国連安保理で北朝鮮制裁に同調した。その制裁安は北朝鮮の手足を縛っただけでなく、自らの手足を縛る局面になった。米国にだまされたことになる。今こそ力を合わせ、その手足を縛っている鎖をほどくべきであり、東北アジアの安全保障体制を樹立しなければならない。このためには、東北アジアすべての国が力を合わせるべきだ。これらの国家間の矛盾は、東北アジアにおける多国間安保体制という大局に従わせるべきだ。


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